秘密の物語 番外編集

ひ孫達のおしゃべり

慰謝料の行方

「楓かえで、こっちこっちー！」


私はショッピングセンターの中にあるフードコートで、従妹の楓と待ち合わせをしていた。

学校の委員会で遅れてきた楓がこちらに気付いて、小走りでやってきた。


「小春こはる、お待たせー！

私も飲み物買ってくるから、もうちょっと待ってて！」


楓はそう言いながら荷物を置いて財布だけ持って、飲み物を買いに行った。

私は携帯でニュースを見ながら彼女を待つ。

ニュースは私と楓がファンの野球選手、加藤　皐月かとう　さつきの昨日の勝利投手を伝えていた。

私達より１つ上の彼は我が地元の球団から去年ドラフト１位指名されて、そこから大活躍だ。

同じ地元という事で、私と楓は勝手に親近感を覚えてプロデビューする前からファンなのだ。

何てたって彼は我が県を甲子園優勝に導いた立役者だ。


「わぁ、皐月くん昨日も勝ったんだね！」


後ろから私の携帯を覗き込んだ、飲み物を買ってきた楓も嬉しそうな声を上げた。


「新人賞取ってほしいよね！」


楓は向かいに座り自分の言葉にうんうんと頷きながら、買ってきたアイスラテを飲んでいる。


「契約金も球団史上最高額って言ってたしなぁ。」

「もー、小春はすぐにお金の話をするー。」

「ゴメンゴメン、そういえばお金といえばあのお金どうなったんだろ？」

「あのお金？」

「去年のひいお祖母ちゃんのお葬式でもらった５００万円の御香典。」

「あぁ！小春が謎の美少年から受け取ったあれね！」

「そうそう、それ！結局あの少年うちの学校にはいなかったもんな。」

「私はまだポンコツ神だと信じてるけどね！

…あのお金はお祖父ちゃん・葵あおい大伯母さん・杏あんず大叔母さんできっちり３等分したんだって！」


ひいお祖母ちゃんの３人の子供達だ。


「余った端数は今度のひいお祖母ちゃんの法事で使うって。」


もうすぐひいお祖母ちゃんの一周忌だ。

去年は謎の少年からの慰謝料という名の高額な御香典をもらって大騒ぎだったが、今年は何事も起こりませんように…

私は心の中で祈って自分のコーラを飲み干した。