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中編
しおりを挟むアタシはリビングの時計を見た。
ー10時45分。
今日は同クラで親友のヒマリと駅で11時に待ち合わせをしている。
「ヤッバ、ギリギリじゃん!」
アタシは慌ててサンダルを履いて気付いた。
「あれっ、スマホ入れたっけ?」
バッグの中を弄るが見当たらない。
「ウッソー、リビングかな?」
履いたサンダルをもう一度脱いでリビングに戻る。
運良くスマホはテーブルの上にあった。
今日はヒマリと合流した後に、今流行りの新感覚ケーキを食べに行く予定なのだ。
食べる前にスマホで撮ってヒンスタグラムにあげて、イイねが沢山欲しい。
その為にもスマホは絶対に忘れる訳にはいかない。
「まったくもうっ!」
アタシはスマホをバッグに入れて溜め息を吐きながら、再び玄関に向かった。
トータル10秒程のロスだ、慌てる事はない。
☆☆☆☆☆
歩いている少し先の街路樹が視界に入る。
枝が所々不自然に折れて可哀想な姿だ。
先週の台風の威力を物語っている。
~ピロン!
バッグの中のスマホからMINEの着信音が鳴った。
誰だろう?
確認する為にバッグからスマホを取り出そうとした。
しかし手が滑ってスマホは哀れな街路樹の方にダイレクトに落ちた。
「キャー、マジ最悪なんですけどっ!」
画面のスマホが割れていないか丹念に確認する。
ついでに誰からのMINEかも確認した。
「…ヒマリからだ。
んー、『少し遅れる』って何だソレ!
ムカつくな、コイツ!」
その瞬間だった。
メキメキと大きな音を立てながら、街路樹がアタシに向かって倒れてきた。
一瞬の出来事でアタシは逃げる事も悲鳴を上げる事も出来なかった。
ドォォォンと地割れが起きた様な音が辺り一帯に響く。
アタシは街路樹に胸を中心に潰されている形なのと、酷い痛みで大声が出せない。
「…だ、誰か…助けて…」
口の中が鉄臭く、文字通り血を吐きながら必死に声を出す。
そして今、思い出してしまった。
ーこれは2回目である事を。
ー1度死んだ後に黒巫女から10秒をもらって、やり直させてもらった事を。
「…な、何でよ?」
酷い痛みの中、必死に考える。
10秒遅らせたんだからアタシが通るより先に街路樹は倒れるハズなのに、何でアタシが真下にいる時に倒れるんだよ?
ーどれぐらい時間が経ったのだろう?
アタシにとっては永遠とも思える長い時間、痛みに苦しんで漸く意識が手放せた。
次に目を覚ましたら身体中の痛みは無く、全てが真っ白の世界にいた。
「気が付いたようじゃな。」
姿を見ずとも黒巫女の声だと分かった。
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