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後編
しおりを挟む予想通り声の主はあの黒巫女だった。
アタシは勢いよく立ち上がり黒巫女に食って掛かる。
「話が違うじゃないっ!!」
「何も違わんが?」
目の前の女は涼しげな無表情でアタシを見つめている。
あまりの悔しさに黒巫女の顔を目掛けて拳を振るった。
しかし黒巫女はヒョイと軽く避けたので、アタシは勢いよく地面に倒れる。
「…どういう事なのか説明しなさいよ。」
アタシは拳に爪が食い込む程力を込めて、下から見上げる形で黒巫女を睨みつけた。
「どうもこうも与えた10秒の帳尻を貴様自身が合わせとったんじゃよ。」
黒巫女は無表情のままアタシを見下ろして答える。
「…は?意味わかんない。」
「スマホを1度取りに戻った時に待ち合わせに遅れるかもと、無意識にいつもより少し速い歩調だったんじゃ。
その速さで10秒前に倒れるはずの街路樹にピンポイントになってしまった。
残念じゃったな。」
黒巫女は少しも残念じゃなさそうな口振りで伝えた。
「…ウソでしょ…?
もう一回、もう一回よ!!」
出来ないとは分かりつつも諦めきれない。
「良いぞ。
今度は10秒をやらん替わりに記憶をそのまま残しといてやろう。」
黒巫女はあっさりとアタシの提案を破格の条件で受け入れた。
「なんじゃ、嬉しくないのか?」
アタシの怪訝そうな顔を見て聞いてくる。
「…話がうますぎる。」
黒巫女は無表情のまま数秒見つめた後
「クフッ…アハハ!
アーハッハッハッ!!」
突如、爆笑しだした。
あまりの豹変ぶりに、いや目元は笑ってないその笑顔に背筋にゾワリと恐怖が這い上がってくる。
ひとしきり笑った後にピタリとまた元の無表情に戻り
「ーそもそも貴様は何故死んだと思う?」
アタシに問いかけた。
「…そんなの運が悪かったからでしょ?
普通は木が倒れてくるなんて思わないわよ!」
「ハズレじゃ。
正解は貴様が百人の人間から死ぬ程恨みを買っていたからじゃ。
16の身空でこれ程の恨みを買うとは恐れ入る。
死ねばいいという百人分の積もり積もった恨みが、今日爆発して貴様に降り掛かったんじゃよ。
我が上司も珍しく悩まずに貴様を地獄行きに決めたぞ。」
黒巫女の言葉に頭がグルグルする。
恨み?
百人?
…地獄行き?
「…上司って…?」
無意識に疑問が口から出ていた。
「貴様もよく知る閻魔大王様じゃ。
まぁ、地獄に行く前に貴様はまだ98回残っておるぞ。」
「…何、何が98回なの?」
疑問形にはなってしまったが薄々勘付いている。
「もちろん今日、現世であと98回死んでもらう。
つまり貴様が望もうと望むまいと、やり直しはあと98人分決定なんじゃよ。
嬉しいか?」
…嬉しい訳がない。
あと98回も苦しい思いをしなければならないなんて、想像しただけでゾッとする。
「因みに栄えある最初の恨みの死は、貴様が小学4年の時に虐めに虐め抜いて死に追いやった少女じゃよ。」
黒巫女の言葉に忘却の彼方だった元クラスメイトを薄っすら思い出す。
あの、いつも陰気な顔をして俯いていたクソガキを。
「あぁ、あと追加情報じゃ。
その百人の中にな、おるぞ。」
黒巫女はやけに勿体ぶって話す。
「…誰がいるのよっ?」
女は口の端を少しだけ上げて
「貴様が今日待ち合わせていた親友のヒマリと貴様の両親じゃ。
さぁ、もう時間じゃ。
疾く行け。」
衝撃の事実を受け止める事も出来ないままアタシの視界はブラックアウトした。
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