神様自学

天ノ谷 霙

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10月19日 連れ出して

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※同性愛的描写があります。苦手な方はご注意下さい。

降り続ける雨の音。地盤を緩ませて、崩していく。
それが現実の天気ではなく、目の前にいる菜古ちゃんの心だと気付くのに、そう時間はかからなかった。
「あ、ドア…」
ドアを塞いでいることに気付いた亜美が、恥ずかしそうに少し顔を赤らめながら移動する。潮賀くんが、ありがとうございます、と笑うのを見て亜美も笑う。ほのぼのした和やかな雰囲気だが、このうち片方を好きな人からしたら苦しいだろう。特に、気付かれにくい同性からの好意だとしたら。北原くんも亜美が好きだったはずだが、もう吹っ切れているらしい。何のためらいもなく、一瞬も苦しそうな表情をせず、見守っていた。
「あ、菜古ちゃん、クッキーありがとう。菜古ちゃんのお菓子美味しいから、大好きなんだよね!食べるの楽しみだなぁ」
潮賀くんが教室内に入ったからか、また先ほどと同じ調子で菜古ちゃんにお礼を言う。少し分かりやすすぎるその調子の変化に、菜古ちゃんの痛いくらいの鼓動が伝わってくる。私はどうすることも出来ない、と頭で考えていたが、そうやって自己完結するよりも先に体が動いていた。
私は菜古ちゃんの手を取って、無意識に何かを話して、そこから連れ出してしまった。
~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~
「…あ、あの…」
階段を少し登って、空き教室近くの死角あたりで、菜古ちゃんは口を開いた。私は慌てて引いていた手を離す。
「あ、ごめんね…えっと、私は稲森夕音」
「…あ、わ、私は、古宮菜古です…!」
ほぼ初対面の先輩に行きたい手を取られて連れ出されたら、警戒もするだろう。申し訳なさと体が勝手に動いてしまった焦りと混乱で、言葉が出てこない。なんとか絞り出して、そっと言う。
「…苦しそうな顔、してたから」
私が眉尻を下げてそう言うと、菜古ちゃんは肩をびくりと震わせた。
「少し、そういうの観察するのは得意でね。連れ出しちゃった方が良いかなって思って…余計なお世話だったらごめんね」
「い、え…大丈夫です…」
そう言いながら菜古ちゃんは瞳を潤ませる。泣きそうなのが分かりやすい。これくらい感情が分かりやすいと、隠すのも大変だろうし、亜美に気付かれないように頑張っていたんだろうな、と思った。私はどうすれば良いか分からなくて、直感的に震える手で頭を撫でた。間違ってたら恥ずかしい。でも、何故だかこれが正解な気がした。
菜古ちゃんは、決壊したダムのように瞳から大粒の涙を流し始めた。
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