神様自学

天ノ谷 霙

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しゅいろ

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少女は寂れた本殿に祈りを捧げてから端の方に腰掛けると、小さな体をさらに小さく丸めて、ボロボロの布とも呼べない代物を自身に掛けて目を閉じた。どうやら雨風を凌ぐための仮家としているようだ。
数日間似たような出来事を見せられて、分かったことがある。少女は孤児であり、名前を呼ばれることはない。自身でも分からないようで、名乗るような様子は全くと言っていいほどなかった。容姿が周囲と異なるからという理由で気味悪がられ、排斥されている。
そして今、この辺りは干魃かんばつに見舞われているらしい。干上がった土は何日も雨水を摂取しておらず、村人が持っている籠の中に鎮座する野菜は細く萎びている。人々の肌も乾き、何日も水浴びが出来ていないのであろう、現代ではあり得ない程に汚れている。
そしてこんな時ほど、人は神に頼るもの。
手入れなど数年は怠っているだろう軋んだ神社に時折訪れては、「雨を」「水を」と願いを呟いて帰って行く。その度に、神社の端で丸まっている少女に敵意を向けながら。
またあの子供たちがやって来た。彼らは神社に祈るのもそこそこに、すぐに少女を見つけて罵倒する。むしろ探し出してわざわざ悪口を言いに来たという様子だった。髪を引っ張り、ぶちぶちと音がする。痛いと泣けば、満足そうに地面に投げ捨てた。
「ざまぁみろ!」
「お前のせいで雨が降らないんだ!」
「水を返してよ!」
とんでもない言いがかり。けれど少女は言い返さない。言い返したらもっと酷いことになると知っているかのように、静かに涙をこぼすだけだ。
「…何なのよ…」
独り言として呟かれたそれは、波紋のようにその場に響き渡った。
『お主は、彼の者らに何かしたのか?』
凛とした声が、静かに耳を揺らす。地面に倒れ込んだままの少女が驚いて振り返ると、そこには荘厳な巫女装束に身を包んだ女性らしき者が立っていた。稲穂色の髪に、赤い瞳。長くウェーブがかった髪は風に煽られ、そのままふわふわと中を舞っている。今よりもずっと長い。羽衣のようなものを纏い、彼女を中心に陣が描かれている。
一目でヒトではないとわかる彼女は、稲荷様だった。
「…だれ?」
『ほぅ。やはりお主はわたしが見えるのか。気配を聡く感じ取るとは思っていたが』
稲荷様の言葉に、少女は首を傾げる。どうやら私にはヒトではないとわかる姿でも、幼い彼女には区別がつかないようだ。
『にしても相変わらずヒトは分からんな。同じ人類であろうに、何故小さき者1匹に当たるのだ?』
心底わからないと眉を顰める稲荷様。その言葉に、少女が顔を暗くして小さく呟いた。
「わ、わたし、が………ちがうから………」
重く苦しい言葉が、沈黙の間にのしかかっていた。
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