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3月15日 温かいご飯
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羅樹の家の食器を借りて、お母さんと共に食事を取る。状況だけで考えればいつもと同じだが、光景がいつもと全くもって異なっていた。基本的には羅樹が家に来て夜ご飯を食べるというスタイルだったので、私が羅樹の家にいるこの状況は違和感がある。
食べ終えて片付けを始めたところで、とん、とんと小さな足音が聞こえて来た。振り返ると、少し体を怠そうに引き摺った羅樹がいた。薄手のカーディガンを羽織り、壁に手をつきながらこちらへ向かっている。慌てて支えれば、羅樹はふにゃりと相好を崩した。
「動いて大丈夫なの?」
「うん、さっきより平気。なんかいい匂いがする」
「あぁ、お母さんがご飯作ったから。キッチン借りたよ」
「そう、なんだ。ありがとうございます」
羅樹は私の手を借りながら座り、お母さんにぺこりとお辞儀した。お母さんはにこにこと笑ったまま首を横に振る。
「もう羅樹くんも大きくなったけど、私達にとってはまだ子供よ。こういう時くらい甘えなさい」
「は、はい…っ」
「まぁ夕音に甘えてもいいのだけど、この子は支える力が足りないかしらね」
「はぁ!?…っと、今、羅樹を支えて座らせたし…っ」
お母さんの揶揄いに反射的に返してしまったが、あまりうるさくすると頭に響くだろう。そう思い直して、小さな声で言い返す。するとお母さんは呆れ顔で苦笑した。
「物理的な話じゃなくて、体調的な話よ」
何も言い返せない。黙って羅樹の前に茶碗を置くと、羅樹はふるふると首を横に振った。食べられないのかと首を傾げれば、羅樹は真っ直ぐに私のお母さんを見ている。
「夕音は、すっ……ごく、頼りになるよ」
「え?」
「あら」
「いつもありがとう、夕音」
振り向いた顔は、主人が目の前に来た小犬のようで。びっくりしたが何を返せばいいのか分からない。母の前という状況も相まって素直な言葉は出せそうになかった。
「…どういたしまして」
本当は「私こそ助かってる」だとか、「こちらこそありがとう」といった言葉を返したかったが、そんな余裕はなかった。だから返事としては当たり障りないところを選び、目を逸らしながら呟くことしか出来なかった。そんな私をお母さんの何か言いたげな視線が撫でるが、知ったことではない。羅樹が元気になったら言ってみようか、と密かに目標を立てた。
「おいしい」
そんな私の決意には気付かず、羅樹がスープを口に運ぶ。柔らかく煮た野菜のコンソメスープだ。優しい味わいで、ホッとする。羅樹は少しずつではあるがゆっくりと粥を食み、野菜を嚥下する。少なめに出したとはいえ、きちんと完食した。
「ありがとう、ございます」
「いいえ」
お母さんが食器を下げると、ガチャンと音がした。珍しい、と羅樹と顔を見合わせていると、慌てた様子の羅樹のお父さんが玄関から走って来る。
「大丈夫か、羅樹!?」
「お父さん」
「あらまぁ」
羅樹のお父さんは羅樹の様子を見て、安心したように長く深い息を吐いた。
「それじゃあお父さんも帰って来たことだし、そろそろ私達は帰りましょうか。交代です」
「あ、うん。また明日来るね、羅樹」
「うん、頑張って治すね」
「急がなくていいとは思うけど、早く元気になってよね」
「うんっ!」
そんな挨拶をして、私はお母さんと一緒に羅樹の家を後にした。
食べ終えて片付けを始めたところで、とん、とんと小さな足音が聞こえて来た。振り返ると、少し体を怠そうに引き摺った羅樹がいた。薄手のカーディガンを羽織り、壁に手をつきながらこちらへ向かっている。慌てて支えれば、羅樹はふにゃりと相好を崩した。
「動いて大丈夫なの?」
「うん、さっきより平気。なんかいい匂いがする」
「あぁ、お母さんがご飯作ったから。キッチン借りたよ」
「そう、なんだ。ありがとうございます」
羅樹は私の手を借りながら座り、お母さんにぺこりとお辞儀した。お母さんはにこにこと笑ったまま首を横に振る。
「もう羅樹くんも大きくなったけど、私達にとってはまだ子供よ。こういう時くらい甘えなさい」
「は、はい…っ」
「まぁ夕音に甘えてもいいのだけど、この子は支える力が足りないかしらね」
「はぁ!?…っと、今、羅樹を支えて座らせたし…っ」
お母さんの揶揄いに反射的に返してしまったが、あまりうるさくすると頭に響くだろう。そう思い直して、小さな声で言い返す。するとお母さんは呆れ顔で苦笑した。
「物理的な話じゃなくて、体調的な話よ」
何も言い返せない。黙って羅樹の前に茶碗を置くと、羅樹はふるふると首を横に振った。食べられないのかと首を傾げれば、羅樹は真っ直ぐに私のお母さんを見ている。
「夕音は、すっ……ごく、頼りになるよ」
「え?」
「あら」
「いつもありがとう、夕音」
振り向いた顔は、主人が目の前に来た小犬のようで。びっくりしたが何を返せばいいのか分からない。母の前という状況も相まって素直な言葉は出せそうになかった。
「…どういたしまして」
本当は「私こそ助かってる」だとか、「こちらこそありがとう」といった言葉を返したかったが、そんな余裕はなかった。だから返事としては当たり障りないところを選び、目を逸らしながら呟くことしか出来なかった。そんな私をお母さんの何か言いたげな視線が撫でるが、知ったことではない。羅樹が元気になったら言ってみようか、と密かに目標を立てた。
「おいしい」
そんな私の決意には気付かず、羅樹がスープを口に運ぶ。柔らかく煮た野菜のコンソメスープだ。優しい味わいで、ホッとする。羅樹は少しずつではあるがゆっくりと粥を食み、野菜を嚥下する。少なめに出したとはいえ、きちんと完食した。
「ありがとう、ございます」
「いいえ」
お母さんが食器を下げると、ガチャンと音がした。珍しい、と羅樹と顔を見合わせていると、慌てた様子の羅樹のお父さんが玄関から走って来る。
「大丈夫か、羅樹!?」
「お父さん」
「あらまぁ」
羅樹のお父さんは羅樹の様子を見て、安心したように長く深い息を吐いた。
「それじゃあお父さんも帰って来たことだし、そろそろ私達は帰りましょうか。交代です」
「あ、うん。また明日来るね、羅樹」
「うん、頑張って治すね」
「急がなくていいとは思うけど、早く元気になってよね」
「うんっ!」
そんな挨拶をして、私はお母さんと一緒に羅樹の家を後にした。
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