神様自学

天ノ谷 霙

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それはまるで恋に似た

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分かり合えなかった。
分かり合う前に察したふりをして、相手から言葉を突き付けられるのを拒んだ。
それが更なる悲劇を生むと理解していても、全ての生き物より上位の存在である神様だったとしても、気付くのには時間と経験を要する。

神だって人だって、学ぶのだ。

自分の意思で、自分の培って来た関係で、多くのことを学ぶのだ。

私は、稲荷様の思った通りにならなかった。稲荷様が考えたように、稲荷様や恋音こいねさんと関わった日々を忘れて羅樹と共に歩むことは出来なかった。推測など、自分勝手なもので。そうだと気付くには、話すことが必要となる。
虹様も、かつてヒトと想いを交わした時に同じように行動した。神の掟に則って姿を消したが、それでもその交わした想いを消すことは出来ずに長いこと苦しんだ。あの時に少しでも話しておけば、またヒトの世に降りて彼の居ない世界に絶望することもなかっただろうし、その恋故に狂うこともなかっただろう。
恋音さんだってそうだ。ヒトとの繋がりを酷く厭うならば、主人である稲荷様を信じていたならば、素直にそう打ち明ければ良かったのだ。稲荷様はそんな理由で使つかいから外すような形ではないし、恋音さんもそれを分かっていたのに出来なかった。
それは、普遍に起こること。好きだからこそ、大切だからこそ本音を打ち明けられない。本当のことを言って拒絶された時が怖いから。拒絶しないと分かっていても、それが相手を好意的に見たいが故の色眼鏡を掛けていないとは言い切れない。相手を信じられないのではなく、自分を信じられないのだ。本音を伝えて、それでも相手は絶対に離れない。そう信じてそれを実行出来るだけの環境も状況も、常に移ろい変わりゆくものだから何の慰めにもならない。不安と期待に揺れ動き、それでも遠回りの最善を取りたがる。言葉も本音も伝えずに、この気持ちを理解されることを夢見ている。

それはまるで、恋のようで。

好きだという気持ちを伝えたら。それを答えられないと言われたら。それで相手が自身を避けるようなことはしないと分かっていても、その言葉を口にしたら最後、何かが変わってしまうから。受け入れられる世界を夢想して1人戸惑う方が、受け入れられない世界で相手を見つめるよりもずっと痛みも苦しみも少ないから。
その葛藤は恋だけでなく、全ての関係で起こり得る。それを私は、今回の出来事で初めて知った。そして私も同じ行動を何度も取って来たと理解した。
空色の瞳が、私の視界の真ん中で鮮やかに色付く。
話し合えた。やっと進めた。だから今、羅樹はここにいる。
これからも幾度となく迷って、恋のような葛藤を繰り返すのだろう。それでも、話し合えた故の成功を、私は今この身に刻んだから。私達は、この身に刻めたから。
胸を張って言える。人も神様も、自分で学べるのだと。そして学んだからこそ言える。
言わなければ伝わらない。大切なこと程何度も口に出して繰り返し伝えなければいけない。

だから私はゆっくりと、口を開いた。
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