我が輩は石である。名前など有るわけが無い。

seizann

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10.我が輩は石である。魂論者の石である。

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 この世界が衛星で無いとした場合。
 天候や季節は何故巡っているのだろうか?

 我が輩は石である。名前など有るはずが無い。

 そもそも、地球の天候というものは、太陽の引力と地球の自転との、絶妙のバランスのなせる技だった。
 おそらく天動説が適用されているであろうこの世界で、何故雲が流れ、季節が巡るのであろうか。
 我が輩の愚考は一つの結論に辿り着いている。
 すなわち、この世界の全てに、魂が宿り、意志が介入しているのではないか、という説である。
 我が輩一人の為に、この広大な地獄が存在しているとは考えられない。
 つまり、この世界の動物や魔物だけでは無く、自然の樹木一本まで、果ては創造神という存在に至るまで、実は平等な魂が存在しているのでは無いか、という考え方だ。

 この考え方ならば、テイム、という概念に一つ考えを巡らせることが出来るのではないだろうか?
 つまり、テイムするモンスターは、人間と同じ魂を有しており、肉体という器の形状が違うだけである、と仮定する。
 これは既に論じた、魂と肉体は別である、という論説を元にしている。
 魂は同一の存在であるが、器である肉体によって、世界での能力や行動が制限される。
 この制限の違いが、人型の生物と、魔物や動物の違いであるとする。
 そして、人という器に入った魂と、魔物という器に入った魂が触れあうことで、器に存在した限界を少し突破出来た。
 それこそが、テイム、という状態なのでは無いだろうか。

 またこの『肉体が器に過ぎない』という仮定により、ある程度考察が可能ではないかと浅慮する。

 この世界には、無数の魂が存在する。
 肉体という器を得た魂もあれば、器を得ていない魂も存在する。
 それが、この世界の、自然の営みなので無いだろうか。
 雨風や、霧、落雷に至るまで、形の有無に関わらず、全て魂がある。
 そして自然界の魂と肉体を持つ魂が、例えば共鳴のような事を発生させ、現象として発動するのが『魔法』と考える。
 これは、全て「魂が根幹に存在する説」ということになるだろう。
 この考え方は、ヒットポイントやマジックポイント、という考え方からは少し外れていかもしれない。
 魂が数値で表せるのなら、我が輩にもステータスボードが見えてもいいはずだ。

 この世界はゲームでは無い。

 地獄であることを忘れてはいけない。

 我が輩は石である。名前など有るはずが無い。
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