我が輩は石である。名前など有るわけが無い。

seizann

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11.我が輩は石である。生前、無意味なプライドに固執した石である。

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 ゲームばかりしていると、ゲーム脳になる。
 ゲームの世界の経験は、現実世界で役に立たない。
 ストレス解消という名の逃避である。

 我が輩は石である。名前など有るはずが無い。

 諸姉諸兄諸君。
 我が輩は、悔いを感じている。
 自分のかつての思考を、今更後悔する、愚者である。

 今、諸姉諸兄等の読み進めるファンタジーに、数字で表す世界の、何と多いことか。
 それは、ゲームの世界に転生した、と必ず名前が付いているファンタジー世界だ。
 それにしても、何故日本国内のファンタジーにはこれほどゲームかぶれのファンタジーが増えたのか。
 話は単純だ。
 制作会社の連中から、諸姉諸兄諸君が思考と想像が出来ない低俗な人間と思われているからだ。
 諸君等は、一から十までキャラ説明、世界観説明が無いと、作品の面白さが理解できないと考えられている。
 一から十まで設定が完璧な世界では無いと許されないと思われている。
 だから、既に固定された『ゲーム』という概念を利用したファンタジー作品が増えるのだ。
 ”そういうゲームなので”という逃げ道を作っているのだ。

 このザマになり、つくづく思う。

 我が輩は『何に』そんなに目くじら立ててたんだろう?

 作品に対して、文句があるのはまだ良い。
 自分の趣味趣向と一致する作品でないかぎり、絶対に不平不満はある。
 しかし、それを作り手に向かって言う必要は、果たしてあっただろうか?
 世間に向けて、同調者を求める必要はあっただろうか? 
 わざわざ作り手に不満が届く手法を選び、不満の言葉を投げかける理由はただ一つ。

 マウントを、とりたかったのだ。

 何故、言い切れるか?

 我が輩が、そうだったからだ。

 お前等が気付かなかった間違いに俺は気付いているんだ、と悦に入って指摘する。
 そんなのは上げ足取り程度の言い分に、賛同する人間も、全く同種の人間だったのでは無いかと今になって思う。

 作り手へのリスペクト、とはよく言うが、まず作品を楽しむ姿勢をこちらがとらなければ、作品と正面から向き合うことが出来ない。
 世界観を許容する準備が無ければ、どんな世界だって理論は崩壊することだろう。
 存在しているゴブリンやスライムに対して、現実に存在するわけが無い、と言い始めるのと同じだ。
 どんな世界だろうと、自分が許容しなければ受け入れられない。
 それは、作品だろうと、対人だろうと同じだろう。

 もちろん、原作レイプと呼ばれる状況を生み出した作品はいくつもあると思う。
 クレームを入れたくなる気持ちも分かる。
 我が輩だって生前入れた。
 大好きな作品が見るも無惨な商品になっていたら、それはガックリくるものだ。

 ただ。
 我が輩の場合について語るならば。
 作品を楽しむ姿勢を、我が輩はいつの間にか失っていたのだ。
 日本のテレビドラマがダメだ、日本のバラエティがダメだ、邦画がダメだ、ゲームはつまらない、アニメは二番煎じばかりだ。
 このように論うことは簡単だ。
 だがしかし。
 我が輩は”理想”を語れないのだ。
 日本と海外を比較できるほど外国のドラマを観たのか。否。
 海外のアニメと日本のアニメの対比が出来るか。否。
 日本のゲームを遊び尽くすほど買ったか。否。

 いつの間にか、文句を言うための理由付けのために、不買運動をしていたのだ。
 本当に好きなら文句を言いつつもまずは観ただろう。
 つまらなければ「なんかダメ」で視聴を止めれば良かった。
 いつの間にやら”つまらないものを観ない自分”に酔っていたのだ。
 だから、誹謗中傷することに、のめり込んだ。
 自分ならもっと面白い物を作れると、勝手な妄想を詰め込んで。

 愚者の思考は、いつでも内向的なものだ。

 我が輩は石である。名前など有るはずが無い。

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