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18.我が輩は石である。進化の考察をする石である。
しおりを挟む魂には重さがある、と物理学者が認めているらしい。
我が輩は石である。名前など有るわけが無い。
進化とは何であろうか?
諸子諸兄諸君。
唐突な話題に失笑してくれるな、我が輩はいたって真剣である。
なにせこの考察は、我が輩の一縷の望み、天界から垂らされた一本の蜘蛛の糸なのだ。
実際に垂れてきても、石なので掴むことは出来ないが。
さて、ゲームの世界では定番の進化であるが、転生した存在が進化を遂げていくケースは少ない気がする。
人間に生まれ変わったらそのまま人間。
人間に生まれ変わったけど、なんだかチートを貰ったので神様っぽく進化した。
人間以外に生まれ変わったら進化して強くなった
大概、人間以外の要素が関わることが進化の条件であるらしい。
石の場合はどうなるのであろうか。
目下考察、挑戦のさなかである。
我々の考える進化とは二種類あるように思う。
一つはダーウィンの進化論のように、生物がその環境に適用するために遂げる生物としての進化である。
もう一つは、ゲームキャラクターの如く、レベルアップの証明としての進化である。
後者は大概強さのインフラ対応としての過程で発生する事象で有り、場合によっては何度も進化する。
総じて、某ゲームのようにピカ~がライ~になったり、~ジョンが~ジョットになったり、コイ~が~リュウになったりするのが進化が基本の考え方である。
そこから雑魚キャラが進化したらちょっと強くなる的な進化は、ゲームの敵キャラから引用されたことだろう。
では、人間がエルフやドワーフに進化しないのは何故であろうか?
ダーウィンの進化論に従えば、考え得るドワーフの環境で人間が暮らし続けていれば、1000年、2000年という時間を掛けて、ドワーフになっていくのではないか?
何故、亜人はある日突然、亜人という種族なのであろうか?。
そもそも、人間が進化して亜人になる、という概念が我々には存在しないように思う。
猿から進化したのが人間であるが、人間が猿に進化することは無い。
それくらい、別の存在として考えているのではないだろうか。
神には進化するケースに付いては、日本に元々根付いている考え方が存在するから、扱うのに違和感が無いのであろう。
菅原道真公しかり、徳川家康公しかり、である。
そもそも。
進化というなら言葉も随分とおかしくなっている。
進化順としてメジャーなゴブリンからホブゴブリンになるケースであるが、ホブゴブリンの語源を調べると、ホブとは善良な妖精の総称なので、善なるゴブリンという名前になるらしい。
しかし、昨今の扱いは人間を襲うゴブリンの上位種である。
なんとも善なる存在だ。
閑話休題。
現在、我が輩は自身の提唱する「神が作った器の中に魂が宿り、世界が巡っている」という説で考察している為、ダーウィンの進化論には一度ご退場願うとする。
進化論を論じるにはサンプルが必要であるが、この世界を見る限り、環境に応じた種族の進化は見受けられない。
また、各異世界のファンタジーを眺めても、ダーウィンの進化論で進む世界は少なかろう。
環境に応じた進化が存在しない、ということは一つの異世界の定義に定められるのかもしれない。
さて、我が輩の一縷の望み、精霊への進化についてであるが、残念ながら精霊という存在が感知出来ずにいる。
これは随分と疑問の残る話である。
世界に存在する数多の魂と繋がり、世界を知覚する我が輩は、世界を見つめる石である。
見つめるだけで何も出来ない石である。
それ故に、この世界の様々な生物を感じ取ることが出来るというのに。
何故、精霊という存在だけ、知覚できないのか。
何故。何故。何故。何故。
堂々巡りの思考を繰り返す中で、ふと我が輩も、地獄に堕ちて成長したものである、と笑いがこみ上げた。
生前であれば、我が輩は、苦難の全てに外的原因を求めた。
詰まるところ、どんなに失敗しようが、俺は悪くない、の繰り返しである。
石になって、随分諦めが付いた。
他人の所為、世界の所為にして、何が変わる?
我が輩に出来ることは思考する事のみであるのだから、とにかく思考するのだ。
必ず、我が輩の了見が、狭いだけで、他に考え方が存在するはずなのだ。
故に、我が輩がまだ考えていない可能性と、ひたむきに向き合うのだ。
我が輩は石である。名前などあるはずがない。
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