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19.我が輩は石である。目指すべき存在を認識した石である。
しおりを挟む世界の全てを知覚することは、本来人間の脳では耐え切れないことであろう。
我が輩は石である。名前など有るはずが無い。
この世界で知覚できない精霊という存在を考察して、また時が流れた、と思う。
最近、物思いに耽っていると、大概数日経過してしまうようになった。
歳はとりたくないものだ。
しかし幸い時間だけはあるので、ひたすらに世界と自分とを見つめ続けた。
何故精霊という存在だけが近く出来ないのか。
それは、イフリートやら、ウンディーネやら、西洋の精霊の名前の存在かもしれない。
日本神話の八百万の神のような存在なのかもしれない。
とにかく、自然現象の中に存在しているはずの魂について、ずっと考え続けた。
やがて、精霊以外に、我が輩が『いる』と定義しているにも関わらず、知覚出来ない存在に思い至った。
「神」の存在である。
この世界は「創造神」が作った世界、と定義しながら、「八百万の神」と言葉を使っていながら、精霊の存在は「精霊」で有るという考え方に縛られていた。
自分の愚鈍さには呆れるばかりである。
「精霊と神とは、近しい存在である」
これが我が輩の結論である。
神に等しい存在であるから、我が輩が知覚できなかった。
精霊は、生物として定義されない。
精霊は、器たる身体を所持していない。
精霊は、純然たる魂として、自然界に存在する。
なるほど、これは創造神の定義とは相容れないが、肉体という器の中の魂でない時点で、神寄りの存在である、と考えるべきであった。
考えれば、精霊に転生した、というファンタジーに於いても、精霊は神に近い存在になっているように思う。
肉体という檻に収まらない存在であることは間違い有るまい。
さて、我が輩が精霊を知覚するためには、肉体という器ではなく、魂そのものを知覚する必要があるようである。
つまり、我が輩が目指す進化は、神に至る第一歩を踏み出すことに他ならなかった訳だ。
………。
……………。
……………………。
我が輩は石である。名前など有るわけが無い。
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