魔法王国軍の日常 〜上級冒険者に追放された少女は、レベル0から本気で生き抜いてやると決意したようです〜

たにどおり

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戦闘開始!

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「こちら誘引部隊! 我オーガと接敵せり! これより誘導を試みる!」

 遂に現れた本命オーガ、それは魔王軍の中でも一際大型でパワーのあるモンスター。

「ゴアアアアアアアアァァァァッッ!!!!」

 木々を薙ぎ倒しながら突き進んでくるオーガは恐ろしく、思わず後ずさりそうになる。
 だけどわたしたちの任務は誘導、自警団の魔導士が魔法の照準を向けた。

「「「『ファイアボール』!!」」」

 ナーシャさんを含めた何人かが、魔法陣から連続でファイアボールを繰り出す。
 整った集中射がオーガの顔面に直撃、確実に入ったと確信しただけに、突進の勢いを弱めないオーガに誰もが驚いた。

 魔法をくらっておいて無傷!? でもありえないと嘆くのは後だ、肉薄してきたオーガが、巨木のようなこぶしを自警団へ振りかざした。

「うっ、うわあああああ!!?」

 巨腕が自警団の魔導士へ向かう。

「はあぁッ!!!」

 わたしは地面を蹴ると、大木にも似たオーガの腕を横合いから剣で叩きつけ、僅かに軌道を逸らした。

「早く! 離れてッ!!」

 オーガのハンマーじみた攻撃をかろうじて逸れさせると、さらに左手のファイティングナイフをオーガの目へ投擲。
 ナイフが突き刺さると同時、オーガは目を抑えながら断末魔を放つ。

 軍では魔物の弱点についても習う、多くのモンスターが存在する中、大体の敵に通ずる部位は"目"。
 相手の嫌がることは徹底的に、軍で教えられたこの意識はあまり褒められたものじゃないけど。

「だああああッ!!!」

 それでもやるなら徹底的にだ。
 上出来と言えるコンビネーションで、入れ替わりに強烈な体術をクロエが打ち込む。

 半長靴が叩きつけたのは、目に刺さるナイフ。
 根本までめり込み、オーガの視界半分を奪う。
 さらに、気を引くために自警団が再び詠唱を開始。ファイアボールを発射した。

「ゴギュッ......ガアアアアアァァァァッッ!?」

 さすがに答えたらしい相手が、片方の目から血を滴らせながら突っ込んでくる。
 流れは順調、あとはこれを繰り返しながら後退すれば良いはずだった。

 それだけに、後方に突如出現した"壁"はこちらの作戦を根本からひっくり返すものだった。

「おい! 後方にフードプラント・エルフだ!! 道が塞がれるぞ!」

 地面を破って、さっきクロエを襲った触手がカーテンのように退路を断つ。
 ファイアボールで焼こうと試みるも、数が多すぎる上、呑気な詠唱はオーガが許してくれない。

 気づけばナーシャさん以外の自警団とはぐれ、わたし、クロエ、ナーシャさんの3人は、予定と真逆の海側へ逃げざるをえなかった。

「申し訳ありません! まさかここまでフードプラント・エルフがいるなんて......!!」
「ナーシャさんのせいじゃありません! ここはひとまず逃げましょう!」

 半長靴やニーハイソックスを濡らしながら小川を下る。
 その間も、オーガは真後ろから雄叫びと共に追いかけてきた。

 ホントにマズい! オーガ相手に真正面から肉弾戦とか絶対無理だし、そもそも火力が足りない。
 "死"が頭をよぎった瞬間、魔導通信機から男性の声が鳴った。

 《こちら戦車! 状況送れ!》

 後方待機の戦車からだ。わたしはとにかく急いで状態を知らせる。

「こちら誘引部隊! トラブル発生により誘導失敗! 現在追撃を受けている!!」

 泣き出しそうな自分を殺し、わたしは状況を淡々と伝える。

 《――――了解した、貴隊の位置を知らせることは可能か?》
「信号弾が一発......、それだけです」

 ナーシャさんが持ってきた信号弾発射機、でも、作戦が破綻した今じゃどう使えば。

 《わかった、北の海岸へ向かい、到着したらすぐに撃ち上げろ! 我々はこれより森を抜けて支援に向かう!!》

 森!? 戦車で深い森を抜けるなんてありえない。
 そんなわたしの懸念を察したように、砲手のセリカからも通信が届く。

 《大丈夫ッスよティナさん、戦車はそう簡単には壊れません! 必ず助けてみせます!》
 《そういうことだ、12億円の税金を今活用しないでどうする! 北の海岸で落ち合うぞ》

 一方的に通信が切られる。

「マジ? 戦車来んの!?」

 これにはクロエも目を見開く。

「あの魔法金属でできた兵器か、ただ、今はそれに賭けましょう」

 言ってる今も、オーガが真後ろから河石を吹き飛ばしながら迫ってくる。
 とにかく小川沿いに、びしょ濡れになりながらわたしたちは走り続けた。



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