魔法王国軍の日常 〜上級冒険者に追放された少女は、レベル0から本気で生き抜いてやると決意したようです〜

たにどおり

文字の大きさ
24 / 47

かけがえのない存在

しおりを挟む
 
 石畳を踏みつけ、荒れ果てた大通りを疾走する。
 エーテルスフィアと呼ばれる、食虫植物のような外見をした古代兵器の根本をわたしは目指していた。

「そこを――――どけぇッ!!!」

 地面を突き破って出現した触手を、一本残らず切り伏せる。
 オーガすらのめすレンジャー教官の訓練に比べればあまりに脆く、触手より雑木林の方がまだ障害になりえただろう。

 根本まで到達すると、塔のようにそびえ立つ幹の下、突き破られた石畳に僅かな隙間が空いていた。

「通れるかな......」

 大きくはないものの、子供1人分程度ならなんとか入れそうだった。
 この時ばかりは、まだ幼いこの身に感謝してしまう。

 隙間の下に落ちるとそこは空洞が広がっており、数メートル落下してから5点着地という衝撃を分散する方法で着地。
 すぐさま周囲を警戒した。

「5点着地、練習した甲斐があったわ......」

 レンジャー過程で150回はこの着地訓練をして、腕をあざだらけにしたのが懐かしい。
 でも今は思い出に浸る時間も無い。

「クロエ! クロエいるの!?」

 彼女がいれば魔導砲の発射は防げる、だけどそれ以前にクロエに会いたい。会って無事を確認したかった。
 でも、周囲をクリアリングしきってない内に叫んでしまったのはミスだった。

「ガギュルギュルアアアアァァァッッ!!!!」

 空間に明かりが灯される、咆哮の正体は蟻とカマキリを合わせたような魔物。
 部屋中を照らす球体を守るようにこちらを威嚇しているが、わたしの瞳は最も求めていた少女を映していた。

「クロエッ!!」

 魔物の後ろ、気を失ったクロエがツタではりつけにされていたのだ。
 絶対に助ける、その想い一本で剣を抜いた。

「キュラララァッ!!!」

 魔物の6本ある内の前2本が、まるで洗練されたロングソードのように振るわれた。
 手数もリーチもパワーも劣っているが、諦める気は毛頭ない! 弾き、流し、滑るように敵の脚を斬り落とす。

「だあああッッ!!!」

 刃を何度も突き立てるが、相手も昆虫らしい外見なのかタフで、怯みすらせず攻撃を打ち込んでくる。
 このままじゃ埒が明かない、体術で魔物を仰け反らせると同時にダッシュし、クロエへ駆け寄った。

「シャララララララッ!!!!!」

 辺りを巻き込みながら斬撃が飛んでくる、切り傷から出血しようが関係ない!
 届け! 届け!! あの娘を――――クロエを! 助けるとわたしは約束したんだッ!!! 
 あの娘は――――

「わたしのペアを――――――――返せえッッ!!!」

 クロエに絡まるツタを断ち切る、けれど、同時にわたしの体は大きく吹っ飛んでいた。
 横合いから振られた一撃を、剣だけでは支えきれなかったのだ。

「あぐッ!」

 背中から装飾品に叩き付けられ、碎けた破片をかぶりながら思わず咳き込む。
 久しく味わう痛撃に喘ぐわたしへ、魔物がその剣のような脚を振り上げた。

 痛いし怖いし最悪も良いところ、けれど――――希望はわたしのものだった。

「キギャッッ!!??」

 魔物の背中にコンバットナイフが突き刺さり、体液がまきちらされる。
 黒髪の少女が投擲した王国軍正式装備は、ものの見事に敵を射抜いたらしい。

「ティナ! 今だーッ!!」

 開放されたクロエの放った投げナイフにより、魔物の動きは一挙に鈍る。
 スキだらけもいいところ、豊潤に生み出された時間を最大限活用し、右腕に最後の魔力をかき集めた。

「――――『レイドスパーク』!!!」

 敵の全身が焼け焦げる、わたしの残った魔力全てを投射された魔物は、ボロボロとその場に崩れ落ちた。
 魔力の消耗で仰向けに倒れると、わたしは差し込んでくる日差しを見上げた。

「はあッ......はあ、ナイス掩護」
「えへへっ、そりゃーわたしはティナのペアだし当然でしょ。......ティナなら戻ってくるって信じてたしさ」
「過大評価ね、でも......あなたが無事で良かった」

 戦術上の副目標、わたしの中の第1目標達成に安堵していると、地表から爆発音が響いた。
 まだこれで終わりじゃない、わたしとクロエは戦略目標達成に向けて、最後の仕事に掛かった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...