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かけがえのない存在
しおりを挟む石畳を踏みつけ、荒れ果てた大通りを疾走する。
エーテルスフィアと呼ばれる、食虫植物のような外見をした古代兵器の根本をわたしは目指していた。
「そこを――――どけぇッ!!!」
地面を突き破って出現した触手を、一本残らず切り伏せる。
オーガすらのめすレンジャー教官の訓練に比べればあまりに脆く、触手より雑木林の方がまだ障害になりえただろう。
根本まで到達すると、塔のようにそびえ立つ幹の下、突き破られた石畳に僅かな隙間が空いていた。
「通れるかな......」
大きくはないものの、子供1人分程度ならなんとか入れそうだった。
この時ばかりは、まだ幼いこの身に感謝してしまう。
隙間の下に落ちるとそこは空洞が広がっており、数メートル落下してから5点着地という衝撃を分散する方法で着地。
すぐさま周囲を警戒した。
「5点着地、練習した甲斐があったわ......」
レンジャー過程で150回はこの着地訓練をして、腕をあざだらけにしたのが懐かしい。
でも今は思い出に浸る時間も無い。
「クロエ! クロエいるの!?」
彼女がいれば魔導砲の発射は防げる、だけどそれ以前にクロエに会いたい。会って無事を確認したかった。
でも、周囲をクリアリングしきってない内に叫んでしまったのはミスだった。
「ガギュルギュルアアアアァァァッッ!!!!」
空間に明かりが灯される、咆哮の正体は蟻とカマキリを合わせたような魔物。
部屋中を照らす球体を守るようにこちらを威嚇しているが、わたしの瞳は最も求めていた少女を映していた。
「クロエッ!!」
魔物の後ろ、気を失ったクロエがツタではりつけにされていたのだ。
絶対に助ける、その想い一本で剣を抜いた。
「キュラララァッ!!!」
魔物の6本ある内の前2本が、まるで洗練されたロングソードのように振るわれた。
手数もリーチもパワーも劣っているが、諦める気は毛頭ない! 弾き、流し、滑るように敵の脚を斬り落とす。
「だあああッッ!!!」
刃を何度も突き立てるが、相手も昆虫らしい外見なのかタフで、怯みすらせず攻撃を打ち込んでくる。
このままじゃ埒が明かない、体術で魔物を仰け反らせると同時にダッシュし、クロエへ駆け寄った。
「シャララララララッ!!!!!」
辺りを巻き込みながら斬撃が飛んでくる、切り傷から出血しようが関係ない!
届け! 届け!! あの娘を――――クロエを! 助けるとわたしは約束したんだッ!!!
あの娘は――――
「わたしのペアを――――――――返せえッッ!!!」
クロエに絡まるツタを断ち切る、けれど、同時にわたしの体は大きく吹っ飛んでいた。
横合いから振られた一撃を、剣だけでは支えきれなかったのだ。
「あぐッ!」
背中から装飾品に叩き付けられ、碎けた破片をかぶりながら思わず咳き込む。
久しく味わう痛撃に喘ぐわたしへ、魔物がその剣のような脚を振り上げた。
痛いし怖いし最悪も良いところ、けれど――――希望はわたしのものだった。
「キギャッッ!!??」
魔物の背中にコンバットナイフが突き刺さり、体液がまきちらされる。
黒髪の少女が投擲した王国軍正式装備は、ものの見事に敵を射抜いたらしい。
「ティナ! 今だーッ!!」
開放されたクロエの放った投げナイフにより、魔物の動きは一挙に鈍る。
スキだらけもいいところ、豊潤に生み出された時間を最大限活用し、右腕に最後の魔力をかき集めた。
「――――『レイドスパーク』!!!」
敵の全身が焼け焦げる、わたしの残った魔力全てを投射された魔物は、ボロボロとその場に崩れ落ちた。
魔力の消耗で仰向けに倒れると、わたしは差し込んでくる日差しを見上げた。
「はあッ......はあ、ナイス掩護」
「えへへっ、そりゃーわたしはティナのペアだし当然でしょ。......ティナなら戻ってくるって信じてたしさ」
「過大評価ね、でも......あなたが無事で良かった」
戦術上の副目標、わたしの中の第1目標達成に安堵していると、地表から爆発音が響いた。
まだこれで終わりじゃない、わたしとクロエは戦略目標達成に向けて、最後の仕事に掛かった。
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