魔法王国軍の日常 〜上級冒険者に追放された少女は、レベル0から本気で生き抜いてやると決意したようです〜

たにどおり

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VSベルクート

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「はははッ!! 去年捨てたのはお前だったのか! ここにきて復讐でもしに来たと?」
「わたしに復讐の意思なんてない、あるのはもう二度と裏切られたくない、強くありたいという想いだけよ」
「それで騎士になったと? 囮とアイテム拾いの雑用が立派に言うじゃないか、魔力も残ってないボロボロの体でなにができる?」

 エーテルスフィアが輝きを増し、超高密度の魔力を収束させ始めた。
 おそらく、いよいよ魔導砲を撃つつもりなんだろう。

 確かにわたしは平凡だ、シルカやベルクートのような上位職に就けていたわけじゃない。
 でもだからこそ、わたしは1人であがくことをやめた。

「クロエ! 思いっきりやっちゃって!!」

 倒れるミーシャの前に立ち、魔導通信機でエーテルスフィアの根本で待機しているクロエに叫んだ。

 《了解ティナ!! 3、2、1――――!!!》

 アクエリアスの大気がまるごと叩かれたような轟音が発生する、立て続けに発生した爆発はエーテルスフィアの根本で発生。
 食虫植物のようなそれが僅かに傾斜し、魔力充填がピタリと止まったのだ。

「バカなっ!!? 何をした!!」

 昇りゆく煙を見たベルクートが、動揺を隠すことなく荒らげた。

「上陸した友軍工兵による"爆破"よ、コントロールスフィアの障壁にクロエが穴を開けて、その中に爆弾を設置した。たとえ1人じゃできなくても......それぞれに特化した人間が集まれば不可能なんて無い」

 軍とは組織、組織とはチーム。
 国家権力として整備されたそれは、わたしの見る限り最強のチームだ。

「甘いんだよ王国軍ッ! 根本のコントロールスフィアがやられても、僕が持つ"ルナクリスタル"さえあれば制御できる!! カウントダウンは止まらないのさ!!」
「早い話ね、だったら――――今すぐ奪い取るッ!!」

 1年の歳月を経て、わたしとベルクートの間に火花が煌めいた。
 かつて頼りにしていた剣撃が牙をむき、互いが互いの想いを攻撃に乗せた。

 曲がりなりにも仲間だった。ベルクートの剣の鋭さは間近で見ていたわたしが一番知っている。
 知っているからこそ、今なら彼の剣筋に対処できる。

「はああッ!!!」

 体術と組み合わせての一閃、ベルクートの斬撃を弾き返した。

「人を裏切って後ろから刺す、あなたのように卑怯な人間の被害者はもう出させない! ――――ここで終わらせるッ!!」

 あんな思いをするのはわたしが最後で十分だ、今はただこいつを倒す!

「これは摂理にすぎん! 弱者は淘汰され、強者だけが生き残る!! 卑怯などという弱者のエゴを持ち込んでくれるな!!」

 ベルクートの剣に魔力が伝い、空を切った数だけ猛スピードで斬撃が飛んできた。
 かまいたちのようなそれをさばき切り、再びつばぜり合いへ持ち込んだ。

「だったら力づくで――――――――あなたをねじ伏せるッ!!」

 わたしのドッグタグに表示されたクラスレベルは、アラル村救援から今に至るまでに『55』を超えていた。
 それでもまだベルクートを倒すには足りない......! もっと、もっと決定的な何かが――――――――

「仲間など道具にすぎん! 誰かを信じて破滅するなら、自分が破滅する前に裏切るのが当たり前だろうがッ!!!」

 攻撃が重くなり、一進一退の攻防が繰り広げられる。

「闇ギルドはそうした連中の集まりだ! 【10年前の事件】で仲間も政府もくそったれだと痛感したよ!! 他人のためと抜かすやつには反吐が出る!!!」

 凄まじい打ち合いの末、お互いの剣が粉々に砕け散る。
 細かな破片が飛び散る中、わたしはコンバットナイフを、ベルクートもダガーを取り出して戦闘は一瞬で再開された。

「10年前の事件も、その時の政府とやらもわたしは知らない! でもあなたのやり方は多くの人を不幸にする!! 罪の無い国民が大勢悲しんでしまう!!」
「かつて魔王軍に立ち向かえなかった腰抜け組織が国民だと? 笑わせるな騎士如きがッ!!」

 崩されたガードの間を縫って、ベルクートの打撃がわたしの腹部へ叩き込まれた。

「くはっ......」

 めり込んだ拳を中心に激痛が広がり、飲み込めなくなった唾液がこぼれ落ちる。
 勝ちを確信したベルクートが笑みを浮かべ、腕を引き抜こうとした瞬間だった。

「......なッ!?」

 わたしは痛打を与えたベルクートの右手をガッチリ掴むと、呼吸を整えながら顔を上げた。

「確かに勇者のしたことは......わたしたちが本来すべきだったことよ、でももう軍は無力じゃない! 国を! 誰かを! 守る力と意志がある!! こんな痛み――――」

 ベルクートの腕を引き寄せると、わたしは右の拳を血が出んばかりに握った。

「貰ってる給料の内なのよッ!!!」

 渾身の右ストレートをベルクートの顔面に叩きつけた。
 ふっ飛んだ勢いで民家へ直撃、バラバラと瓦礫が降り注いだ。

「はあッ! ......はあ」

 砂埃が晴れると、ベルクートがこちらを睨みつけていた。
 さすがにあれだけじゃ倒れないか......。
 口元を拭い、1歩前へ足を踏み出した時だった。

「えッ?」

 膝の力が抜け、思わずその場に手を付いてしまう。
 ダメージではない、ここに来てなんで――――

「はッ!『魔力切れ』のようだな、覚えたての魔法を撃ちすぎたツケというところだろう。惜しかったな」

 余裕を取り戻したベルクートが、白銀に輝くルナクリスタルを見せながら近づいてくる。

 そんな......あと少し、あと少しなのに。
 くそッ! くそッ! ここでルナクリスタルを奪わなきゃいけないのに! 
 動け!! 動け!! 動けッ!!!

 首にダガーが振り下ろされる、無念と後悔の念が頭を埋めた刹那、わたしの首を狙っていたダガーが宙を飛び、ベルクートの叫び声が耳を叩いた。

「があッ......!? なッッ!!?」

 目の前に転がってきたのは1個の瓦礫、腕を押さえているところからして投擲されたのだろう。

「ティナ!! 早く!!」

 聞き慣れた声はペアのもの、屋根上に上がったクロエが瓦礫を投げて掩護してくれたのだ。
 地面踏みつけ、痛みに悶えるベルクートへ距離を詰めた。

 魔導砲発射まで――――――――残り5分。

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