魔法王国軍の日常 〜上級冒険者に追放された少女は、レベル0から本気で生き抜いてやると決意したようです〜

たにどおり

文字の大きさ
27 / 47

開放戦

しおりを挟む
 
「届けえぇぇぇ――――――――ッ!!!!」

 手を伸ばし、ベルクートの左手に収められたルナクリスタルの奪還を試みる。
 殴られたお腹が痛い、決してダメージは小さくない体の発する警告を強行突破し、わたしは肉薄した。

「離れ――――ろぉッ!!!」

 放たれた蹴りはわたしを数メートルふっ飛ばし、階段で横たわるミーシャの傍まで転がった。

「ティナッ!!」

 屋根上で掩護していたクロエが飛び降り、わたしに駆け寄る。
 でも、わたしは痛みより別の感情がこみ上げたことにより思わず笑みを浮かべてしまった。

 ベルクートの油断、クロエの掩護という要因が重なったからこその成果。
 自らの手中に"あったはず"の物の消滅に気がついたベルクートへ、起き上がったわたしは疑問に答えるように右手の物を見せた。

「......残念だったわねベルクート、ルナクリスタルはここよ!」

 手の中で光るのは、エーテルスフィアをコントロールするための魔力結晶であるルナクリスタル。
 これで制御は完全に奪った。

「ふん! 取られたならまた取り返せばいい、魔力の尽きたお前の最後っ屁はここまでだ。王都の人間より一足先に逝けッ!!」

 確かに魔力はもう無い。けれどベルクートは一つだけ間違いを言っている。
 わたしの最後っ屁はまだやっていない!

「はむっ!!」

 月の魔力を溜め込んでいるというルナクリスタル。
 その強大なアイテムを、わたしはベルクートの眼前で口の中へ放り込み――――噛み砕いた。

「なッ!?」

 初めてあいつの驚いた顔が見れた気がする。
 一か八かの賭け、それは魔力結晶をまるごと食べてしまうというものだ。
 しかし味こそしなかったものの、直後に異変は訪れた。

「あッ......!! がはっ!?」

 全身がマグマをかぶせられたように熱い、汗が吹き出し、矛盾するように強烈な寒気が襲ってくる。
 予想外の苦痛に膝を着いた。

「魔力の補充でルナクリスタルを食うなど自殺もいいところだな、貴様の器程度では収め切れまい!」

 ヤバいッ......、息ができない。
 魔力が体中を走り回ってる、このままじゃ――――――――

「ティナ!」
「えッ? ......むぐっ!?」

 いつの間にか背中に手を回していたクロエが、いきなり口づけをしてきたのだ。
 突然の行動に思考がこんがらがるが、その行動には意味があったらしい。

「ん......ぐっ......」

 クロエの口からわたしの肺へ直に空気が送り込まれ、窒息の苦しみが和らぐ。
 彼女は人工呼吸を何度も繰り返し、わたしの呼吸は段々と安定していった。

「ぷはっ......、大丈夫ティナ!?」
「......」

 心配そうに見つめてくるクロエ。
 ホント考えてよ......、なんでそんな抵抗無いのよ。
 でも――――

「なにを訳のわからんことをッ!!」

 ダガーを拾ったベルクートが、矢のような速度で突っ込んでくる。
 クロエの剣を借り取ったわたしは、片手で彼のダガーを受け止めた。

「なっ!!?」
「ありがとうクロエ、おかげで助かった」

『レイドスパーク』を得た時よりも、さらに激しい魔力が全身を巡っている。
 やがてそれはわたしを体の包み、月の魔力を纏うに至った――――

「そんなッ......、ありえない!! なぜ一兵卒の......最弱冒険者が使えるんだ!?」

 数歩下がったベルクートが、化物でも見たかのような表情をする。
 月の魔力を食べたわたしには、あたかもドラゴンのような角が2本生え、全身に雷を纏っていた。

「ミーシャ、これ借りるね?」
「......ええ!」

 ミーシャの大柄な剣を持ち上げ、わたしは両手に剣を握った。
 賭けは成功したようで、溢れんばかりの電撃魔法を武器に走らせる。

「終わりよ、リーダー」

 二刀の剣を構え、ルナクリスタルの魔力を余すことなく行き渡らせた。

 ――――滅軍スキル『血界魔装・ドラゴニア』!!

 雷じみた速度で距離を詰め、一心不乱の大連撃を叩きつけた。

「はああああああぁぁぁぁぁッ――――――――!!!!」

 上位剣士職の堅固なガードを崩すべく、一切の妥協なき剣舞を浴びせる。
 もっとだ!! もっと速くッ! 1年の訓練と想い、この武器を持つクロエとミーシャの分まで全部をぶつけるんだ!!

 猛烈な乱打の応酬。
 待避したベルクートは、天へ伸びる古代兵器エーテルスフィアの上に立つと、直接魔力を流し込み始めた。

「遠隔操作できないなら、手動で行うまでだ!! 王都もろとも消し飛べッ!!!!」
「そんなこと、絶対にさせないッ!!!」

 上空高くへ飛び上がったわたしは、2本の剣にありったけの魔力を込める。
 だけど間に合わない! 

「照準を王都に固定! 超高出力魔導砲《エーテルスフィア》発射用意完了!! これでチェックメイ――――」
「――――『フレイム・ストラトスアロー』!!!」

 市街から空を裂く一撃が放たれ、猛炎の矢がベルクートを貫いたのだ。

「ぐぼあッ......!?」

 炎属性魔法、ミーシャの遠距離攻撃が彼の最後のチャンス穿つ。
 そして、わたしも急降下の勢いそのままにエーテルスフィアへてっぺんから雷が如き攻撃を叩き落とした。

「――――『滅軍戦技・サンダーノヴァ』!!!」

 雷撃がエーテルスフィアをかち割り、閃光がアクエリアスを照らす。
 大きく傾いたエーテルスフィアは、その傾斜をドンドンと強め、海の方にまで巨体を横たわらせた。
 周辺の海が荒れ、寸前で待避した海軍の艦隊も波に揺られる。

 着地したわたしは気絶するベルクートの傍に倒れ込むと、大の字で真上を見上げた。

 戦闘の音は消え去っており、海風の吹き抜ける音だけが蒼天の下にそよいでいた。
 最後に残った力で、魔導通信機の送信ボタンを押す。

「こちらドラケン01、敵の大量破壊兵器の撃破に成功! 繰り返す、我ら、敵魔導砲を無力化せり! 送れ」
 《よくやってくれたドラケン隊、先程コロシアムの友軍と民間人も救出が完了した。すぐに医療班を送る》
「了解、感謝します、終わり」

 戦闘が終わり、街には風の音だけが響いている。
 テロリストの撃滅と街の開放、医療班が来るという安心からか急に眠気が襲ってきた......。

「ちょっと......、休もうかな」

 蒼空へ吸い込まれるように、わたしはゆっくりと目を閉じた。
 今日やっと――――レベル0から本気で見返したんだ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

​『追放された底辺付与術師、実は【全自動化】のチートスキル持ちでした〜ブラックギルドを追い出されたので、辺境で商会を立ち上げたら勝手に世界規

NagiKurou
ファンタジー
​「お前のような、一日中デスクに座って何もしない無能はクビだ!」 国内最大のギルド『栄光の剣』で、底辺の付与術師として働いていたアルスは、ある日突然、強欲なギルドマスターから追放を言い渡される。 しかし、彼らは知らなかった。ギルドの武器の自動修復、物流の最適化、資金管理に至るまで、すべてアルスの固有スキル【全自動化(ワークフロー構築)】によって完璧にシステム化され、回っていたことを。 「俺がいなくなったら、あの自動化システム、全部止まるけど……まあいいか」 管理権限を解除し、辺境へと旅立ったアルス。彼は自身のスキルを使って、圧倒的な耐久力を誇る銀色の四輪型重装ゴーレムを作り出し、気ままな行商を始める。 一度構築すれば無限に富を生み出す「全自動」のチートスキルで、アルスの商会は瞬く間に世界規模へとスケールしていく! 一方、すべてを失ったギルドは、生産ラインが崩壊し、絶望のどん底へと突き落とされていくのだった……。

スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ
ファンタジー
「役立たず」の烙印を押され、パーティを追放されたアルフォンス。彼のスキルは戦闘に不向きな【土いじり】。失意の彼は都会を離れ、辺境の地で静かに農業を営むことを決意する。 しかし、彼が畑を耕すと、そこから不思議なダンジョンが生えてきた! ダンジョン内では、高級ポーションになる薬草や伝説の金属『オリハルコン』が野菜のように収穫できる。地味だと思われた【土いじり】は、実はこの『農園ダンジョン』を育てる唯一無二のチートスキルだったのだ。 噂を聞きつけ集まる仲間たち。エルフの美少女、ドワーフの天才鍛冶師……。気づけば彼の農園は豊かな村へ、そして難攻不落の要塞国家へと発展していく。 一方、彼を追放したパーティは没落の一途を辿り……。 これは、追放された男が最強の生産職として仲間と共に理想郷を築き上げる、農業スローライフ&建国ファンタジー!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...