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猫の手も借りたい
しおりを挟む《旗艦レッド・フォートレスより展開中の各部隊へ、15:10時をもって掃討戦へ移行せり、上陸した第3歩兵師団は空挺・遊撃大隊と協力して救護活動へ当たられよ》
いたるところから煙の立ち昇るアクエリアス市街、日光の下で通信が鳴り響く。
ほぼ全ての敵を制圧した王国軍は、ボードゲームで言う最後の詰めへと移っていた。
「これで最後かえ? まったくテロリスト共が手を焼かしおってからに」
初夏には似つかわしくない軍服を纏った女性騎士、アルマ・フォルティシア中佐が広場中に倒れる数多の敵を一瞥した。
「コロシアムの敵も、空挺第4中隊が制圧したらしい......連中もここまでだな。お前の部下もそれなりに使えるじゃないか」
空挺隊長は水筒を口に含むと、海へと倒れ込んだエーテルスフィアを見た。
何隻かの駆逐艦が、接近して無力化できたかを確かめている。
「当たり前じゃアホ、最初から言ったであろう? あの年齢でもれっきとしたレンジャー騎士であるとの」
「ああ、正直ガキだと甘く見てたよ......。まさか敵の親玉と古代兵器をぶっ倒しちまうとは」
そう感嘆する彼も、王国が誇るレンジャー資格保有者である。
苦労を知っている彼だからこそ、ティナの強さと信念、何よりも成し得た結果に驚きを覚えるのだ。
「"どんな状況においても任務を遂行、強靭な心身であらゆる敵を撃滅せん"。レンジャー騎士の理念みてえなもんだが、あんな可憐な少女とはまるで正反対だな」
改めて人間とは、資格保有者に限っても千差万別だと思い知らされる。
「堅物で強面のおぬしが言うとちっとも似合わんのー、もちっと愛嬌とかは出んのかえ?」
「愛嬌なんて出るかっつーの、てめえみてえな13歳の部下を可愛がるババアが1人いりゃ十分だろ?」
「20代のおねえさんに向かっていい度胸しておる、士官学校で着けてなかったサシでの勝負を、今ここでしても良いんじゃぞ?」
血管を浮かべながら剣のグリップを握るフォルティシアに、「スマンスマン」と後ずさる空挺隊長。
「しかし、連中の目的は結局王都の壊滅だったか......。街の下にあんなものが眠っていたことといい、明日から騒ぎだな」
「これから先が思いやられるわい......、王国の安全保障は魔王軍襲来から30年で最悪じゃ。それこそ"猫の手も借りねば"やってけん」
おもむろにフォルティシアが通信を繋げた先は、負傷者を治療するために設営された野戦病院だ。
「こちらドラケン00、そっちの医療キャンプに搬送されたらしいキャットピープルに会いたいんじゃが容態は? ――――――――了解した、本人にも面会の趣旨を伝えておいてほしいでの」
通信を切ったフォルティシアは、半長靴のきびすを返して歩き出す。
「行くのか?」
「まあの、ちょいと気になる人材を見つけたんじゃ」
「金髪、黒髪八重歯っ娘の次はケモミミか......。物好きめ」
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