拝啓ピアニスト

端喰 もず

文字の大きさ
2 / 2

策に溺れる

しおりを挟む

 思えば昔から、グループ単位で動くような事が嫌いだった。

教室に居る時だって、固定のグループというものには入っていなかった。

友達がいなかったわけじゃない。

特段大人数が嫌いな訳でもない。

数人は話す人がいる だが グループにはならない
そのような塩梅の中で過ごしていた。



そんな中途半端な孤独を好む私だが、

恋というものをしてみたいと思った。

小学校、中学校と、恋といった恋をしたことがなかった。
今迄私は、太陽のような人間がいるからには相反して存在する、所謂陰と為る側の人間だった。
恋をすることなど、おこがましく、身分を考えろ。
といった考え方をしていた自尊心の低い卑屈な人だった。

高校に入ったら、それなりに恋をしてみたい。中学校の間、私はそう考えていた。

しかしそれはあっさりと打ち砕かれることになる。






 大村 環那は中学の間、吹奏楽部に入っていた。

所謂強豪という高川中学校出身で、
中学二年の春頃から、彼女は赤みの強い銅が多く含まれている、柔らかい色のホルンを自分の楽器として購入し使っていた。

周りの先輩たちは、普通の黄色い楽器を選ばない彼女を
下手の横好きのくせして、違う色の楽器を使うなんて目立ちがりやなんじゃないのか。と陰で話していた。

言われるとおり、一年生の時の彼女は金管の中でワーストに入るほど楽器が下手だった。

一年生の時、アンサンブルで金管8重奏を組んだ時、下手を理由に仲間と認められず、陰惨な出来事にあった。

それから彼女はアンサンブルというグループに拒絶反応を示すようになった。

縛られず自由に生きたい。
人には向き不向きがあると悟った私は
ソロコンテストという存在を知り、
そこから春と冬のコンテスト夫々合計3度程のソロコンテストに躍起になって取り組んでいた。
練習が幸を成して、
春のコンテストでは2度 独奏で県のコンクールで金賞を受賞。
又執念からか、冬のコンテストでは支部大会にまで進むことができた。

しかし相も変わらず一年生のアンサンブルの頃から私に対する偏見の目は無くならなかった。


高校では息もしづらいこんな所から抜け出したい。と願っていた。

しかし楽器を買ったが最後。
彼女は進学先でも吹奏楽を続けねばならないことに気づいた時、深い後悔に苛まれた。

最後の手段で、彼女は同級生が決して入らないだろう。
という隣町の無名の高校に入って平凡に3年間を過ごそう。と考えていた。

しかし彼女は気づけなかった。
強豪出身の人間が入った時点で、諸々を任し倒され平凡になど程遠い部活生活しかないことに。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

ぱんだ
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

復讐は静かにしましょう

luna - ルーナ -
恋愛
王太子ロベルトは私に仰った。 王妃に必要なのは、健康な肉体と家柄だけだと。 王妃教育は必要以上に要らないと。では、実体験をして差し上げましょうか。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

処理中です...