闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

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見つめ合い気づくもの

祐羽は九条の顔を真正面からしっかりと見つめ返した。

これまでも見てきたが、こんなに近い距離でお互いを見つめ合ったのは初めての事だった。

とんでもない事態で心に余裕の無かった自分が九条をじっくりと見る機会は無かった。
それが今は不思議と恐怖心も無く、涙を流していた悲嘆も無い。
落ち着いた何処か他人事の様な心持ちで、九条を見るという余裕があった。

整った顔だが、いつも無表情か厳しく怖い顔を見せていた九条が今は違う。

無表情に見える彼だが、目の色が違っていた。

こんなにも近くで見つめ合い、頭に掌が乗せられていないと気づかなかったかもしれない。

目の中に湛えられた光が優しく、彼が醸し出す雰囲気も殺伐としていないし柔らかく感じる。

こんなにも優しい顔もするんだ…。

祐羽は微動だにせず、そのまま九条を見つめ続けた。

九条も何も言わずに、乗せた掌で少し撫でながら祐羽を見つめた。

ふたりだけの部屋。

相手は何をするか分からない相手。
それもヤクザだ。

それなのに、段々と心が落ち着いてきて平気になってくるのは何故だろうか。
そして、次第に頭を撫でられる心地よさを感じてしまう。

惑わされては駄目なのに。

「…帰らせてやるから」

「!」

自分の心の迷いが見抜かれたのだろうか。
タイミングよく声を掛けられて驚く。

「メシ食ったらな」

そう言って頭から掌が下ろされた。

椅子に体を預け直した九条は、いつまでも自分を見つめる祐羽に、ギロッと視線を向けた。

「っ!」

思わず怒らせたかと思ったが、どうやら違うようだ。

さっきの優しい目とは違い少し鋭い。
けれど、怖くない。

祐羽は九条の口数の少なさから戸惑うが、この目の色を見ていれば分かるんだ、と発見した。
それと同時に、九条の「帰らせてやる」という言葉を信じられる様な気がした。

九条さん。きっと、嘘はつかないと思う。

人間とは現金なもので、身の危険が回避されて自宅に帰らせて貰えると分かった途端に一気に安心感を得てしまう。

 実際に解放されてはいないのだが、ここで祐羽の元来持つ呑気な性質が大いに発揮された。

お腹が空腹を訴えてグーッと音を立ててしまう。

「あっ!」

九条は何も言わず、恥ずかしさに慌てる祐羽を黙って見ていた。
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