闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

文字の大きさ
98 / 1,010

信じたい

ちょっと安心したせいだろうか。
祐羽は、あまりの美味しさから三つ目のパンを頬張っていた。

デザートにもなるカスタードに苺の載ったパンは、甘さも程よく、最高に美味しかった。
苺は大好きなので、遠慮なく頂く。
クリームを口の端につけて、それをペロリと舌で舐めとりながら視線を横へと投げた。

この緊張感の原因である九条はというと、コーヒーを飲み終わると何処かへ消えてしまった。

「ふぅっ」

姿が見えなくなり、一体何処へ?と疑問に思いつつも緊張感で固くなっていた体から力を抜く。

こういう単純なところをよく皆から呆れられているが、それが却って好かれる一因でもあった。

「ぁ…っ」

すると見計らったかの様に、九条が戻ってきた。
片手にタブレットを持って現れ、ソファに座り膝の上で何やら始めていた。

再び祐羽は背筋を伸ばしたが、九条はこちらを一切気にしていない様なので、次第に力を抜いて再びパンを咀嚼した。

そうだった。
正直、呑気に朝食を頂いている場合じゃない。
無断外泊して未だに連絡を入れていないのだから、両親はもの凄く心配しているに違いない。
これだから自分は天然だお気楽だと言われてしまうのだろう。

よし。
まずは九条さんに連絡入れさせて下さいって言って、それから直ぐにでも帰らせて貰おう。

自分の荷物は店に置きっぱなしで、着る服も無いとなると、頼れるのは九条だけだった。

パンなんて呑気に食べてはいても、正直ちょっとだけ緊張はあった。
先程のやり取りを通じて、九条の事を信じてはいる。
けれど、相手は昨日今日会った人間で、実際に性的な暴力を受けたのだ。
いつ九条の気分が変わって暴挙に及ぶか、無理難題押しつけてくるかとお気楽なりにも実は少し怯えている。
今の九条は無表情で愛想の欠片もない男だが、特別祐羽が嫌がる事はしてこない。
逆に気遣ってくれて、歩けないと抱えてくれるし、こうして朝食まで提供してくれている。


そして、思ったよりも本当に優しい。


信じている。
信じたい。

それでも、どうして自分を抱いたのか。
どうして自分を家に連れ帰ってきたのか。

それを一切聞いていないのだ。

そして家にかえるまで、彼の言葉が本当だったと証明されない事には信じきれない。

九条という男は何を考えているのだろうか。

ぐるぐると複雑な思いが脳を刺激する中、最後のひとくちを口へと入れた。
感想 162

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。

めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。 その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。 ⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる ⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない ※全四話、予約投稿済み。 Rは書こうか悩み中です。本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

人気俳優に拾われてペットにされた件

米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。 そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。 「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。 「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。 これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。