闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

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再訪

 逆らうなと言われても既に逆らえていない人間に、今更言うような事ではないのでは…と思いつつ言えるはずもなく。
 黙って祐羽は窓の外を見つめた。

 既に知っている家並みは姿を消して、車は大きな通りに出ていた。
 先程よりスピードを上げた車は、そのまま追い越し車線を走って行く。
 景色がどんどんと移り変わり、店舗が少なくなりオフィス街になった。

 ここはもう知らない街だ。

 祐羽が車窓から外を眺めている間に、隣では中瀬がスマホで何かしていたが、そんな事はどうでもいい。
 これから一体どうなるのかという不安が渦巻く。
 大丈夫とは言われてもどこまでをもってして大丈夫と言ったのか検討もつかないからだ。

 第一に、何の変哲も取り柄もない自分に今更何の様があるというのか…。

 それからも車は走り続けた。
 駅前の大通りも過ぎた時に駅名が見えた。
 そこで、ここは駅でいうと自分の家から五つ目だということに気づく。

「あの…これから何処に行くんですか?」

 ここに来て漸く祐羽は慌て始めた。
 車に有無を言わさず乗せられたもののまさか、こんな遠くまで連れて来られるとは思ってもみなかったからだ。

「心配しなくて大丈夫~。知ってる場所だから」

「知ってる場所…?」

 そう言われてもこんな場所に知ってる場所なんてない。

 祐羽はあまりあちこち出掛けるタイプではない。
 出掛けても自分の地元や隣の市位で、それも家族や友だちと一緒に出掛けている為、土地勘は正直あまり無い。
 そういうわけで、ここの街の名前は知ってはいても細かい所までの把握は出来ていないのだった。

「琥珀地区~って知ってる?」

「…知ってますけど…」

 琥珀街は通称セレブタウン。
 街全体がお金を持っている富裕層の家で成り立っている場所だ。
 昔、大名屋敷ばかりがあった場所で、今は名前が琥珀地区と変わっているが、その名残りで今でも本当の権力と金を持っていないと住めないというのをテレビでやっていた。

 似たようなセレブが住むと噂されている街が他にもあるが、そこでは昔から住んでる一般人や少しお金を儲けた人や医者、弁護士ならある程度住める。
 そことは次元が違うらしい。
 
 医者や政治家でもトップで歴代の大臣や総理を生む家系や大手企業のトップ、財閥、元華族や元皇族等の本当のセレブしか住んでいない。
 まさに真のセレブしか住めない街。

「ここはその琥珀地区」

「えっ…!!?」

 見覚えのある豪華なマンションに、祐羽は驚きに両手を握り締めた。

「さぁ、着いたぞ」

 車が辿り着いた場所は、半月ほど前に来たことのある場所だった。
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