175 / 1,010
思い描いていたモノ
頭を上げた祐羽は、鞄のところまで行くと九条を振り返った。
もう一度挨拶をして帰ろうと思ったのだが、音もなく直ぐ側に九条が来ていて、心底驚いた。
「く、九条さん…。ビックリした…」
「…」
「…な、何ですか?」
「…」
無表情で祐羽を見下ろしていたかと思うと、スマホを取り出して何処かへとかけ始めた。
九条の視線が逸れたことにホッとした祐羽は、電話が終わったら挨拶をして家に帰ろうと、そのままの状態で待った。
さすがにこの隙に勝手に帰る勇気はない。
ふと顔を向けた先は開放感のある大きな窓。
あの日初めて連れて来られた夜の夜景を見た事を思い出して、祐羽の心臓が複雑に鳴り始めた。
あの夜は訳のわからないうちに体を無理矢理繋げられてしまった。
あまりの衝撃に、なかなか立ち直れなかった。
そんな嫌な思い出しかないこの場所へもう二度と訪れる事は無いと思っていた。
なのに、こうしてやって来て、一緒にテレビを観てご飯を食べて。
隣には何を考えて自分を呼んだのか分からない男がいる。
今日は比較的優しかったものの本質ではヤクザそのものだ。
その恐ろしい男は、ただの面白味もない高校生の自分と何故か会おうと言ってきた。
どうしてかと問いたい気持ちもあるけれど、きっと気紛れに違いない。
理由なんて深くはないだろう。
そしてこんな事は直ぐに飽きるに決まっている。
九条は忙しい男だし、こんなにも見映えがいいのだ。
引く手数多、誰もが放っておかないだろうから綺麗な女性が喜んで側へやって来るはずだ。
それを考えると自分は偶然出会って物珍しいというだけの人間に違いない。
「…なんで僕だったんだろ」
祐羽はポソリと溢した。
そんな理由で体を奪われたのかと思うと、また感情が昂って涙が出そうになる。
それをぐっと堪える。
こんな所で泣くなんて出来ない。
初めての相手は好きになった女の子で、告白してデートをして、それからプロポーズをして。
本当に大好きになり結婚した相手と初めての夜だと、祐羽は思い描いていた。
奥手の祐羽だが、具体的には分かっていなくともさすがにエッチな事をして子どもが出来る事くらいは知っていた。
それがまさか、大人の男相手に自分が女の子みたいに受け入れる立場になるとは…。
改めて事実を受け止めた祐羽は、気持ちが落ちていくのを感じた。
もう一度挨拶をして帰ろうと思ったのだが、音もなく直ぐ側に九条が来ていて、心底驚いた。
「く、九条さん…。ビックリした…」
「…」
「…な、何ですか?」
「…」
無表情で祐羽を見下ろしていたかと思うと、スマホを取り出して何処かへとかけ始めた。
九条の視線が逸れたことにホッとした祐羽は、電話が終わったら挨拶をして家に帰ろうと、そのままの状態で待った。
さすがにこの隙に勝手に帰る勇気はない。
ふと顔を向けた先は開放感のある大きな窓。
あの日初めて連れて来られた夜の夜景を見た事を思い出して、祐羽の心臓が複雑に鳴り始めた。
あの夜は訳のわからないうちに体を無理矢理繋げられてしまった。
あまりの衝撃に、なかなか立ち直れなかった。
そんな嫌な思い出しかないこの場所へもう二度と訪れる事は無いと思っていた。
なのに、こうしてやって来て、一緒にテレビを観てご飯を食べて。
隣には何を考えて自分を呼んだのか分からない男がいる。
今日は比較的優しかったものの本質ではヤクザそのものだ。
その恐ろしい男は、ただの面白味もない高校生の自分と何故か会おうと言ってきた。
どうしてかと問いたい気持ちもあるけれど、きっと気紛れに違いない。
理由なんて深くはないだろう。
そしてこんな事は直ぐに飽きるに決まっている。
九条は忙しい男だし、こんなにも見映えがいいのだ。
引く手数多、誰もが放っておかないだろうから綺麗な女性が喜んで側へやって来るはずだ。
それを考えると自分は偶然出会って物珍しいというだけの人間に違いない。
「…なんで僕だったんだろ」
祐羽はポソリと溢した。
そんな理由で体を奪われたのかと思うと、また感情が昂って涙が出そうになる。
それをぐっと堪える。
こんな所で泣くなんて出来ない。
初めての相手は好きになった女の子で、告白してデートをして、それからプロポーズをして。
本当に大好きになり結婚した相手と初めての夜だと、祐羽は思い描いていた。
奥手の祐羽だが、具体的には分かっていなくともさすがにエッチな事をして子どもが出来る事くらいは知っていた。
それがまさか、大人の男相手に自分が女の子みたいに受け入れる立場になるとは…。
改めて事実を受け止めた祐羽は、気持ちが落ちていくのを感じた。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。
めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。
その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。
⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる
⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない
※全四話、予約投稿済み。
Rは書こうか悩み中です。本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。
人気俳優に拾われてペットにされた件
米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。
そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。
「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。
「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。
これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…