闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

文字の大きさ
177 / 1,010

視線を感じながら

 祐羽はそれに気づいて顔を上げ視線を交わす。
 黙ったままの九条は祐羽が玄関まで来たのを確認すると、玄関の鍵を開けた。
 すると、開いたドアの向こうに昼過ぎに別れた中瀬が姿勢を正して立っていた。
 その表情には緊張が浮かんで見える。

「ご苦労だったな中瀬」

「いえ、そんなことはありません!」

 九条の労いのことばに中瀬は慌てて首を振ると、どこか嬉しそうに表情を明るくした。

 靴を履いて立ち上がった祐羽はその様子を中瀬は九条の事を尊敬しているんだなぁと、感心して見ていた。
 すると再び九条がこちらを向いて、視線だけで側まで来るよう促してくる。

 九条の凄いところは、こういうところだ。
 支配者然としたオーラがある。
 自分の意思に他人が従うのは当然だと思っているに違いない。
 生まれながらかどうかは分からないが、有無を言わせない力強さがあり、人を従わせる事に長けていた。
 言わんとする事が分かるほど、目で伝えてくる。
 こんな人間に今まで出会った事のない祐羽だが、確実に分かるのは自分が支配される立場の人間という事だ。

 この絶対的支配者に逆らう心の強さを今は持っていない。
 祐羽は玄関口まで大人しくトコトコ歩いて近づいた。
 
沈黙の中、目の前に立つ中瀬と顔を合わせた。

「家までお送りします」

「お、お願いしますっ」

  その言葉に早く帰りたくて、そそくさと一歩を踏み出す。
 中瀬と一緒の方が、よほど心に優しい。

「おい」

 ちょっとホッと息を吐くと、それを見透かしたかの様に声を掛けられる。
 あからさまにビクッと肩を揺らして振り返ると、玄関ドアに軽く寄り掛かる九条の鋭い視線に捕らわれた。

「失礼します」

 中瀬が丁寧に頭を下げる。 
 それには関知せず、九条の視線は自分に注がれたままだ。

「またな」

 または無い。
 帰ったら親にこの事を相談して、解決させる。
 だから、今度こそ本当にサヨナラだ。

 いつもと違う緊張に頬が強張る。

 祐羽は頭を軽く下げると、挨拶を終えた中瀬に着いて歩き出した。

 背中に視線を感じながら…。
感想 162

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。

めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。 その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。 ⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる ⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない ※全四話、予約投稿済み。 Rは書こうか悩み中です。本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

人気俳優に拾われてペットにされた件

米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。 そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。 「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。 「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。 これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。