闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

文字の大きさ
上 下
215 / 1,008

不意打ち

しおりを挟む
祐羽が近づいて来ると眞山が後部ドアを開けてくれる。

「あ、すみません。…ありがとうございます」

 こんな一般人のそれも高校生相手に、眞山も不本意ではないだろうか、と思うと申し訳なさが込み上げる。
 祐羽がペコリと頭を下げると、眞山は特に気にした様子もなく「いえ」と返した。

 車に乗ったらいよいよ九条の家へ行くんだと思うと気持ちが高揚していく。

 祐羽が後部座席へと乗り込もうと視線を中へと向けた。

「え…?」

 思わず間抜けな声が漏れた。

 そこには九条が座っていて、こちらをジッと見つめていた。

「……っ!!!?」

 驚きに声も出ないし、体も動かない。

 家に行ってそこで会うのでは無かったのか。
 不意打ちすぎる展開に、祐羽は息も出来ないくらいに驚愕していた。

 薄暗い車内に外灯の光が少し差し込んでいる。
 そのせいか九条の整った輪郭がくっきりと浮かび上がっていて、そこだけ現実的ではない。
 
 えっ、えっ?
まさか九条さんが来るなんて、これ幻覚じゃないよね?

「え…何で…」

 何で迎えの車に?とも訊けず、口を驚きにポカンとしてしまう。

「早く乗れ」

 そんな呆けた顔の祐羽から視線を外し、九条はその長い足を組み替えた。

 く、九条さんの声!!やっぱり良い声してる!!

「は、はいっ!……失礼します」

 九条に促されて慌てつつも、そろそろと乗り込む。
 祐羽が九条の隣に乗り込んだのを確認すると、ドアが閉められる。
 それから眞山が助手席に座ると、車は静かに発進した。

 あれだけ意気込んでいたにも関わらず、いざとなるとカチコチに固まってしまう。
 心の準備が出来きらないうちに顔を会わせる事になるなんて想定外すぎる。
 顔を見合せ声を聴いて、心臓が面白いほどに高鳴る。
 高鳴るを通り越して緊張で痛い。
 思わず縮こまるがなんとか目だけ動かすと、丁度バスケ部員達が遠巻きに車を見送るのが見えた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界迷宮のスナイパー《転生弓士》アルファ版

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:584

天国か地獄

BL / 連載中 24h.ポイント:340pt お気に入り:359

気付くのが遅すぎた

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:944pt お気に入り:5,496

俺を裏切り大切な人を奪った勇者達に復讐するため、俺は魔王の力を取り戻す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,390pt お気に入り:91

異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:6,797pt お気に入り:216

鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,002pt お気に入り:160

処理中です...