闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

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心が思ってる

 ここから今すぐにでも九条の元へ行きたい気持ちが頭の片隅にあった。
 けれど面白い程、縫いつけられた様に体は出口へ向かっては動いてくれない。
 
 第一に、自分と九条の関係はあやふやだ。
 それを解決する目的もあってこの場所に誘ったのだが、九条と一緒に並んで水槽を眺めるのは楽しい時間で…。
 なので、すっかり忘れていた。
 九条にとっての自分の存在が何なのか分からないという事を。
 だから例え動いて自分が今、九条の元へ行ったとしてもふたりに対して何も言える立場にはいないのだという事実。

 複雑な感情が祐羽の胸をぎゅっと苦しめた。

 九条との関係に名前は付けられない。
 けれど今確かなのは、女子高生にその場から離れて貰いたいという事。
 ただひとつだった。

  祐羽は何か会話を交わし始めたふたりを見てはいられなくて視線を落とした。
  
 女の子と居るのが本来正しいとは分かっている。
 学生服を着た男の自分と並んでいる方が不自然なのも。
 けれど、とにかく隣を彼女にだけは譲りたくないと心が強く思ってしまった。

 この感情がどこから来るのか何なのか、ハッキリと分からない。
 けれど確かなのは、今日ここで九条と一緒に歩いているのは自分だということだ。

 今日は僕と約束してるんだ。
 だから…。

 頭では思うのに動かない足。
 いつもいつもそうだ。
 肝心な時に気持ちが強く出られなくて、グダクダ悩んで結果は最悪。
 困ったら周りがいつも助けてくれて何とかなっていた。
 だから正直、本当に苦しかったりしんどい思いをした事はなかった。
 傷つく前に周りがガードしてくれていたので、学校の一部の女子からの視線も痛くはあったが直接自分に何か害が及ぶ事もなかった。
 
 そんな人生を歩んで来た自分が直接害悪に晒されたのは、スマホを落として裏社会に触れてたのが最初といってもいい。
 怖い思いもしたし、たくさん迷ったり悩んだし、傷つけられたけれど、思い返せば結局は九条が助けてくれていた。

 けれど今、自分の思いを何とか出来るのは自分しかいない。

 あの人が九条さんの隣に座ってるのは絶対に嫌だ。

 九条への気持ちはハッキリと分からない。
 けれど、この今の気持ちだけは確かだ。

「スーッ…はぁ…っ」

 祐羽は大きく深呼吸をした。
 それから痛む心臓もそのままに、ゆっくりと体の向きを変えた。
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