闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

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終わりの時間

幸いな事にシャッター音はBGMに掻き消され、撮れた画像も鈍臭い自分にしては上出来だ。
 水槽の中のクラゲを撮りながら、然り気無く納めた九条の姿。

…カッコいい…。

 画像に納めた九条を指先でなぞる。
 無機質な画面には体温は勿論感じない。
 けれど、さっきまで肩に置かれていた熱は今でも十分思い出せる程だ。

「…おい。写真はもういいのか?」

「ッ!!」

 そんな物思いに耽っている最中、九条に声を掛けられて一瞬心臓が飛び出しそうになる。
 隠すように慌ててスマホをし舞い込みながら顔を向けると、九条が口の端を少し持ち上げこちらを見ていた。

まさか気づかれてはない、よね…?

「どうした?時間が無くなるぞ」

 その様子にホッとすると同時に待たせてしまった申し訳なさから、祐羽は大慌てで九条へと駆け寄った。

「すみませんでしたっ、お待たせして」

 肩を縮こませて謝ると、九条は「待ってない。行くぞ」と促してくる。
 素直に頷いて後に続く祐羽は、何だかちょっとイケない秘密を抱えたかの様にドキドキしながら足を踏み出した。

 そして辿り着いた場所はトンネル水槽。

「うわぁ~!凄い…!!」

 思わず声をあげながらグルリと視線を巡らせた。
 何度声を上げたことか。
 素直に感情が溢れるのが長所と言われたことはあるが、本人はその認識はない。

 このトンネル水槽は水族館の目玉のひとつであり、今日見て回る最後のコーナーでもあった。
少しのトラブルはあったが、九条と過ごした水族館はとても楽しかった。

 それも、もう終わりなんだ。

 既にトンネル水槽は先に見終わったのだろうか、周囲には幸いにも客はひとりも居ない。
 お膳立てされたかのように、話しをするには丁度良い。

 九条の隣に並んで魚が泳ぐのを見つめながら、祐羽は胸が苦しくなってくるのを感じていた。
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