闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

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嘘の承諾

 しかしその寸前で飲み込む。
 九条の前で溜め息なんてついたら『店が気に入らないのか?』と勘違いされても困る。
 気に入らないどころか、こんな場所に連れて来て貰えて有り難い気持ちしかない。 
 自分では一生来ることはないだろうからだ。
 
あぁ…それにしても落ち着かないよ~。
お店もだけど九条さんがやっぱり違う気がする…。

 キャパオーバーな脳ミソを冷却しようと、ひたすらにシャチのぬいぐるみの背中を撫でているうちに大切な事を思い出した。

 あっ!そういえば連絡してなかった!!

「あっ、あのっ!」

「なんだ?」

「家に一応、連絡してもいいですか?」

 九条は中瀬の親戚で勉強を教えてくれる人という立ち位置だが、条件を飲んだとはいえ九条の仕事の関係で必ずしもお泊まりになるとは限らない。
 そして、実際にあれ以来ないのだから…。

 第一に九条に条件を飲むとは言ったものの、あれは仕方なく承諾をした結果だ。
 本気で毎週末のお泊まりを快諾したわけではない。
 縁を切ろうと決意したので、両親には毎週末泊まるという話はしていなかった。
 それならば、今日こうして食事をする事だけでも連絡を入れておかなければならないだろう。
 万が一に備えて『泊まる』という事も伝えておく。
 九条と話し合いが済んで、解放されれば会うことは無くなる。
 なので泊まるという連絡入れたところで、今日のお泊まりは無い。

 普通に今日のお泊まりは無くなったってお母さんに言おう。
 そして家庭教師の事も九条さんの仕事が忙しくなって出来なくなったって言えばいいだけだし。
 よし、それでいこう。

 頭の中で今後のプランを立てていた祐羽は、自分の脚本はこれで完璧だと口元に力を入れた。
 少しモヤッとするのは…。

九条さんに嘘をついたせいだ。
ごめんなさい…。

 でも、これしか方法は無いのだから。
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