闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

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「8月の3日から10日まで予定を空けておけ」

「えっ?…あのっ、何でですか?」

1週間も?
何かあるのだろうかと祐羽が訊ねると、九条が口に運ぼうとしていたコーヒーの入ったカップを止めた。

「広島行くぞ」

え?

「はっ?!えっ、ええええ~~~っ!!?ひ、広島ですか?!」

驚きのあまり、つい大きな声を出してしまった。
そんな祐羽とは反対に相変わらず冷静な顔をしてジッとこちらを見る九条に、祐羽はなんとか驚きの表情を引っ込めた。
とはいえ、内心はまだエコーが掛かった自分の声が響いてはいるが…。

急な提案に頭の中は混乱中だ。

今まで近場で少し出掛けて買い物や映画、ディナー程度は何回かあったが、今度は東京を離れて本当の旅行だ。

だけど何で広島に…?

九条さんは旅行好きでも野球好きでも無いしなぁ…まさか最近人気の瀬戸内海でのサイクリング目的で…?
絶対にないな。
でも、急にどうしたんだろう。

そんな疑問と共に、祐羽の頭に某テレビ番組がぽわわわわーんと思い出されていた。
毎週末に祐羽が好きで観ている番組で、その日は九条も早く帰宅していたので、祐羽と一緒にソファで観ていたのだ。
某歴史を辿るバラエティ旅番組に、人気の芸能人が広島の宮島へ行った回があったのだ。

もしかして、それで急に行きたくなったのかも?
きっとそうだ…!

探偵・祐羽はそう思って目をキラリと光らせ、それからドヤ顔で九条に聞いてみた。

「いや違う」

ズコーッと関西お笑い芸人みたいに転げはしなかったが、思わずズコッくらいは実際に頭が項垂れた。
そんな祐羽をスルーして九条が口を開いた。
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