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そんなこんなで、亮介を何とか説得に成功させた祐羽は大きめの鞄を準備して迎えを待っていた。
父親の説得に成功したと言い切れないが、あの名刺の効果は絶大であった。
まさか1番重要な取り引き相手に対して、たかだか旅行に目くじら立てて反対なんて出来ない。
これがきっかけで関係が崩れでもすれば、今進めている会社でのプロジェクトに影響が出かねない。
そんなわけで渋々認めてくれたと言った方が正しいだろう。
ピンポーンとインターホンが鳴り玄関を開けると、そこには中瀬が立っていた。
おまけに眞山も居り、祐羽は驚いた。
普段なら中瀬だけだが、今日に限っては眞山もとは…一体?
「おはようございます。私、九条の秘書をさせて頂いております眞山と申します」
眞山は慇懃無礼にならない程度の堅さで名刺を手にして挨拶をする。
祐羽も両親も同じ様に丁寧に挨拶を返した。
眞山の男らしい整った顔に頬も赤い香織は、声にならない声で『ひゃ~っ♪』と言っている。
「九条は別件がありまして、本日お伺いすることが出来ません。代わりに私がご挨拶に伺わせて頂くこと、大変申し訳ないと九条が申しておりました」
迫力ある男前な眞山のあまりの低姿勢に、逆に両親が「いえいえ、そんなことありません!こちらこそお世話になります」とヘコヘコ頭を下げる。
あの旅行反対、九条は不審人物だ!と叫んでいた父の威勢はどこへ…。
「では、こちらが滞在先のホテルになります。それと、行き先予定も書いてありますので」
そう言って両親に、眞山が1枚の紙を渡した。
どうやらそこに滞在先のホテルや祐羽が行きたいと言っていた観光地が書かれている様だ。
これなら両親も少しは安心するだろうという、眞山の提案だと後から知った。
「まぁまぁご丁寧にすみません。それに今回の旅行誘って頂いて本当にありがとうございます~。九条さんにも宜しくお伝えください~」
香織が笑顔で頭を下げる。
それもそうで、旅費の一切は九条持ちということを眞山に伝えられた。断ったが『既に購入済み』『纏めて出す方が都合がいい』と結局押しきられて甘えることにした。
一応、お土産代や目的地で必要になりそうな費用は財布と鞄の中だ。
僕がバイトして返せばいいんだもんね!
「じゃぁ、いってきます!!」
「いってらっしゃい、気をつけて!」
「ゆ、ゆ~はぁ~」
笑顔の母と情けない顔の父の見送りに祐羽は元気に手を振った。
これから初めて恋人と過ごす楽しい旅行が始まるのだ。
きっと素敵な思い出になると、祐羽はワクワクしながら九条の元へと向かうのであった。
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