闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

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    篁は子どもの頃から九条を可愛がってくれており、その気持ちは有り難いが会う度に結婚、結婚と言われるのには辟易してしまう。
    高校生の時には既に婿入り話が出ていたのだから、かれこれ20年近くなる。
    その頃から篁三姉妹の猛アプローチとの闘いは始まっていた。
    それは三姉妹が結婚してからも続いており、あの手この手で既成事実を作ろうとしてくるので、これが気軽に篁の家に気軽に顔を出せない理由のひとつでもあった。
    今の九条には心の底から愛しく思える恋人が居るのだから、結婚話に対して首を縦に振ることは一生無い。
    こんな話をしているせいか、ふと祐羽の顔が頭に浮かぶ。
    今頃また何か美味しい物でも食べているだろうかと祐羽の姿を想像すると自然と楽しくなり、らしくなく九条が唇を緩めた。
「何だ急に笑って?」
「いえ。笑っていませんが」
    篁に指摘されいつもの無表情に戻った九条はシラッと視線を外した。
「皆さま、お待たせして申し訳ありません。準備が整いましたのでどうぞ席にお着き下さい」
    そこへ組員が顔を出し新任式の案内が始まると「時間か。一臣、また後でな」と篁は話し掛けてきた顔見知りの組長と雑談を交わしながら歩いて行った。
    九条はそれを見送るとスマホをサイレントに切り替え胸ポケットへと仕舞う。
    そして控えていた眞山が最後に身だしなみの点検を終えて頭を下げると、会場へと向かって行った。




    車が停まった気配に祐羽は、ゆっくりと意識を浮上させた。
    目を開ければ隣に九条が寝ており、寝坊した自分の顔を優しい目で見つめてくれているのではないかと期待して。
    頭を撫でながら引き寄せてくれ、その逞しい腕の中でぬくぬくと惰眠を貪る。
    そんな幸せなベッドの上ならどんなに良かったことか、真っ暗な視界に再び絶望を感じた。
「九条、さ、…うっ…グスッ」
    九条を思い出して涙が流れ嗚咽を漏らしそうになるが、泣けばまた暴力が奮われることが分かっているので何とか耐える。
    泣くのを必死で我慢しているとドアが開き次に加藤達の乱暴な声がした。
「オラッ、降りろ!」
    無理矢理連れ出される中瀬と外崎が反抗的な声を上げるが、それも無駄な足掻きになる。
「おいっ、後ろにもガキがいるからよ」
    加藤の指示で外に居たらしい他の男が乗り込んで来た。
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