闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

文字の大きさ
688 / 1,010

6

「来い」
「痛っ…!」
    骨が折れそうな力で腕を持って引っ張り起こされ後ろ手に纏められた手首が痛くて堪らない。
「歩け」
    少し抵抗してその場に踏ん張ろうとするが無駄な抵抗に終わった。
    既にボロボロの祐羽は歩くというより半ば宙を浮くように引っ張られて、僅かに明かりの漏れる建物へと連れて行かれる。
    視界に入るのは建物と鬱蒼と繁る木々、それから周囲は真っ暗な無の世界。
    その空間は、まるで自分を飲み込む悪魔のように思え祐羽はゾクッと体を震わせた。
    普段使っていない様子の少し古い建物は家というよりは保養所か何かだろう作りだ。
    夏ということもあってか入り口付近の灯りにたくさんの虫が集まっていた。
「チッ、虫邪魔くせぇな」
    男が愚痴りながら玄関から祐羽を引摺りながら入って行く。
    廊下のすぐ先に広いリビングがあり、そこに強面の男達が数人居た。
    そこに中瀬と外崎の姿が見当たらず動揺してしまう。
    どこに居るのかと視線を巡らせると、先ほど車で暴力を振ってきた加藤も居る。
    その加藤の視線が自分に向けられてビクリと体を強張らせた祐羽は顔を床へと落とした。
    視線が合っただけでも加藤の機嫌を損ねそうだったからだ。
「おうっ、奥の部屋に入れとけ」
「うっす」
    指示を受けた男はそのままリビングを抜けて奥へと連れて行くと部屋の前で止まる。
    入り口には別の男がひとり立っていたが、祐羽を見るとドアを開けた。
「入っとけ」
「!!」
    放り投げるように部屋へと祐羽は押し込められて、バランスを崩しそのまま床へ強打する覚悟を決める。
「祐羽…!」
    倒れる寸前に中瀬の声が聞こえ同時に受け止められた。
「おいっ、大丈夫か!?」
「大丈夫ですか?!」
    中瀬と外崎が心配そうに顔を覗いてきて、祐羽は安堵の息を吐いた。
    それと同時にドアに鍵の掛けられる音がして、思わず全員でそちらへ視線をやった。
「良かった…。お前がなかなか来ないからマジでどうしたか心配してたんだぞ」
    中瀬が今にも泣きそうなクシャッとした顔を見せるので、祐羽も思わず貰い泣きしそうになりウルウルしてしまう。
    それを見て中瀬は気持ちを強く持たないといけないと思ったのか、手の甲でグイッと目元を拭ると「泣くな」と偉そうに祐羽の目元も拭う。
    そんな中瀬とエヘヘと笑い合って漸く涙がなんとか止まった。
感想 162

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。

めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。 その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。 ⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる ⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない ※全四話、予約投稿済み。 Rは書こうか悩み中です。本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

人気俳優に拾われてペットにされた件

米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。 そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。 「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。 「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。 これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。