闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

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  確かに楽しいだけではなく、とんでもない経験をした。
  下手をすれば、自分は今ここで九条の隣で呑気に笑ってなどいなかったかもしれない。
  決して忘れたわけではない。
  いくら単純な性格だと言われていても、流石にあの事件をサッパリ忘れられる程の楽天家ではない。
  こんなにも広島での話をするのも、中瀬や外崎との楽しい思い出で心を埋め尽くして少しでも早く忘れようと思ってのことだった。
  怖い思いで押し潰されたら、ここには居られない。
  そうなって九条と離れる結果に繋がることが本当に怖かった。
  そんな思いを抱きながら見つめ返した九条の表情は、いつになく読めなかった。
  ほんの数ヶ月とはいえ、付き合って色々な顔が見えてきたし、感情も分かる様になってきた。
  けれど今は、九条がどういう気持ちでそう言ったのかが分からない。
「忘れようと思ってたのに…。どうして…」

  何で?
  何で急にそんな事を言うの?

「…また今度もこんなことが起きない補償はない」
  九条が溜め息と共に、らしくなく視線を横に反らした。
  漸く楽しい思い出に包まれて、日常が戻って来た矢先に投げられた言葉とその様子に、嫌な予感を感じて、祐羽はポロポロと目から涙を溢した。
  胸の奥がグッと鷲掴まれた様な抉られた気分だ。
「だからっ、だから何なんですかっ?!」
  嗚咽を堪えて問い掛ける。
「お前を…、元の生活に戻してやる」
「!!!」

  それって…、

  その言葉に衝撃を受けた祐羽の目の前は一気に涙で視界が塞がれる。
  動揺に耐えきれなくなった祐羽は、与えられていた私室へと逃げ込んだ。
  それから数時間、悲しくて悲しくてベッドに潜り込んで泣き続けたのだった。
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