闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

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  そんな珍しい表情も、ホールに人を確認すると直ぐに元に戻った。
  朝の光が射し込む中を長身の九条が長い足で抜けて行けば、すれ違った住民が皆振り向いていく。
「お、おはようございます!」
  そんな目立つ九条の姿を見つけた警備員が、緊張した様子で背筋を伸ばし吃りながら挨拶をしてきた。
「すまないが、コイツを見かけなかったか?」
  それに頷いた九条はアルバムに入っていたスマホの画面を見せ祐羽の行方を訊くと、警備員の男は緊張に固まっていた表情を和ませた。
「あぁっ、この子なら挨拶をしました。その後はご機嫌で出て行かれましたよ」
  思い出しているのだろう、少し笑いながら「パンパンパン~がなんちゃらって、面白い歌を歌ってましたよ」
  面白い歌というのが分かるだけに、なんとも言えなくなった九条は礼を言うと早々にその場を離れた。
  こちらの心配をよそに、呑気に歌いながら出掛けた愛犬の行方を予測する。
  近所の馴染みのパン屋ならば、もう既に戻って来ているはずだが残している部下から連絡は無い。
  そして指示を出して捜索している他の部下からの連絡も無いという事で、そちら方面とは逆へと向かう事にする。
  半年しかつきあっていないが、恋人の行動が手にとるように分かる程に、今までの誰よりも心が通っていると九条は感じていた。
  つまり、それほどに祐羽の事を大切に思っているという証でもある。
  そうでなければ朝から探しに出掛けたりなどしない。
(暑いな…)
  少しずつ気温が上がり暑くなりつつある中を目星をつけた方向へ勘を頼りに無言で進む。
  普段は車での移動なので、新鮮な気持ちだ。
  暫く歩けば、髪を整えず下ろしたままの額にはうっすら汗が浮かんでくる。
  邪魔に思い髪をかき上げれば『九条さん、髪を下ろしてるのもカッコイイです』と言われた時のことを思い出した。
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