闇の覇王と無垢な花嫁

満姫プユ

文字の大きさ
18 / 1,010

男の顔

  高層ビルの一室。
  スーツに身を包んだその男は、一息ついてパソコンから目を離した。
  
  男の部屋は重厚なソファとテーブルがひとつあるだけで、他は自分の仕事用の机と椅子しかない。
  大きなはめ殺しの窓の外には、気持ち良さそうな青空が広がっていた。
  午後になり、あと数時間もすれば陽が傾いてくるだろう。
  
 ビルが立ち並ぶ大きな街の目抜通りから一本入った場所に、そのビルは建っていた。
  周囲は男の会社と同様に、どこも経営が上手く廻っており、一部上場を果たしている有名どころの会社ばかりだ。
  そんな大手企業からも一目置かれているのが、この男の会社だった。

コンコン

  控え目なノックの後に声が続く。

「眞山です」

「入れ」

  男の低くて魅惑的な声での返事を受けると、ドアが静かに開き男が入ってくる。

「社長。今夜の予定全て手配しております。また、先日の中川コーポレーションとの契約の方も滞りなく完了致しました」

  眞山と呼ばれた男は、きっちりとネクタイを締めており、エリートといった雰囲気が溢れ出ている。
決して細身ではない。
学生時代は運動部で活躍したこともあり、体格は九条にひけをとらない。
  実際に高校時代には183センチの身長からバレーボール部に所属していた。  
ただし、大学に入ってからは事情があってサークル活動等する暇も無かったが、代わりに理由があって空手を習いに道場へ通ったりもした。
メキメキと頭角を現した眞山は、直ぐに段を持ったし、その成長ぶりに師匠も舌を巻く程だった。
  
とにかく、体を鍛える事だけは怠らなかった。
  
 そんな眞山でさえ、目の前に居る男には敵わない。

大学を卒業してから、側につき35になる歳まで一度も勝てると思ったことは無かった。

「ご苦労だったな」

  男に労われて、眞山は「はっ」と短く返した。

  そんな眞山智之(まやま ともゆき)が秘書を務めている相手は、日本で数々の企業を抱えている会社の社長をしている男だ。
  最近では海外へも進出をしている、乗りに乗っている会社である。

  名前は、九条 一臣(くじょう かずおみ)、年齢は37。
  上場企業の『株式会社 KUJYO』代表取締役社長で、複数の会社を経営している。
  社名は、日本人ならほぼ知っているだろう。

  この会社は、九条が起業して若くして築き上げた物だ。
  敏腕振りだけでなく、魅力を全て兼ね備えたかの様な男っぷりも話題に上る。

  この株式会社は、九条の裏の顔をカモフラージュする為の物でもあった。

  日本で二分するヤクザ組織である『篁組(たかむらぐみ)』の一次下部組織にあたる『旭狼会(きょくろうかい)』がある。
  
 その会の会長が、九条であった。

  元々、一臣の祖父の代に組織が起き父親が体調を崩した事から若くして組を受け継いでいた。
  受け継いだのは、まだ33の時だった。

  周りは、若い息子に組を任せて大丈夫かという疑う声も多かった。
  しかし、その頃には起業して会社をある程度大きくしていた実力から、誰ひとりとして異を唱える事の出来る者は居なかった。
  ましてや九条と対面した相手は、その迫力に圧されてる者が大多数を占めていたからだ。
  若いが、実力と自信が男を益々大きく見せていた。

  そんな九条に篁組の組長・篁 善昭(たかむら よしあき)も絶大な期待を寄せていた。

  会長として『旭狼会』を率い、そしてそのフロント企業として『KUJYO』を纏め上げている手腕は、業界では郡を抜いて有名な話となっていた。

「…そういえば、どうなった」

  九条が突然そう言って、眞山へ視線を送る。

  眞山は九条の最近の出来事や表情などから、頭の中を素早く回転させる。

  それだけで、眞山には九条が何を言いたかったのかが分かった。

「あれから治療…といってもただの打ち身でしたので特別な事は…。それから今朝九時前に目覚めました」

  眞山が坦々と報告をするのを九条は黙って聞いている。

  どうやら眞山の推測は間違ってはいなかった。

  普段は気にも留めない赤の他人である昨夜の少年。
  珍しいことに、九条は昨夜の少年が気にかかっていた様だ。

「続けろ」

  九条は特に表情は変えないまま、話の先を促してきた。

「はい」

  眞山は頷くと続きを話す。
  彼は一を言えば十を理解する、九条の優秀な右腕だった。
感想 162

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。

めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。 その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。 ⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる ⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない ※全四話、予約投稿済み。 Rは書こうか悩み中です。本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

人気俳優に拾われてペットにされた件

米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。 そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。 「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。 「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。 これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。