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男の顔
高層ビルの一室。
スーツに身を包んだその男は、一息ついてパソコンから目を離した。
男の部屋は重厚なソファとテーブルがひとつあるだけで、他は自分の仕事用の机と椅子しかない。
大きなはめ殺しの窓の外には、気持ち良さそうな青空が広がっていた。
午後になり、あと数時間もすれば陽が傾いてくるだろう。
ビルが立ち並ぶ大きな街の目抜通りから一本入った場所に、そのビルは建っていた。
周囲は男の会社と同様に、どこも経営が上手く廻っており、一部上場を果たしている有名どころの会社ばかりだ。
そんな大手企業からも一目置かれているのが、この男の会社だった。
コンコン
控え目なノックの後に声が続く。
「眞山です」
「入れ」
男の低くて魅惑的な声での返事を受けると、ドアが静かに開き男が入ってくる。
「社長。今夜の予定全て手配しております。また、先日の中川コーポレーションとの契約の方も滞りなく完了致しました」
眞山と呼ばれた男は、きっちりとネクタイを締めており、エリートといった雰囲気が溢れ出ている。
決して細身ではない。
学生時代は運動部で活躍したこともあり、体格は九条にひけをとらない。
実際に高校時代には183センチの身長からバレーボール部に所属していた。
ただし、大学に入ってからは事情があってサークル活動等する暇も無かったが、代わりに理由があって空手を習いに道場へ通ったりもした。
メキメキと頭角を現した眞山は、直ぐに段を持ったし、その成長ぶりに師匠も舌を巻く程だった。
とにかく、体を鍛える事だけは怠らなかった。
そんな眞山でさえ、目の前に居る男には敵わない。
大学を卒業してから、側につき35になる歳まで一度も勝てると思ったことは無かった。
「ご苦労だったな」
男に労われて、眞山は「はっ」と短く返した。
そんな眞山智之(まやま ともゆき)が秘書を務めている相手は、日本で数々の企業を抱えている会社の社長をしている男だ。
最近では海外へも進出をしている、乗りに乗っている会社である。
名前は、九条 一臣(くじょう かずおみ)、年齢は37。
上場企業の『株式会社 KUJYO』代表取締役社長で、複数の会社を経営している。
社名は、日本人ならほぼ知っているだろう。
この会社は、九条が起業して若くして築き上げた物だ。
敏腕振りだけでなく、魅力を全て兼ね備えたかの様な男っぷりも話題に上る。
この株式会社は、九条の裏の顔をカモフラージュする為の物でもあった。
日本で二分するヤクザ組織である『篁組(たかむらぐみ)』の一次下部組織にあたる『旭狼会(きょくろうかい)』がある。
その会の会長が、九条であった。
元々、一臣の祖父の代に組織が起き父親が体調を崩した事から若くして組を受け継いでいた。
受け継いだのは、まだ33の時だった。
周りは、若い息子に組を任せて大丈夫かという疑う声も多かった。
しかし、その頃には起業して会社をある程度大きくしていた実力から、誰ひとりとして異を唱える事の出来る者は居なかった。
ましてや九条と対面した相手は、その迫力に圧されてる者が大多数を占めていたからだ。
若いが、実力と自信が男を益々大きく見せていた。
そんな九条に篁組の組長・篁 善昭(たかむら よしあき)も絶大な期待を寄せていた。
会長として『旭狼会』を率い、そしてそのフロント企業として『KUJYO』を纏め上げている手腕は、業界では郡を抜いて有名な話となっていた。
「…そういえば、どうなった」
九条が突然そう言って、眞山へ視線を送る。
眞山は九条の最近の出来事や表情などから、頭の中を素早く回転させる。
それだけで、眞山には九条が何を言いたかったのかが分かった。
「あれから治療…といってもただの打ち身でしたので特別な事は…。それから今朝九時前に目覚めました」
眞山が坦々と報告をするのを九条は黙って聞いている。
どうやら眞山の推測は間違ってはいなかった。
普段は気にも留めない赤の他人である昨夜の少年。
珍しいことに、九条は昨夜の少年が気にかかっていた様だ。
「続けろ」
九条は特に表情は変えないまま、話の先を促してきた。
「はい」
眞山は頷くと続きを話す。
彼は一を言えば十を理解する、九条の優秀な右腕だった。
スーツに身を包んだその男は、一息ついてパソコンから目を離した。
男の部屋は重厚なソファとテーブルがひとつあるだけで、他は自分の仕事用の机と椅子しかない。
大きなはめ殺しの窓の外には、気持ち良さそうな青空が広がっていた。
午後になり、あと数時間もすれば陽が傾いてくるだろう。
ビルが立ち並ぶ大きな街の目抜通りから一本入った場所に、そのビルは建っていた。
周囲は男の会社と同様に、どこも経営が上手く廻っており、一部上場を果たしている有名どころの会社ばかりだ。
そんな大手企業からも一目置かれているのが、この男の会社だった。
コンコン
控え目なノックの後に声が続く。
「眞山です」
「入れ」
男の低くて魅惑的な声での返事を受けると、ドアが静かに開き男が入ってくる。
「社長。今夜の予定全て手配しております。また、先日の中川コーポレーションとの契約の方も滞りなく完了致しました」
眞山と呼ばれた男は、きっちりとネクタイを締めており、エリートといった雰囲気が溢れ出ている。
決して細身ではない。
学生時代は運動部で活躍したこともあり、体格は九条にひけをとらない。
実際に高校時代には183センチの身長からバレーボール部に所属していた。
ただし、大学に入ってからは事情があってサークル活動等する暇も無かったが、代わりに理由があって空手を習いに道場へ通ったりもした。
メキメキと頭角を現した眞山は、直ぐに段を持ったし、その成長ぶりに師匠も舌を巻く程だった。
とにかく、体を鍛える事だけは怠らなかった。
そんな眞山でさえ、目の前に居る男には敵わない。
大学を卒業してから、側につき35になる歳まで一度も勝てると思ったことは無かった。
「ご苦労だったな」
男に労われて、眞山は「はっ」と短く返した。
そんな眞山智之(まやま ともゆき)が秘書を務めている相手は、日本で数々の企業を抱えている会社の社長をしている男だ。
最近では海外へも進出をしている、乗りに乗っている会社である。
名前は、九条 一臣(くじょう かずおみ)、年齢は37。
上場企業の『株式会社 KUJYO』代表取締役社長で、複数の会社を経営している。
社名は、日本人ならほぼ知っているだろう。
この会社は、九条が起業して若くして築き上げた物だ。
敏腕振りだけでなく、魅力を全て兼ね備えたかの様な男っぷりも話題に上る。
この株式会社は、九条の裏の顔をカモフラージュする為の物でもあった。
日本で二分するヤクザ組織である『篁組(たかむらぐみ)』の一次下部組織にあたる『旭狼会(きょくろうかい)』がある。
その会の会長が、九条であった。
元々、一臣の祖父の代に組織が起き父親が体調を崩した事から若くして組を受け継いでいた。
受け継いだのは、まだ33の時だった。
周りは、若い息子に組を任せて大丈夫かという疑う声も多かった。
しかし、その頃には起業して会社をある程度大きくしていた実力から、誰ひとりとして異を唱える事の出来る者は居なかった。
ましてや九条と対面した相手は、その迫力に圧されてる者が大多数を占めていたからだ。
若いが、実力と自信が男を益々大きく見せていた。
そんな九条に篁組の組長・篁 善昭(たかむら よしあき)も絶大な期待を寄せていた。
会長として『旭狼会』を率い、そしてそのフロント企業として『KUJYO』を纏め上げている手腕は、業界では郡を抜いて有名な話となっていた。
「…そういえば、どうなった」
九条が突然そう言って、眞山へ視線を送る。
眞山は九条の最近の出来事や表情などから、頭の中を素早く回転させる。
それだけで、眞山には九条が何を言いたかったのかが分かった。
「あれから治療…といってもただの打ち身でしたので特別な事は…。それから今朝九時前に目覚めました」
眞山が坦々と報告をするのを九条は黙って聞いている。
どうやら眞山の推測は間違ってはいなかった。
普段は気にも留めない赤の他人である昨夜の少年。
珍しいことに、九条は昨夜の少年が気にかかっていた様だ。
「続けろ」
九条は特に表情は変えないまま、話の先を促してきた。
「はい」
眞山は頷くと続きを話す。
彼は一を言えば十を理解する、九条の優秀な右腕だった。
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