闇夜の訪問者

櫟 真威

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新月の夜。
森の中では深い闇に獣の瞳だけが光っていた。
少女は六歳の誕生日を迎えたばかり。
母がお祝いのごちそうを用意してくれ、楽しい夜を過ごした。

「六歳というのはね、特別なのよ」

母は云う。
その頃の子供は六歳を待たずに命を落とすことが多かった。
その代わり、六歳まで無事に過ごすと立派な大人になると信じられている。
少女も両親の喜びを見て誇らしくなった。

干し草を布で包んだ簡易な寝床に、それぞれが休んだ。
少女は気持ちが高ぶり、なかなか寝つけなかった。
家の中の空気が変わった。
湿度が高くなった。
ねっとりとした嫌な空気に包まれ、少女は闇の中で目を凝らす。
無論何も見えないが、なにかがいる気配を感じた。

「お、おとうさ」

すぐそこで眠っている両親を呼ぼうとした。
黒い影の手が伸び、少女の口を塞ぐ。
人の手ではない。

「娘」

熱い吐息が耳に届く。
少女はぶるりと震えた。

「十年待つ。
お前を気に入った」

少女はかたかたと震えながら、その言葉の意味を考える。
今すぐ殺されるわけではないようだ。
だが、助かったとも思えない。
相手が人外であることがわかり、両親を起こすことを憚られた。
影は、少女の耳に舌を這わせる。
くすぐったさに少女はびくっと反応する。
舌は頬を、額を、鼻を舐め、唇を吸った。

「んっ……」

それは両親の愛の儀式。
幸福の象徴だ。
頬や額になら、少女は両親から何度も受けた。
しかし影の与えるそれは、少女の知るものとは異なった。
唇を甘噛みし、舌を差し込んでくる。
小刻みに震えながら、少女は混乱していた。
なにを、されているのだろう。

「……ふぅ……っあ……」

唇が解放されると少女は息を吸う。
だが、すぐに影は少女の唇を貪り続けた。
干し草のベッドに倒され、影はのし掛かる。
少女の身体の震えは止まっていた。
頭の芯がぼうっとしていた。
流し込まれた唾液に、麻薬のような効果があったのだろうか。

「やはり美味だ……想像以上だ」

影は少女の耳から首筋に、そして胸に舌を滑らせる。
ちゅく、と甘い淫らな音を発しながら影の舌が動く。
闇夜の長い時間、少女の身体に唾液を塗り込まれている。
影は舌だけで少女を蹂躙する。

「……っ……んぁ……」

へそをくるりと舐められた少女の身体が仰け反った。
少女の意思とは無関係なところで身体は淫らに反応していた。
密が溢れた秘所を、影は勿体ぶりながらちろちろと舌先だけで舐めた。

「あぁっ!ひやぁっ!」

雷にでも撃たれたかのように、少女は硬直する。
しかし影は舌を動かすことをやめない。
溢れ出す蜜を全て舐めとる。
少女の身体から力が抜けた。
肩で息をしている。
影はその唇を啄んだ。

「娘……お前は最高だ」

少女にとってはちっともありがたくない賛辞を、影は口にする。
しかし少女は焦点の合わない目でぼんやりと見返すしかできなかった。

「また来よう。
月のない夜に」

東の空が朱に染まりつつあった。



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