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私の住むアパートは、駅から徒歩五十分、緑のある住宅街だ。
当麻と自転車で並んで帰宅する。
当麻の口数が減っているのが気になるが、どうしたのだろうか。
郵便受けを覗き、ダイレクトメールを取り出す。
「三階なの」
階段を昇る。
西日が階段を照らしている。
ドアを解錠して開く。
ワンルームなので、玄関も広くない。
先に入って当麻を促す。
「どうぞ。
今用意するね」
中に入りながら洗面所の位置を知らせ、自分も手を洗う。
当麻は三和土に立ったまま、動く様子がない。
私は玄関へ戻る。
「当麻?」
「あの、入って、いいの?」
「勿論。
あ、もしかして、カボチャ解体なんか頼んだから、むっとしてる?」
友人という気安さから図々しいことを頼んだろうか。
出会った頃はここまで仲良しになれるとは思っていなかった。
不安になり、当麻の様子を伺う。
「いや、そうじゃなくて。
……男が、入っていいのかなって」
あ。
私は、思いもよらない指摘に赤面した。
私は当麻を友達だと思っていたけれど、世間一般からみれば異性なわけで。
嫁入り前の娘の評判を気にかけてくれたのか。
「ありがとう、当麻。
大丈夫だよ」
私は当麻の手を取り中へ招き入れた。
当麻は私を引き寄せ、抱き締めた。
私は驚いた。
が、当麻の心臓が跳ねているのがわかったので、安心してもらおうと私もしがみつく。
どのくらいそうしていたろうか。
二人の心音が同じリズムになり、温もりも共有していた。
「あきら。
好きだ」
囁くような柔らかな声に、私は頷く。
「私も、当麻、好き……」
小春日和の温もりのように、いつの間にか私を包んでいた当麻の好意。
お布団に丸まってる猫のように、私はとろんとした顔をしていたに違いない。
当麻は私の頬を両手で包むようにして口づけをくれた。
啄むような、優しいキスだった。
近くの小学校が『遠き山に日が落ちて』を放送している。
それをきっかけに私達は離れた。
私も当麻も、照れ笑いをしている。
普通の包丁しかなかったが、当麻はやはり男だ。
カボチャをすいすいと切っていく。
私はその横でワタを取り、レンジで加熱した。
カボチャ団子のタネを作るのだ。
棒状にしたものをいくつか作り、冷凍庫に入れる。
最後に出来上がったものをフライパンで焼き、甘辛醤油を絡める。
温かい麦茶とカボチャ団子をテーブルに並べ、当麻に勧める。
「こんなん初めて食べた。
おいしい」
私はベッドに凭れながら麦茶を飲む。
ワンルームなので、ベッドと座卓、小さな机と椅子、そして衣装ケース位しか家具はない。
胡座をかいている当麻が新鮮だ。
空の食器を洗ってしまうと、寛いでいる当麻の向かいに座った。
当麻は私のそばへにじり寄る。
私を抱え込むように抱き締め、キスをした。
温かい。
嬉しい。
当麻の手が、私の胸に触れた。
私な身体がびくっと震え、硬くなるのがわかった。
当麻も気づいたのだろう、離れてくれた。
「ごめ……私……」
そんなつもりじゃなかった、で許してもらえるだろうか。
カボチャをあげたかったのは本当。
男手だから当てにしたのも本当。
でも、そんな理由で部屋に上げるなんて、信じてもらえるだろうか。
邪な心で誘ったのではないのです。
鴻上瑞樹や彼女の言葉が脳裏に浮かぶ。
痛くて辛くて恥ずかしい行為も。
「怖がらせたね、ごめん」
当麻に謝られてしまった。
当麻と自転車で並んで帰宅する。
当麻の口数が減っているのが気になるが、どうしたのだろうか。
郵便受けを覗き、ダイレクトメールを取り出す。
「三階なの」
階段を昇る。
西日が階段を照らしている。
ドアを解錠して開く。
ワンルームなので、玄関も広くない。
先に入って当麻を促す。
「どうぞ。
今用意するね」
中に入りながら洗面所の位置を知らせ、自分も手を洗う。
当麻は三和土に立ったまま、動く様子がない。
私は玄関へ戻る。
「当麻?」
「あの、入って、いいの?」
「勿論。
あ、もしかして、カボチャ解体なんか頼んだから、むっとしてる?」
友人という気安さから図々しいことを頼んだろうか。
出会った頃はここまで仲良しになれるとは思っていなかった。
不安になり、当麻の様子を伺う。
「いや、そうじゃなくて。
……男が、入っていいのかなって」
あ。
私は、思いもよらない指摘に赤面した。
私は当麻を友達だと思っていたけれど、世間一般からみれば異性なわけで。
嫁入り前の娘の評判を気にかけてくれたのか。
「ありがとう、当麻。
大丈夫だよ」
私は当麻の手を取り中へ招き入れた。
当麻は私を引き寄せ、抱き締めた。
私は驚いた。
が、当麻の心臓が跳ねているのがわかったので、安心してもらおうと私もしがみつく。
どのくらいそうしていたろうか。
二人の心音が同じリズムになり、温もりも共有していた。
「あきら。
好きだ」
囁くような柔らかな声に、私は頷く。
「私も、当麻、好き……」
小春日和の温もりのように、いつの間にか私を包んでいた当麻の好意。
お布団に丸まってる猫のように、私はとろんとした顔をしていたに違いない。
当麻は私の頬を両手で包むようにして口づけをくれた。
啄むような、優しいキスだった。
近くの小学校が『遠き山に日が落ちて』を放送している。
それをきっかけに私達は離れた。
私も当麻も、照れ笑いをしている。
普通の包丁しかなかったが、当麻はやはり男だ。
カボチャをすいすいと切っていく。
私はその横でワタを取り、レンジで加熱した。
カボチャ団子のタネを作るのだ。
棒状にしたものをいくつか作り、冷凍庫に入れる。
最後に出来上がったものをフライパンで焼き、甘辛醤油を絡める。
温かい麦茶とカボチャ団子をテーブルに並べ、当麻に勧める。
「こんなん初めて食べた。
おいしい」
私はベッドに凭れながら麦茶を飲む。
ワンルームなので、ベッドと座卓、小さな机と椅子、そして衣装ケース位しか家具はない。
胡座をかいている当麻が新鮮だ。
空の食器を洗ってしまうと、寛いでいる当麻の向かいに座った。
当麻は私のそばへにじり寄る。
私を抱え込むように抱き締め、キスをした。
温かい。
嬉しい。
当麻の手が、私の胸に触れた。
私な身体がびくっと震え、硬くなるのがわかった。
当麻も気づいたのだろう、離れてくれた。
「ごめ……私……」
そんなつもりじゃなかった、で許してもらえるだろうか。
カボチャをあげたかったのは本当。
男手だから当てにしたのも本当。
でも、そんな理由で部屋に上げるなんて、信じてもらえるだろうか。
邪な心で誘ったのではないのです。
鴻上瑞樹や彼女の言葉が脳裏に浮かぶ。
痛くて辛くて恥ずかしい行為も。
「怖がらせたね、ごめん」
当麻に謝られてしまった。
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