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「今日は俺の家に招待しよう」
当麻の家は駅の反対側だった。
一個三百円の豆腐が売っているスーパーが近所にあるマンション。
もしかして、お坊ちゃま?
「普通のサラリーマン家庭だよ。
父の単身赴任に母が付いていったので俺一人だけど」
結婚して家族もいてマイホームまで購入したのに単身赴任てあるんだ。
世知辛いですな。
当麻の部屋には、オートバイの写真が大きいカレンダー、飛行機の模型、ボトルシップ。
地球儀もあった。
地球儀をじっくり見ることがなかったので、手にとってくるくる回してみる。
イタリア、小さい。
トリニダードトバゴ、こんなところに。
「目が輝いてるな、あきら」
コーヒーをお盆に乗せて当麻が入ってきた。
ドアを開けたままなのは配慮なのだろうか。
あ、でも、どのみち二人きりだった。
私をベッドに座らせ、当麻はデスクチェアに腰かけた。
コーヒーを飲む。
おいしい。
コーヒーって、おいしいんだ。
「淹れ方を気をつけたらおいしくなるんだよ。
豆の良し悪しもあるそうだけど」
母が凝ってるんだ、と当麻は云う。
おしゃれだ。
都会の家庭だ。
「すごいね」
「俺にしたら、カボチャやメロンを送ってくれる実家の方がすごいよ」
二人でふふっと笑う。
当麻はカップをデスクに置き、私の顔を覗きこんだ。
「あきらは、悪い言葉を誰に教わったの。
いつかの彼女?」
取り調べ官のような当麻に聞いたところによると、若い女性が決して口にしてはいけない言葉なのだそうです。
当麻は案外保守的だ。
私は、いつかの100円寿司屋で云われた話をせざるを得なかった。
当麻は憤慨した。
「女の子はね、いるだけでいいんだよ。
男は女の子を大事にしなきゃ」
「え?
いやこのご時世にそんな」
当麻は何時代の人なのだろうか。
いやご両親の教えか。
当麻は私の手からカップを取り、デスクに置いた。
私の隣に腰かけ、唇を重ねた。
幾度となく繰り返されたこの行為は、庇護されているという安心感を与えてくれる。
「あきらの嫌がることはしないつもりだけど……あきらが、不感症なんかじゃないって証明してあげる」
そのまま静かに押し倒される。
でも、怯える必要はなかった。
当麻は私の腕や背中をさするようにしてくれたので。
幼子を寝かしつける母親のように。
「はい……」
頬に耳に首筋に、当麻は唇を這わせた。
ちゅっ、と音を立てて唇を当てられるとくすぐったいが、嬉しくもある。
「あきらも俺にして?」
「う、うん」
当麻の真似をして、ちゅっ、と唇を当てる。
当麻もくすぐったそうだ。
首筋にすると当麻がびくっとした。
当麻も、気持ちいいと、嬉しいと思ってくれる。
私は当麻に抱きついた。
当麻も抱き返してくれる。
「当麻、好き」
「俺もあきらが好きだよ」
子猫のじゃれ合いのようなことをして、日の暮れる前に解散した。
真奈美から男性の生理を教わっていた私は不安になったが、「あきらはそんなこと気にしなくていいの」と当麻に云われてしまった。
当麻の家は駅の反対側だった。
一個三百円の豆腐が売っているスーパーが近所にあるマンション。
もしかして、お坊ちゃま?
「普通のサラリーマン家庭だよ。
父の単身赴任に母が付いていったので俺一人だけど」
結婚して家族もいてマイホームまで購入したのに単身赴任てあるんだ。
世知辛いですな。
当麻の部屋には、オートバイの写真が大きいカレンダー、飛行機の模型、ボトルシップ。
地球儀もあった。
地球儀をじっくり見ることがなかったので、手にとってくるくる回してみる。
イタリア、小さい。
トリニダードトバゴ、こんなところに。
「目が輝いてるな、あきら」
コーヒーをお盆に乗せて当麻が入ってきた。
ドアを開けたままなのは配慮なのだろうか。
あ、でも、どのみち二人きりだった。
私をベッドに座らせ、当麻はデスクチェアに腰かけた。
コーヒーを飲む。
おいしい。
コーヒーって、おいしいんだ。
「淹れ方を気をつけたらおいしくなるんだよ。
豆の良し悪しもあるそうだけど」
母が凝ってるんだ、と当麻は云う。
おしゃれだ。
都会の家庭だ。
「すごいね」
「俺にしたら、カボチャやメロンを送ってくれる実家の方がすごいよ」
二人でふふっと笑う。
当麻はカップをデスクに置き、私の顔を覗きこんだ。
「あきらは、悪い言葉を誰に教わったの。
いつかの彼女?」
取り調べ官のような当麻に聞いたところによると、若い女性が決して口にしてはいけない言葉なのだそうです。
当麻は案外保守的だ。
私は、いつかの100円寿司屋で云われた話をせざるを得なかった。
当麻は憤慨した。
「女の子はね、いるだけでいいんだよ。
男は女の子を大事にしなきゃ」
「え?
いやこのご時世にそんな」
当麻は何時代の人なのだろうか。
いやご両親の教えか。
当麻は私の手からカップを取り、デスクに置いた。
私の隣に腰かけ、唇を重ねた。
幾度となく繰り返されたこの行為は、庇護されているという安心感を与えてくれる。
「あきらの嫌がることはしないつもりだけど……あきらが、不感症なんかじゃないって証明してあげる」
そのまま静かに押し倒される。
でも、怯える必要はなかった。
当麻は私の腕や背中をさするようにしてくれたので。
幼子を寝かしつける母親のように。
「はい……」
頬に耳に首筋に、当麻は唇を這わせた。
ちゅっ、と音を立てて唇を当てられるとくすぐったいが、嬉しくもある。
「あきらも俺にして?」
「う、うん」
当麻の真似をして、ちゅっ、と唇を当てる。
当麻もくすぐったそうだ。
首筋にすると当麻がびくっとした。
当麻も、気持ちいいと、嬉しいと思ってくれる。
私は当麻に抱きついた。
当麻も抱き返してくれる。
「当麻、好き」
「俺もあきらが好きだよ」
子猫のじゃれ合いのようなことをして、日の暮れる前に解散した。
真奈美から男性の生理を教わっていた私は不安になったが、「あきらはそんなこと気にしなくていいの」と当麻に云われてしまった。
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