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小石井家
あきら 《初日》
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二階に主寝室はあった。
シングルベッドが二つ並んでいる。
続き間はクローゼットになっており、あきらはタンスをそこに入れさせてもらった。
母の形見の桐箪笥は、少し浮いていた。
他に、麟太郎の自室とホビールーム。
昌武の書斎は一階のリビングの隣だ。
「鏡台はないって聞いたから、買っちゃった。
これでもいいかな」
鏡の側に百合の花のような灯りがついている。
豪華すぎてたじろぐ。
促されるまま座ってみると、鏡に男女が映っている。
「ひゃ」
近い。
近いですよ、昌武さん。
夕食の時も、さりげなくお尻を触ったり、胸を触ったり。
夫婦ってこんなことするものなの?
麟太郎の視線が気になり、あきらは必死に避けていた。
昌武はそれを楽しんでいるようにも見える。
麟太郎は気づいているのかいないのか、飄々としていた。
「お風呂。
一緒に入ろっか」
昌武があきらの髪に鼻を埋めた。
あきらは立ち上がった。
顎に頭突きを喰らいそうになった昌武は慌てて避ける。
「だっ旦那様がお先にどうぞっ」
「……まさたけ、って呼んでよ」
「まっ、まっ、まさっ」
あきらが真っ赤になっている。
昌武は拗ねたように唇を尖らせ、そして笑った。
「あんまり苛めちゃだめだね。
お楽しみは後にとっておくよ」
昌武が階下へ消えると、あきらは全身から力が抜けた。
正直、最初にお話をいただいたときは、家政婦としての後妻だと思ったのだ。
昌武はモテそうだし、息子の麟太郎も父の良いところを受け継ぎ、整った顔立ちをしている。
結婚相手には事欠かないであろう彼が、なぜ自分を選んだのか。
「……謎だわ……」
「あの」
「うわっはいっ」
人がいるとは思わなかったので、あきらは慌てた。
振り返ると、ドアを解放して麟太郎が立っていた。
「ごはん、おいしかったです」
「まあ、ありがとう」
「あの、父はあんなんですけど、どうかよろしく」
律儀に頭を下げられ、あきらは戸惑う。
「こっこちらこそ。
あの、至らない嫁ですが、よろしくお願いします」
「ははっ」
麟太郎は頭を上げて笑った。
初めて笑顔を見た気がした。
「嫁、って……俺、一応息子だよ」
「あっ、そうでしたね、いやだ、私ったら」
「敬語も要らないよ、おかあさん」
あきらは目を丸くした。
そして、目頭が熱くなるのを感じた。
なんてしっかりした息子さんなんだろう。
健気な少年を、あきらは抱き締めていた。
身長差があるので、あきらの顔は麟太郎の胸に当たり、抱きついたような格好になってしまったが。
「これからは、甘えてね。
出来る限りのことをするから」
自分の子供は諦めていた。
しかし、子供を育てることはできる。
恵まれた境遇に感謝したくなった。
麟太郎はそんな義母を抱き締めた。
あきらは驚き、慌てて離れる。
麟太郎はにっこりと笑顔を浮かべて自室へ入っていった。
シングルベッドが二つ並んでいる。
続き間はクローゼットになっており、あきらはタンスをそこに入れさせてもらった。
母の形見の桐箪笥は、少し浮いていた。
他に、麟太郎の自室とホビールーム。
昌武の書斎は一階のリビングの隣だ。
「鏡台はないって聞いたから、買っちゃった。
これでもいいかな」
鏡の側に百合の花のような灯りがついている。
豪華すぎてたじろぐ。
促されるまま座ってみると、鏡に男女が映っている。
「ひゃ」
近い。
近いですよ、昌武さん。
夕食の時も、さりげなくお尻を触ったり、胸を触ったり。
夫婦ってこんなことするものなの?
麟太郎の視線が気になり、あきらは必死に避けていた。
昌武はそれを楽しんでいるようにも見える。
麟太郎は気づいているのかいないのか、飄々としていた。
「お風呂。
一緒に入ろっか」
昌武があきらの髪に鼻を埋めた。
あきらは立ち上がった。
顎に頭突きを喰らいそうになった昌武は慌てて避ける。
「だっ旦那様がお先にどうぞっ」
「……まさたけ、って呼んでよ」
「まっ、まっ、まさっ」
あきらが真っ赤になっている。
昌武は拗ねたように唇を尖らせ、そして笑った。
「あんまり苛めちゃだめだね。
お楽しみは後にとっておくよ」
昌武が階下へ消えると、あきらは全身から力が抜けた。
正直、最初にお話をいただいたときは、家政婦としての後妻だと思ったのだ。
昌武はモテそうだし、息子の麟太郎も父の良いところを受け継ぎ、整った顔立ちをしている。
結婚相手には事欠かないであろう彼が、なぜ自分を選んだのか。
「……謎だわ……」
「あの」
「うわっはいっ」
人がいるとは思わなかったので、あきらは慌てた。
振り返ると、ドアを解放して麟太郎が立っていた。
「ごはん、おいしかったです」
「まあ、ありがとう」
「あの、父はあんなんですけど、どうかよろしく」
律儀に頭を下げられ、あきらは戸惑う。
「こっこちらこそ。
あの、至らない嫁ですが、よろしくお願いします」
「ははっ」
麟太郎は頭を上げて笑った。
初めて笑顔を見た気がした。
「嫁、って……俺、一応息子だよ」
「あっ、そうでしたね、いやだ、私ったら」
「敬語も要らないよ、おかあさん」
あきらは目を丸くした。
そして、目頭が熱くなるのを感じた。
なんてしっかりした息子さんなんだろう。
健気な少年を、あきらは抱き締めていた。
身長差があるので、あきらの顔は麟太郎の胸に当たり、抱きついたような格好になってしまったが。
「これからは、甘えてね。
出来る限りのことをするから」
自分の子供は諦めていた。
しかし、子供を育てることはできる。
恵まれた境遇に感謝したくなった。
麟太郎はそんな義母を抱き締めた。
あきらは驚き、慌てて離れる。
麟太郎はにっこりと笑顔を浮かべて自室へ入っていった。
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