小石井あきらの第二の人生

櫟 真威

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小石井家

あきら 《日曜日 2》

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……好きじゃなくてもやれちゃうでしょ。

およそ朝の食卓に似つかわしくない単語が飛び出したが、あきらとしては捨て置けなかった。
麟太郎はその容姿や性格から、引く手あまたと推察される。
好かれて嫌な人はいない。
ましてや、思春期男子。
だからといって、選り取りみどりなハーレムは許されない。
なんというか、人道的に。

「あきらさん」

「ぬお。
なんでおかあさんて呼ばないの」

「今、なんかろくでもないこと考えてるでしょ。
だから」

「ろくでもないこと、ですって?」

聞き捨てならない。
あきらは片方の眉を上げた。

「俺の不穏当発言で良妻賢母なスイッチ入ったでしょ。
心配しなくても、女の子を下手に傷つけたりしないよ」

不穏当な発言という自覚はあるのか。

「ごめんなさい……」

それにしても、麟太郎に対して失礼な考えだったと反省。
今時の子供は利発、思慮深いんだな。
朝食をテーブルに並べ、あきらも食卓に着いた。
はす向かいの麟太郎がプチトマトをあきらの口に運ぶ。
麟太郎はあきらが口を開けるのを待っている。
仕方なし、あきらはそれをぱくりと食べた。
麟太郎がなぜかガッツポーズをしている。
麟太郎も昌武も、時々あきらにはわからない行動を取る。
……小石井家特有なのかしら。

「麟太郎さん、よかったら私の本を読んでみない?
多角的な視点から恋愛を考えられるわよ」

「あきらさんの本棚って、クリスティとかドイルじゃなかった?
あれは恋愛ものじゃないよね」

「川端康成もあるわよ」

読書傾向の偏りを指摘されたようで、あきらは口を尖らせた。

「桐野夏生は勧めないでくれよ。
麟太郎には青い鳥文庫で充分だ」

昌武がキッチンへやってきた。
あきらがコーヒーを差し出す。

「ところで、なんで本?」

「守秘義務です」

しれっとあきらが答える。
昌武が面白くなさそうな顔をした。

「鳴かぬなら鳴かせてみよう、だ。
口を割らせる方法はいくらでもある」

「朝から物騒な話するなよ、親父」

「だってあきらが可愛いんだもーん」

「そういう話はやめてください。
子供の前で」

「子供じゃないよ」

「だよな。
女知ってるもんな」

「……っとに、この親子はぁ」

麟太郎の恋愛観を真剣に悩むのはやめようと心に誓うあきらだった。

「しかしな、麟太郎。
相思相愛じゃないと、セックスは楽しくないぞ」

「どこから聞いてたんですかっ」

あきらは真っ赤になって叫んだ。

「俺のこと、大好きだってとこから」

……普通の一般家庭の話題がしたい。
あら、普通の一般家庭の話題ってなにかしら。

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