邪神令嬢の学園事情

りゅうじんまんさま

文字の大きさ
19 / 48
第一章 入学編

クラスメイトと友達

しおりを挟む
 エカテリーナに案内されて入室した教室は二十人程度の人がゆったりと学べるような広さで、弧を描きながら一続きになっている机がひな壇状に並んでいます。

 既にほとんどのクラスメイトが席についているようで、私達が入ってきた瞬間、全員が一斉に顔を向けてきました。

 クラスの人達は爵位などによっていくつかの派閥に分かれているようで、派閥ごとに集まった人たちがヒソヒソと小声で話し合いながら私の方を見ています。

 そして、多数の視線を受けて居たたまれなくなった私は、適当な席に着いて始業までやり過ごそうとしました。

 ちょうどその時、私が見知った人物が教室へと入ってきました。

「はーい、みんな静かに着席!!」

 その見知った人物とは、美女『エルフ』の学園長、クローディアさんでした。

 クローディアさんは教室の教壇に立つと、場を静める為に大きな声を出しながら手を叩きました。

 流石に私を見てヒソヒソ話をしていたクラスメイト達も、クローディアさんの声を聞いて静まります。

「アリアさん、こっちにきて頂戴」

 私はクローディアさんに手招きされて教壇の横に立ちました。

 その間も、教室は静かなままでしたが、不思議なものを見るような視線は相変わらず私の方へ集中しています。

「みんな話は聞いてると思うけど、という感じだから紹介するわね」

「彼女は『アリア・フォン・ソフィミア』、その名の通り『ソフィミア公爵家』の人間よ」

 ザワザワ・・・。

 クローディアさんの紹介を聞いたクラスメイト達が騒然となります。

 いきなり現れた転入生?が伝説の『ソフィミア家』の人間と聞いたのですから、騒ぎになるのも仕方ありません。

「彼女は諸事情で今日からこの『騎士科』に通う事になったわ」

「既に情報を聞いている人もいるかもしれないけれど、彼女はレオンハルト殿下と同じ人工女神アーク・イルティアの『騎士ランナー』です」

 ザワザワ・・・。

人工女神アーク・イルティア・・・)

(あの子が伝説の・・?)

「じゃあ、アリアさん。皆さんに挨拶をお願いします」

「は・・はい!!」

 クローディアさんに促されて緊張で息を呑んだ私は、ゆっくりと深呼吸をしてから口を開きました。

「はじめまして。私は『アリア・フォン・ソフィミア』と申します」

「ご紹介にあったように、つい先日まで『アーティナイ連邦自治国』で平民として暮らしていましたが、諸事情によって女神ハーティルティア様から『公爵位』を賜ってこの学園に通うこととなりました」

「見ての通り貴族としての礼儀とか、まだまだわからない事ばかりですが、一日も早く皆さんと仲良くできればと思っています」

「いろいろ至らない点があるとは思いますが、よろしくお願いします」

 自己紹介を終えた私がぺこりと頭を下げましたが、皆さんからは何の反応もなく教室も静まり返ったままです。

 どうしましょう。私、何か粗相をしたのでしょうか。

 パチパチパチ・・・。

 心臓が飛び出そうになるくらいにドキドキしながら固まっていると、レオンハルト様が微笑みながら拍手をしてくれました。

 そして、それに続いてエカテリーナさんも拍手をしてくれます。

 パチパチパチパチ・・・。

 やがて、レオンハルト様が拍手をしているのにそのままではさすがにバツが悪いと思ったのか、ちらほらと拍手の音が教室内に広がって行きました。

「じゃあアリアさん、特に席は決まってないから好きなところに座って頂戴」

 クローディアさんに促されて、私は自分の座る席を探す為に教室のひな壇を見渡しました。

「・・・・・」

 すると、レオンハルト様が自分の席の隣をとんとんと叩きながら、キラキラと期待を膨らませたような眼差しを送ってきました。

 レオンハルト様は何故か私が隣に座ってほしいような表情をしていますが、今までの周りの反応を見れば、それがという事は私でもわかります。

 本当はエカテリーナの近くに座りたいのですが、彼女はレオンハルト様の二つ離れた横に座っているので難しそうです。

 そして、残りはそれぞれの派閥で集まっているグループばかりなので、私が座りに行くのは難しそうです。

 そんな状態でどうしようか視線を迷わせていると、ひな壇の最前列の端にある席で、ただ一人ぽつんと座る令嬢を見つけました。

 彼女は、貴族令嬢の中では珍しいショートボブの髪型をしていました。

 そして、きれいな菫色の髪にくりっとした垂れ目と小柄な体格が小動物のようで、なんとなく庇護欲をそそられます。

 なにより、私と同じような雰囲気を感じるところが興味を引きました。

 レオンハルト殿下やエカテリーナを除いた全員が何らかのグループを作る中、彼女だけが一人で座ることを不思議に思った私は、彼女の隣の席に座ることにしました。

 ちなみに、その様子を一部始終見ていたレオンハルト様はとても残念な表情をしていました。

、よろしいでしょうか」

「っ!?ひっ!!は、はひ!!!」

 私が隣の席に座ると、彼女はとても驚いたような表情をしていました。

「先ほど自己紹介しましたが、私はアリアと言います。よろしくお願いします」

「あ・・あの・・!!わた・・わたしは『ユイ・シノサキ』と言いますっ!!」

 彼女の名前を聞いた瞬間、今度は私が驚きました。

『シノサキ家』は代々『アーティナイ連邦』の元首である大統領を輩出している名家で、世界有数の大財閥の家系です。

 そして、シノサキ財閥傘下の『シノサキ重工』は魔導機甲マギ・マキナ開発でレゾニア重工とランガースインダストリーに次ぐ規模を誇ります。

 それ程『シノサキ』の名前は有名なのですが、私はに驚いたのです。

「っ!!同じ『アーティナイ連邦自治国』出身の方がいらっしゃるなんて!!嬉しいです!」

 私は興奮のあまり、ユイさんの手を握ります。

「は・・・え!?」

 ユイさんは興奮した私に戸惑っていますが、私はそれどころではありません。

「やはり、に行きましたわ」

「クスクス・・所詮平民は平民同士群れるのですわ」

 すると、私達の様子を見ていたクラスメイト達がひそひそと悪口を言い始めました。

「あ・・あの、アリア様・・私なんかに構っていたら良くない噂が流れますよ」

 周りの悪口を耳にしたユイさんが悲しそうに顔を伏せます。

『アーティナイ連邦自治国』は、選挙で大統領を選出する完全民主主義の国てす。

 つまり、他の国のようなが存在しません。

 ユイさんは名家で政治的な力を持つ『シノサキ家』の人間ですが、あくまでです。

 なので、貴族ばかりが集まるクラスではどうしても浮いてしまうのでしょう。

「ユイさん・・いえ、『ユイちゃん』って呼びますね。私だってつい数日前まで平民でしたし、気持ちはユイちゃんに近いです」

「正直、ある日突然『ヨークスカ』から飛び出して、貴族の学校に通う事になって心細かったんです」

「だから、よかったら友達になってくれませんか?」

「とも・・だち?」

 ユイちゃんは私の提案に戸惑っているようでした。

「はい!ですから、わたしのことは『アリア』と呼んでください」

「でも・・アリア様は公爵様で・・」

「私だってそんな実感は無いですよ!正直おまけみたいに思っています、で中身は庶民です!だから、仲良くしましょう!」

「周りなんか気にしなくてもいいです!たとえみんなが何て言っても、友達は友達ですから!!」

 すると、私の言葉を聞いたユイさんの瞳から涙が溢れ始めました。

「うぐ・・ありがとう・・ございます、わたし嬉しくてっ!」

「ふふ・・これからよろしくね!ユイちゃん」

「ぐす・・うん!よろしく!アリアちゃん!」

 ・・・・・。

「クスクス・・傷を舐め合うようで惨めですわ」

「せいぜい平民同士仲良くしていたらいいのですわ」

 未だに悪意のある言葉は聞こえてきますが、もう私達がそれを気にする事はありませんでした。

 カツカツカツ・・・。

 すとん・・。

 すると、突然エカテリーナが歩み寄ってきて私達の席の近くに腰掛けました。

「つまり、友達の友達は『友達』ということですわね」

「エカテリーナ様・・」

「『エカテリーナ』で結構ですわよ、ユイ。実は、前から貴女の魔導機甲マギ・マキナが気になっていましたの」

「アリアのおかげで声をかけるきっかけができましたわ。なんせ、貴女私が近づいたらいつも逃げてしまいますものね」

 確かに、エカテリーナの性格を知らない人からすれば、金髪縦ロールでゴージャスな貴族令嬢が迫ってきたら恐縮してしまうかと思います。

「まったく、そんな事気にしなくて良いんだ。この学園内では貴族の上下関係で人を差別してはいけないんだから。?」

 エカテリーナに続いてさりげなくやってきたレオンハルト様が、悪口を言っていた令嬢達の方へ意味深な目を向けました。

「っ!?」

 流石に王子に睨まれてバツが悪かったのか、悪口を言っていた令嬢達は口を閉じて目を逸らしました。

「ということで、ユイ嬢?もお友達になりましょう」

 レオンハルト様の後ろについてきたアーヴィンさんは、キラキラとした笑顔をユイちゃんに向けました。

「はわわわ・・は、はひ!!」

 美男子耐性のないユイちゃんは、突然の出来事に目をぐるぐるしながら壊れた人形のように頷いています。

 ですが、これでユイちゃんと私のお友達が一気に増えました。

 正直、見知らぬ学園に通う事になって初めはどうなるかと思いましたが、沢山の良い人達と出会えてよかったです。

 どうやら、私の学園生活は何とか無事にスタートできそうです。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

能天気な私は今日も愛される

具なっしー
恋愛
日本でJKライフを謳歌していた凪紗は遅刻しそうになって全力疾走してたらトラックとバコーン衝突して死んじゃったー。そんで、神様とお話しして、目が覚めたら男女比50:1の世界に転生してたー!この世界では女性は宝物のように扱われ猿のようにやりたい放題の女性ばっかり!?そんな中、凪紗ことポピーは日本の常識があるから、天使だ!天使だ!と溺愛されている。この世界と日本のギャップに苦しみながらも、楽観的で能天気な性格で周りに心配される女の子のおはなし。 はじめて小説を書くので誤字とか色々拙いところが多いと思いますが優しく見てくれたら嬉しいです。自分で読みたいのをかいてみます。残酷な描写とかシリアスが苦手なのでかかないです。定番な展開が続きます。飽き性なので褒めてくれたら続くと思いますよろしくお願いします。 ※表紙はAI画像です

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

男女比バグった世界で美女チート無双〜それでも私は冒険がしたい!〜

具なっしー
恋愛
日本で暮らしていた23歳喪女だった女の子が交通事故で死んで、神様にチートを貰い、獣人の世界に転生させられた!!気づいたらそこは森の中で体は15歳くらいの女の子だった!ステータスを開いてみるとなんと白鳥兎獣人という幻の種族で、白いふわふわのウサ耳と、神秘的な白鳥の羽が生えていた。そしてなんとなんと、そこは男女比が10:1の偏った世界で、一妻多夫が普通の世界!そんな世界で、せっかく転生したんだし、旅をする!と決意した主人公は絶世の美女で…だんだん彼女を囲う男達が増えていく話。 主人公は見た目に反してめちゃくちゃ強いand地球の知識があるのでチートしまくります。 みたいなはなし ※表紙はAIです

処理中です...