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第一章 神聖イルティア王国編
お茶会
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騎士団詰所での模擬試合が終わった後、ハーティがデビッドとどのような顔をして会えばいいかと数日悩んでいた頃・・・。
結局、ハーティがいつも通り王太子妃教育を受けた後に王宮内を歩いていた時、デビッドとばったり出会した。
「あ、デビッド・・」
突然の遭遇に、前回のこともあってどう言う言葉をかけようかとハーティが考えていたところ・・。
「あ、こんにちわ。義姉さん。今日も王宮に来てたんですねっ!お妃教育ご苦労様です!」
すっかり前回の悩みを感じさせないような明るい様子に戻っているデビッドを見て、ハーティは呆気に取られていた。
「ええ、お気遣いありがとう。デビッド」
「では、僕は少し用事がありますので失礼しますね!」
「ええ、またね」
そう言うと、デビッドは手を振りながら去っていった。
(結構落ち込んでいたみたいだったけど、立ち直ったみたいでよかった!・・ちょっとあっさりしすぎて拍子抜けはしたけど・・・)
「デビッド殿下が元気になられたようでようございました。私も少々気になっていたので・・」
ハーティの背後で一部始終を見ていたユナは苦笑いをした。
「そうね」
ひとまずは元気になったデビッドを見て、ハーティはほっとしていた。
「あ、いけない!皆さんをお待たせしてしまうわ!」
ハーティは王妃陛下から、今日のお妃教育が終わった後でお茶会に誘われていた。
そしてそこへ向かっていたことを思い出したハーティは歩みを早めて向かった。
・・・・・。
・・・・・・・。
「王妃陛下!側姫殿下!遅くなり申し訳ありません!」
王宮内にある王室専用サロンに到着すると、そこには既にユーリアシスとミリフュージアが優雅にお茶を愉しんでいる姿があった。
「あらあら、いいのよハーティちゃん。さあさあ早くこちらへ」
「まあ『側姫殿下』なんて他人行儀ねぇ、わたくしのことは『お義母さま』と呼んで欲しいと言っているのに』
「すいません、それについては追々慣れていきますので・・・失礼します」
ハーティが椅子に腰掛けると、ユナは素早く既に給仕をしている他の使用人に混ざって自分の仕事を始めていた。
そして流れるような所作でハーティに香り高い紅茶を差し出した。
(思えばこの洗練された動きも日頃の鍛錬からきているのかしらね)
ハーティはユナの動きを見て一人感心していた。
そしてしばらく三人でお茶を愉しみながら他愛の無い話をしていたところ、ふと思い出したかのようにユーリアシスが言葉を零した。
「そういえばハーティちゃん。本洗礼はまだなのよね」
「うぐっ!」
突然の言葉に、ハーティは口にしていたマカロンをつまらせかけた。
「??ハーティちゃん?大丈夫?あんまり美味しいからって慌てて食べちゃダメよ?」
「も、もうしわけありません・・」
「??・・で、本洗礼はまだよね?」
「ええ、お恥ずかしながら・・・」
神聖イルティア王国民にとって『女神教』は切っても切れない存在である。
王国民たちは平民であれど、15歳になれば最寄りの女神教会に赴いて本洗礼をうける。
そして、王国では原則、本洗礼を受けてはじめて成人として認められるのであった。
「まあ、それはいけないわ。ハーティちゃんは未来の王妃になるのよ。正式に成婚となるまでに受けないと」
ユーリアシスは「めっ!」と言った感じでハーティを嗜めた。
「ハーティちゃんは王妃になるのだし・・・周りの目もあるわ。よしっ、妾から枢機卿に掛け合って聖女様より本洗礼を受けれるように手配するわ」
そう言ってミリフュージアは息巻いていた。
「せ、聖女様!?」
「そうよ、ハーティちゃんは未来の王族なのだからそのくらいしないと箔がつかないのよ」
聖女様と言えば、女神ハーティルティアに今までで最も近い色であるプラチナブロンドの髪色をした女性で、ハーティたちと変わらない年齢でありながら、上位浄化魔導を行使できる稀代の存在だという、神聖イルティア王国民であれば知らない人はいないと言ってもいいほど有名な人である。
また、女神教会でも政治的に言えば総司祭の次に上位の存在であり、神官の能力でいえば紛れも無い一番上位の存在である為、王妃陛下や国王陛下すら気を使う程の人物だと聞く。
それは、女神の転生者であるハーティとしてはあまり会いたくない存在でもあった。
その後は突然始まった本洗礼の話と女神ハーティルティアの偉大さを語る話で盛り上がった二人に、ハーティが付き合わされる形でお茶会はお開きとなった。
そして・・・。
「はあ・・・疲れたわ」
ユナと一緒に乗ったオルデハイト家の馬車の中で、ハーティはため息を吐いていた。
「ユナはもちろん本洗礼は済んでいるのよね?」
「ええ、私も15歳の時に白銀の神殿で司祭様から受けましたよ」
「そうよねえ・・」
「まあ、『本当の本洗礼』はオルデハイト侯爵家で執り行ってもらいましたが・・・」
「それ、私が王都に来て間もない時にあなたにしたおままごとの洗礼ではなくて?」
その言葉を聞いたユナが勢いよく立ち上がった。
「おままごとなんてそんな!?あれほど神聖にして格式高い本洗礼はありません!なんといっても女神様直々にしていただいたのですから!!」
「あーはいはい、わかったわよ。危ないからいきなり馬車の中で立たないでね」
「これは・・失礼しました」
そして、再びユナは座席に腰掛けた。
「しかし聖女様こそハーティお嬢様の御前に平伏して女神様との出会いに咽び泣いて喜ぶべきなのです!」
「ハーティお嬢様に本洗礼など己が立場を知るべきです!」
「こら、ユナ!不敬よ」
(だけど・・・やっぱり行かないといけないわよねぇ・・・)
そう言いながら、ハーティは馬車の車窓から見える白銀の神殿を眺めて、ため息を零した。
結局、ハーティがいつも通り王太子妃教育を受けた後に王宮内を歩いていた時、デビッドとばったり出会した。
「あ、デビッド・・」
突然の遭遇に、前回のこともあってどう言う言葉をかけようかとハーティが考えていたところ・・。
「あ、こんにちわ。義姉さん。今日も王宮に来てたんですねっ!お妃教育ご苦労様です!」
すっかり前回の悩みを感じさせないような明るい様子に戻っているデビッドを見て、ハーティは呆気に取られていた。
「ええ、お気遣いありがとう。デビッド」
「では、僕は少し用事がありますので失礼しますね!」
「ええ、またね」
そう言うと、デビッドは手を振りながら去っていった。
(結構落ち込んでいたみたいだったけど、立ち直ったみたいでよかった!・・ちょっとあっさりしすぎて拍子抜けはしたけど・・・)
「デビッド殿下が元気になられたようでようございました。私も少々気になっていたので・・」
ハーティの背後で一部始終を見ていたユナは苦笑いをした。
「そうね」
ひとまずは元気になったデビッドを見て、ハーティはほっとしていた。
「あ、いけない!皆さんをお待たせしてしまうわ!」
ハーティは王妃陛下から、今日のお妃教育が終わった後でお茶会に誘われていた。
そしてそこへ向かっていたことを思い出したハーティは歩みを早めて向かった。
・・・・・。
・・・・・・・。
「王妃陛下!側姫殿下!遅くなり申し訳ありません!」
王宮内にある王室専用サロンに到着すると、そこには既にユーリアシスとミリフュージアが優雅にお茶を愉しんでいる姿があった。
「あらあら、いいのよハーティちゃん。さあさあ早くこちらへ」
「まあ『側姫殿下』なんて他人行儀ねぇ、わたくしのことは『お義母さま』と呼んで欲しいと言っているのに』
「すいません、それについては追々慣れていきますので・・・失礼します」
ハーティが椅子に腰掛けると、ユナは素早く既に給仕をしている他の使用人に混ざって自分の仕事を始めていた。
そして流れるような所作でハーティに香り高い紅茶を差し出した。
(思えばこの洗練された動きも日頃の鍛錬からきているのかしらね)
ハーティはユナの動きを見て一人感心していた。
そしてしばらく三人でお茶を愉しみながら他愛の無い話をしていたところ、ふと思い出したかのようにユーリアシスが言葉を零した。
「そういえばハーティちゃん。本洗礼はまだなのよね」
「うぐっ!」
突然の言葉に、ハーティは口にしていたマカロンをつまらせかけた。
「??ハーティちゃん?大丈夫?あんまり美味しいからって慌てて食べちゃダメよ?」
「も、もうしわけありません・・」
「??・・で、本洗礼はまだよね?」
「ええ、お恥ずかしながら・・・」
神聖イルティア王国民にとって『女神教』は切っても切れない存在である。
王国民たちは平民であれど、15歳になれば最寄りの女神教会に赴いて本洗礼をうける。
そして、王国では原則、本洗礼を受けてはじめて成人として認められるのであった。
「まあ、それはいけないわ。ハーティちゃんは未来の王妃になるのよ。正式に成婚となるまでに受けないと」
ユーリアシスは「めっ!」と言った感じでハーティを嗜めた。
「ハーティちゃんは王妃になるのだし・・・周りの目もあるわ。よしっ、妾から枢機卿に掛け合って聖女様より本洗礼を受けれるように手配するわ」
そう言ってミリフュージアは息巻いていた。
「せ、聖女様!?」
「そうよ、ハーティちゃんは未来の王族なのだからそのくらいしないと箔がつかないのよ」
聖女様と言えば、女神ハーティルティアに今までで最も近い色であるプラチナブロンドの髪色をした女性で、ハーティたちと変わらない年齢でありながら、上位浄化魔導を行使できる稀代の存在だという、神聖イルティア王国民であれば知らない人はいないと言ってもいいほど有名な人である。
また、女神教会でも政治的に言えば総司祭の次に上位の存在であり、神官の能力でいえば紛れも無い一番上位の存在である為、王妃陛下や国王陛下すら気を使う程の人物だと聞く。
それは、女神の転生者であるハーティとしてはあまり会いたくない存在でもあった。
その後は突然始まった本洗礼の話と女神ハーティルティアの偉大さを語る話で盛り上がった二人に、ハーティが付き合わされる形でお茶会はお開きとなった。
そして・・・。
「はあ・・・疲れたわ」
ユナと一緒に乗ったオルデハイト家の馬車の中で、ハーティはため息を吐いていた。
「ユナはもちろん本洗礼は済んでいるのよね?」
「ええ、私も15歳の時に白銀の神殿で司祭様から受けましたよ」
「そうよねえ・・」
「まあ、『本当の本洗礼』はオルデハイト侯爵家で執り行ってもらいましたが・・・」
「それ、私が王都に来て間もない時にあなたにしたおままごとの洗礼ではなくて?」
その言葉を聞いたユナが勢いよく立ち上がった。
「おままごとなんてそんな!?あれほど神聖にして格式高い本洗礼はありません!なんといっても女神様直々にしていただいたのですから!!」
「あーはいはい、わかったわよ。危ないからいきなり馬車の中で立たないでね」
「これは・・失礼しました」
そして、再びユナは座席に腰掛けた。
「しかし聖女様こそハーティお嬢様の御前に平伏して女神様との出会いに咽び泣いて喜ぶべきなのです!」
「ハーティお嬢様に本洗礼など己が立場を知るべきです!」
「こら、ユナ!不敬よ」
(だけど・・・やっぱり行かないといけないわよねぇ・・・)
そう言いながら、ハーティは馬車の車窓から見える白銀の神殿を眺めて、ため息を零した。
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