転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

文字の大きさ
27 / 229
第一章 神聖イルティア王国編

イラの神託 〜アレクス侯爵過去視点〜2

しおりを挟む
 イラによって下された神託による、魔導結晶の採掘場所はグラファイト侯爵領内にあった。
 
指定された採掘場所がグラファイト侯爵内にあったとしったアレクスはここ幸いにと早速王国に対して魔導結晶の採掘に対して報告を行った。

 今まで全く新規事業に興味を示さなかったアレクスの突然の行動に王室は疑問を呈したが、自領での新規事業であり、それによって生まれた収益に見合う税金を納めるのであれば王国としては何も問題ない為、これを承認した。

 アレクスは承認を受けると早速手持ちの財を惜しみなく投じて大人数の冒険者や魔導士をやとって採掘事業を始めた。

 そして、自らの中に同化したイラに発掘された魔導結晶を見せてきたが、それらはどれもイラが求めるものではなかった・・・。

 そして、イラの神託に従ってアレクスがグラファイト侯爵領外縁の山脈にて魔導結晶の採掘を始めてから、9年近くが経過した頃・・・。
 
 アレクスは魔導結晶の採掘現場を視察していた。
 
 あれからアレクスは冒険者ギルドに更に高額の報奨金を提示して多数の魔導結晶採掘依頼を出した。
 
 それは他人についてお金を出し渋ることで有名であったアレクス侯爵が出す依頼としては破格の値段であった。
 
 そして、高額の報酬を惜しまず中級以上の土属性や火属性魔導を発動できる魔導士を雇い、鉱床を掘り進む為の掘削や発破、地ならし、掘削した洞窟の壁面補強というようなに業務に従事させた。
 
 そのようなことを9年も続けていたので、魔導結晶の採掘場所では巨大なクレーター上の採掘現場が出来上がっていた。
 
 アレクスは9年の採掘期間の間、魔導結晶の採掘作業を積極的に確認する為に採掘現場へ度々通っていた。
  
 それは、採掘現場はグラファイト領内の屋敷や王都の屋敷からも距離が離れていた為、わざわざ採掘現場滞在用の屋敷を新築したほどの熱心さであった。
 
 それほど大規模な発掘作業を行っていたのだが、アレクスは自分のグラファイト侯爵領内で採掘作業を行っていたこと、あらかじめ王国に承認を取った上で、生まれた収益についての納税はきちんと行われており、これといった不正のようなものも一切無かったことで、王国側としては『グラファイト侯爵家が魔導結晶産業に手を出し始めた』という程度の認識であり、さほど気に留められることもなかった。
 
 そして実際に、未だにイラが求める魔導結晶は発見できなかったが、イラが指定した場所では通常の魔導結晶が沢山採掘され、結果グラファイト侯爵家の大幅な増収につながった。
 
 それにより、アレクスはますますイラの神託に妄信的となっていったのであった。
 
 そして、いよいよその時はやってきだ。
 
 アレクスはいつも通り、採掘現場を見下ろせる高台の場所で設営されたテントの下で、お気に入りのメイドを侍らせながら年代物の高級ワインを口移しするなどして愉しんでいた。
 
 その時、魔導結晶の採掘現場責任者の人間が、アレクスの下に息を荒げながら駆け寄ってきたのであった。
 
「アレクス様!!アレクス様!」
 
「どうした、騒々しい!」
 
「ようやく・・ようやく!アレクス侯爵様の探してらっしゃるものと見られる魔導結晶を発見しました!!」

「なんだと!?本当か!?」

 その言葉を聞いてアレクスはその男に駆け寄った。

「はい、例の魔導結晶は採掘現場の最深部にあります。少しご足労をかけますがご確認お願いできますか」

「当たり前だ、さあ早く連れてくのだ!!」

 そして、アレクスは責任者に連れられて魔導結晶採掘現場の最深部へ向かった。

 9年かけて掘り進んだ採掘現場は徒歩で行くにはかなり遠い距離があったが、ようやく神託を達成できると喜んだアレクスは不思議と全く苦痛を感じなかった。

 そして最深部へ向けて二時間ほど歩みを進めると・・・。

 そこには採掘を進めていった洞窟の行き止まりがあった。

 そこは松明で柔らかな光で灯されていたが、非常に薄暗い場所であった。

 そして、その薄暗い空間の中で聳え立った岩の壁の中心付近で、ひと際目立つ光があった。

 そこにはアレクスが今まで見たことがない、美しく黒色に輝く魔導結晶が埋まっており、青白い光を放っていた。

「おお・・・・」

 アレクスはそれを見て思わずため息をついた。

 それはアレクスが見た魔導結晶の中で、最も美しく妖しく惹きつけられるものであった。

(イラ様、こちらがお探しのものでお間違えありませんでしょうか?)

((おお、素晴らしい!まさにこれこそ我が探し求めた『黒の魔導結晶』だ))

(く、黒の魔導結晶ですか?)

((左様、これこそが我々神族が復活するために必要となる魔導結晶だ))

(これで我々の悲願を達成できるというものだ!)

((そうでございますか!!それは素晴らしい))

「よくやった!貴様には褒美をやろう!」

 イラから絶賛を受けて気を良くしたアレクスは採掘現場責任者の人間に報酬を与えることにしたのだ。

「ありがたき幸せ」

 そして、その後掘り出された魔導結晶をアレクスは手に取った。

 それは魔導にあまり明るくないアレクスにとっても、とてつもなく膨大な見知らぬ力が内包されているように感じられた。

(イラ様。こうしてようやくお探しの魔導結晶は手に入れました。私めはこれをどのように使えば良いのでしょうか)

 アレクスはただひたすら神託に従って魔導結晶の採掘に携わっただけなので、具体的に採掘した魔導結晶をどういうように使うのか見当がつかなかった。
 
 その問いに対してイラは答えた。

((この魔導結晶はそなたたちが言う『魔導の才能』に恵まれない人間に対して大いなる力を授けるものである))

((この魔導結晶をそなたが知っている『魔導の才能による壁で苦しんでいる』人物に渡すと良い))

((さすれば、その人物の魔導は飛躍的に開花し、そなたの望みを叶える一助となるであろう))

 その言葉を聞いてアレクスは真っ先にある人物が頭によぎった。

 『デビッド殿下』である。

 彼はかねてより自身の魔導の才能について悩んでいる節があった。

 そして、アレクスがイラの神託により『黒の魔導結晶』を手渡すことにより、彼の魔導の才能が開花すれば・・。

 アレクスが望む『第二王子による立太子』が実現し、そしてその後ろ盾になることによりオルデハイト侯爵家を出し抜くことができる・・・。

 更にはそのことによって何らかの策略でマクスウェルとハーティの婚約を破綻に持ち込めば、婚約を破棄されたことによる傷物となって、嫁ぎ先に困ったハーティを『自らが』娶ることができる可能性も生まれてくる・・。

 そのような妄想が膨らんでくるアレクスはイラの神託に感謝して、ニタァと陰湿な笑みを浮かべた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

スローライフ 転生したら竜騎士に?

梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。   

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地! 恋に仕事に事件に忙しい! カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

追放された万能聖魔導師、辺境で無自覚に神を超える ~俺を無能と言った奴ら、まだ息してる?~

たまごころ
ファンタジー
王国一の聖魔導師アレンは、嫉妬した王子の策略で「無能」と断じられ、国を追放された。 辿り着いた辺境の村で、アレンは「ただの治癒師」として静かに暮らそうとするが――。 壊れた街を再生し、疫病を一晩で根絶し、魔王の眷属まで癒しながら、本人はただの村医者のつもり。 その結果、「あの無能が神を超えた」と噂が広がり、王と勇者は頭を抱えることに。 ざまぁとスカッとが止まらない、無自覚最強転生ファンタジー開幕!

処理中です...