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第一章 神聖イルティア王国編
デビッドの思い ~デビッド殿下視点~1
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神聖イルティア王国謁見の間で、デビッドは人生で最も衝撃的な出会いを果たした。
濡れたように艶があって輝いた美しい黒髪。
視線を吸い込まれそうな大きくて愛らしい瞳。
ドレスから伸びる、精巧な人形のように白くシミひとつない綺麗な手。
デビッドにとって、目の前に存在する少女は、妖精もかくやという程の魅力的な存在として映った。
その時、デビッドは一目見て彼女に『恋をした』のであった。
しかし、その少女は出会った時から既にほかの者の手にあった。
それは腹違いの兄、マクスウェルであった。
マクスウェルは側姫の子であったが、王国の王位継承順位第一位の人物であり、その美しい金髪と瞳に違わず、生まれたころから素晴らしい魔導の才能に満ち溢れていた。
それに比べてデビッドの髪色と瞳は、かなり濃い紺色であった。
それにより、デビッドは魔導の素質が無いとされ、実際に努力をしてみてものの、初級の魔導を発動することすらままならないものであった。
周囲の人間たちは、デビッドの魔導について表だって何も言ってくることはなかったが、デビッド自身としては兄であるマクスウェルと無意識に比べられている気がして我慢ならなかった。
(どうして、同じ王族なのに兄上とこんなにも違うのか・・・・)
デビッドは、そのような劣等感をずっと抱いてきたのであった。
そして、今回のマクスウェルとハーティの婚約に伴う国王陛下への謁見である。
今回の婚約は、王室側でかねてより画策されていたもので、側姫の子であるマクスウェル立太子を確実なものとする為に国王陛下による婚約の承認を急いでいた様子であった。
それは、王室としてもマクスウェルに王族としての素質を大いに期待しているということであり、その事実もデビッドにとっては心苦しいことであった。
そしてマクスウェルの婚約者としてデビッドの前に現れたハーティは、デビッドにとって本当に魅力的な子であった。
そんな魅力的な子ですら、出会った時には既にマクスウェルが手に入れている・・・。
自分は結局何も手に入れることができず、王国で宙に浮いた存在として生きていかないといけない。
そう思うと、デビッドは思わず目の前にいる二人に恨めし気な視線を送ってしまうのであった。
・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
それからもハーティは年齢を重ねるごとに、益々魅力的な女性へと変貌していった。
出会った時からデビッドはハーティを『一人の女性』として意識していたが、デビッドとハーティは2歳しか年齢は離れていなかったにも関わらず、あくまでハーティはデビッドに対して弟のような対応で接してきているように感じていた。
しかし、婚約が承認された時から年月が経ち、国全体がハーティを『マクスウェルの婚約者』と認識している以上、デビッドの恋慕はこれからもひた隠しにしていかないといけなかった。
デビッドの中でそれを理解していても、日を増すごとにハーティへの恋心が増していく。
それはデビッドが『男性』として成長してきたことの表れであった。
デビッドは自分の気持ちが成就しなくても、せめてハーティから『一人の男性』として接してもらいたかった。
だからこそ、10歳になって騎士団の訓練に参加するようになってからは、とにかく鍛錬に勤しんだ。
自分は魔導の才能がなくても、剣術で一人前の男になってハーティに認めてもらう。
ただそれを目標として、血のにじむような努力を続けてきたのである。
しかし、現実は残酷なものであった。
優秀な魔導士として成長してきたマクスウェルであったが、剣術の腕も日を増すごとに磨かれてきたのだ。
更には身体強化魔導を使いこなすようになった頃からは、同世代や若い世代の騎士団員ですら誰もマクスウェルに敵うものは存在しなくなっていった。
自分がどれだけ努力しても、生まれ持った能力の差でマクスウェルに勝つことができない。
それからというもの、騎士団の訓練で何度マクスウェルに挑んでも、デビッドが勝利することはなかった。
そして、デビッドにとってさらに追い打ちをかけることとなったのは『ユナ』の存在であった。
ハーティの専属侍女である彼女は、初めて会ったときから掴みどころがわからない女性であった。
元々普段は卒なくハーティの身を世話する多才な侍女であったが、出会ったときからデビッドは彼女に対して只ならぬ気配を感じていた。
まず、彼女が甲斐甲斐しくハーティの世話をするその動きには一切の無駄がなかった。
それはデビッド自身が騎士団の訓練に参加してきたことや、マクスウェルとの模擬試合で彼の動きなどを観察していたからこそ徐々にわかってきたものである。
彼女もまた、年齢を重ねることにその動きは洗練されていき、近年の彼女は正に『武人』の動きそのものであった。
そして、いつの間にか彼女もまた騎士団の訓練に参加するようになったのである。
話に聞くことによると、彼女はかつて王国中に名を轟かせた『最強の騎士団長』であったオルデハイト侯爵家の執事長に師事していたという。
そんな彼女はデビッドよりもさらに深い紺色、それはほぼ黒髪に近いような髪色をしていた。
もちろん、彼女も魔導については全く使用できない人物であったが、彼女の純粋な剣術の腕としてはマクスウェルを越えるほどのものとなっていた。
結局デビッドはユナとの模擬試合においても、全く勝つことができなかったのである。
等しく『魔導が使えない』という、同じ土俵に立った、しかも身体能力的に不利な女性にすら勝つことができないということが、彼にとってプライドを大きく傷つけられたのであった。
そして、とうとうデビッドは『ハーティの眼前でユナに敗北する』という、彼にとって最も避けたかった事態に遭遇した。
もともとデビッドは『ハーティに一人の男』として意識してもらいたいという一心で今まで努力してきた。
その出来事により、デビッドは今まで積み重ねてきた努力の全てを否定されたようであった。
その後ハーティに見せる顔が無いと思ったデビッドは、逃げるように闘技場を後にしていた。
(どうして・・どうして僕はこんなに無能なんだ!!!)
苛立ちが爆発したデビッドは近くの壁に向かって拳を撃ちつけた。
それによる拳の痛みが、さらにデビッドの心に空しさを満たすようであった。
カツ・・カツ・・・。
その時、デビッドの眼前から一人の男が歩み寄ってきた。
濡れたように艶があって輝いた美しい黒髪。
視線を吸い込まれそうな大きくて愛らしい瞳。
ドレスから伸びる、精巧な人形のように白くシミひとつない綺麗な手。
デビッドにとって、目の前に存在する少女は、妖精もかくやという程の魅力的な存在として映った。
その時、デビッドは一目見て彼女に『恋をした』のであった。
しかし、その少女は出会った時から既にほかの者の手にあった。
それは腹違いの兄、マクスウェルであった。
マクスウェルは側姫の子であったが、王国の王位継承順位第一位の人物であり、その美しい金髪と瞳に違わず、生まれたころから素晴らしい魔導の才能に満ち溢れていた。
それに比べてデビッドの髪色と瞳は、かなり濃い紺色であった。
それにより、デビッドは魔導の素質が無いとされ、実際に努力をしてみてものの、初級の魔導を発動することすらままならないものであった。
周囲の人間たちは、デビッドの魔導について表だって何も言ってくることはなかったが、デビッド自身としては兄であるマクスウェルと無意識に比べられている気がして我慢ならなかった。
(どうして、同じ王族なのに兄上とこんなにも違うのか・・・・)
デビッドは、そのような劣等感をずっと抱いてきたのであった。
そして、今回のマクスウェルとハーティの婚約に伴う国王陛下への謁見である。
今回の婚約は、王室側でかねてより画策されていたもので、側姫の子であるマクスウェル立太子を確実なものとする為に国王陛下による婚約の承認を急いでいた様子であった。
それは、王室としてもマクスウェルに王族としての素質を大いに期待しているということであり、その事実もデビッドにとっては心苦しいことであった。
そしてマクスウェルの婚約者としてデビッドの前に現れたハーティは、デビッドにとって本当に魅力的な子であった。
そんな魅力的な子ですら、出会った時には既にマクスウェルが手に入れている・・・。
自分は結局何も手に入れることができず、王国で宙に浮いた存在として生きていかないといけない。
そう思うと、デビッドは思わず目の前にいる二人に恨めし気な視線を送ってしまうのであった。
・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
それからもハーティは年齢を重ねるごとに、益々魅力的な女性へと変貌していった。
出会った時からデビッドはハーティを『一人の女性』として意識していたが、デビッドとハーティは2歳しか年齢は離れていなかったにも関わらず、あくまでハーティはデビッドに対して弟のような対応で接してきているように感じていた。
しかし、婚約が承認された時から年月が経ち、国全体がハーティを『マクスウェルの婚約者』と認識している以上、デビッドの恋慕はこれからもひた隠しにしていかないといけなかった。
デビッドの中でそれを理解していても、日を増すごとにハーティへの恋心が増していく。
それはデビッドが『男性』として成長してきたことの表れであった。
デビッドは自分の気持ちが成就しなくても、せめてハーティから『一人の男性』として接してもらいたかった。
だからこそ、10歳になって騎士団の訓練に参加するようになってからは、とにかく鍛錬に勤しんだ。
自分は魔導の才能がなくても、剣術で一人前の男になってハーティに認めてもらう。
ただそれを目標として、血のにじむような努力を続けてきたのである。
しかし、現実は残酷なものであった。
優秀な魔導士として成長してきたマクスウェルであったが、剣術の腕も日を増すごとに磨かれてきたのだ。
更には身体強化魔導を使いこなすようになった頃からは、同世代や若い世代の騎士団員ですら誰もマクスウェルに敵うものは存在しなくなっていった。
自分がどれだけ努力しても、生まれ持った能力の差でマクスウェルに勝つことができない。
それからというもの、騎士団の訓練で何度マクスウェルに挑んでも、デビッドが勝利することはなかった。
そして、デビッドにとってさらに追い打ちをかけることとなったのは『ユナ』の存在であった。
ハーティの専属侍女である彼女は、初めて会ったときから掴みどころがわからない女性であった。
元々普段は卒なくハーティの身を世話する多才な侍女であったが、出会ったときからデビッドは彼女に対して只ならぬ気配を感じていた。
まず、彼女が甲斐甲斐しくハーティの世話をするその動きには一切の無駄がなかった。
それはデビッド自身が騎士団の訓練に参加してきたことや、マクスウェルとの模擬試合で彼の動きなどを観察していたからこそ徐々にわかってきたものである。
彼女もまた、年齢を重ねることにその動きは洗練されていき、近年の彼女は正に『武人』の動きそのものであった。
そして、いつの間にか彼女もまた騎士団の訓練に参加するようになったのである。
話に聞くことによると、彼女はかつて王国中に名を轟かせた『最強の騎士団長』であったオルデハイト侯爵家の執事長に師事していたという。
そんな彼女はデビッドよりもさらに深い紺色、それはほぼ黒髪に近いような髪色をしていた。
もちろん、彼女も魔導については全く使用できない人物であったが、彼女の純粋な剣術の腕としてはマクスウェルを越えるほどのものとなっていた。
結局デビッドはユナとの模擬試合においても、全く勝つことができなかったのである。
等しく『魔導が使えない』という、同じ土俵に立った、しかも身体能力的に不利な女性にすら勝つことができないということが、彼にとってプライドを大きく傷つけられたのであった。
そして、とうとうデビッドは『ハーティの眼前でユナに敗北する』という、彼にとって最も避けたかった事態に遭遇した。
もともとデビッドは『ハーティに一人の男』として意識してもらいたいという一心で今まで努力してきた。
その出来事により、デビッドは今まで積み重ねてきた努力の全てを否定されたようであった。
その後ハーティに見せる顔が無いと思ったデビッドは、逃げるように闘技場を後にしていた。
(どうして・・どうして僕はこんなに無能なんだ!!!)
苛立ちが爆発したデビッドは近くの壁に向かって拳を撃ちつけた。
それによる拳の痛みが、さらにデビッドの心に空しさを満たすようであった。
カツ・・カツ・・・。
その時、デビッドの眼前から一人の男が歩み寄ってきた。
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