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第一章 神聖イルティア王国編
デビッドの思い ~デビッド殿下視点~2
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「これはこれは、デビッド殿下。なにやら穏やかではないご様子ですね・・」
デビッドの前に現れた男は慣れた動きで彼の前で跪くと、そのような声をかけてきた。
「・・・あなたも僕を笑いにきたのか」
デビッドはとにかく虫の居所が悪かった。
なので、事情を知らないアレクスに八つ当たりをしているような口調に、更に自分に対して嫌気がさしていた。
「いえいえ、とんでもございません。なにやら思いつめているようでしたので、私は殿下のことを心より心配に思ったのです」
自分がアレクスに対してぞんざいな扱いをしたにも関わらず、アレクスが恭しく対応してきたことにより少し心を落ち着かせたデビッドは、つい今まで誰にも打ち明けることのなかった兄への劣等感をアレクスに零してしまった。
しかし、アレクスはそれを嫌がることもせず、ただ真摯に受け止めているようであった。
そして一通りデビッドが話終えると、彼は考えるような素振りを見せた後に口を開いた。
「殿下の気持ち、お察しいたします。私もかつて、一人の女性を巡ってレイノス侯爵と決闘して敗北した出来事は、今でも大きな心の傷となっております」
「ユリアーナ侯爵夫人の事ですね」
過去に起きたレイノスとアレクスの決闘については表だって公表はされていないが、王宮内では割と有名な話であった。
その話を聞いて、アレクスに対して親近感を感じたデビッドは、とうとうハーティに対する思いも打ち明けてしまった。
「・・・・なるほど、それはさぞ辛いことでしたでしょう・・・!それでしたら!」
そう言葉にしたアレクスは、何かを思いついたような表情をしながらデビッドに声をかけた。
「ご存知かと思いますが、私はこの数年ほど魔導結晶の採掘事業を手掛けておりまして・・・そこで素晴らしいものを発見したのです」
「素晴らしいもの・・ですか?」
「はい。それが、これです」
そういいながらアレクスは後ろに控える侍従が大事そうに持つ小箱を受け取って、デビッドの前に差し出した。
そして、アレクスガその小箱の蓋を静かに開くとそこには、まるでハーティの髪色のように美しい黒色の結晶が嵌ったペンダントがあった。
「こちらは『黒の魔導結晶』といいまして、魔導結晶の採掘をしていた時にたまたま発掘した一品を王都の職人によってペンダントに加工したものです」
「こちらをデビッド殿下に差し上げましょう」
「・・これを・・ですか?」
先ほどまでの話と目の前に差し出されたペンダントの関連性がわからないデビッドは首を傾げた。
「・・・・ここだけの話ですが・・これは『ただの魔導結晶』ではございません」
「それは色を見ればわかりますが・・」
通常の魔導結晶は純度の高いものは透明であるし、そうでないものは琥珀色のものが多かった。
少なくともデビッドは眼前の黒い色をした魔導結晶は見たことが無かった。
「この魔導結晶は・・・かつてこの世界が創造されたと言われる時代から眠ることによって『膨大なマナ』が内包されたものなのです」
「『膨大なマナ』ですか?」
通常、魔導結晶に込められるマナの量はその結晶自体の大きさで決まる。
デビッドの目の前にある結晶の大きさを見ると、それほどマナが蓄えられているようには見えなかったのだ。
「これは私が独自に調べたところによると、かつての『神界の遺物』なのではと思っているのです」
「そして、この結晶にはとても膨大なマナが存在しています」
「それこそ『極大魔導』を何度も発動できるほどの・・・です」
「!!!」
それを聞いてデビッドは戦慄した。
もしそれが事実であれば、魔導を使えないデビッドでも詠唱をすれば魔導が発動できるからだ。
それこそ身体強化魔導もかなりの回数と長時間に渡って行使できる。
「私もなんどか実験で魔導を発動しましたが、これに含まれるマナは全くと言っていいほど減っている感じはしませんでした」
「これを使えば、殿下が思い悩んでいた『魔導』の行使も夢ではないわけです」
デビッドはアレクスの話を聞いて、その魔導結晶が欲しくてたまらなくなった。
アレクスの話もそうだが、ハーティの黒髪のように美しい魔導結晶にデビッドは妖しい魅力を感じていたのだ。
だが、話を聞くほどその魔導結晶は大変貴重なものであると窺える。
もし『黒の魔導結晶』がそれほどのものであるならば、王国や女神教会の研究機関に調査用として献上されてもおかしくないものであるからだ。
「だけど・・それほどものであれば、たとえ王族である僕でも個人的に持っていていいものではないのでは??」
そう感じたデビッドは後ろ髪が引かれる思いで、差し出された魔導結晶をアレクスに押し返した。
「・・・まだこの魔導結晶の存在は誰にも知れ渡っておりません」
「そして、この魔導結晶があれば、殿下が思い悩んでいたものが一気に解決して、ハーティ様にも認めてもらうことができます・・・」
「私はかつて自分の夢をかなえることができませんでしたが、殿下はまだお若い」
「いまならまだ間に合います。殿下には私と同じような後悔を持ってほしくないのです」
「私は全力で、デビッド殿下の事を応援しております。ですから、ここだけの話ということでこの魔導結晶を御譲りしたいのです」
「・・・さあ、これを手にすれば、必ず殿下の『思い』は達成できますよ!」
その言葉を聞いてしまったデビッドは、もう自分の気持ちを抑えることができなかった。
アレクスの言葉を魅力的に感じたデビッドは結局その魔導結晶を受け取ったのであった。
そしてデビッドが魔導結晶を受け取ったのを確認すると、アレクスは再びデビッドの前で跪いた。
「私はデビッド殿下がマクスウェル殿下よりも優れた人間であると心から信じております」
「アレクス侯爵・・・・」
「この先、何があっても我々グラファイト侯爵家が殿下の後ろ盾になります」
「・・・・感謝します、アレクス侯爵・・」
「もったいなきお言葉でございます」
その言葉を聞いてアレクスは頭を垂れた。
俯いたことにより隠されたアレクスの表情は、邪悪な笑みを浮かべていた・・・。
デビッドの前に現れた男は慣れた動きで彼の前で跪くと、そのような声をかけてきた。
「・・・あなたも僕を笑いにきたのか」
デビッドはとにかく虫の居所が悪かった。
なので、事情を知らないアレクスに八つ当たりをしているような口調に、更に自分に対して嫌気がさしていた。
「いえいえ、とんでもございません。なにやら思いつめているようでしたので、私は殿下のことを心より心配に思ったのです」
自分がアレクスに対してぞんざいな扱いをしたにも関わらず、アレクスが恭しく対応してきたことにより少し心を落ち着かせたデビッドは、つい今まで誰にも打ち明けることのなかった兄への劣等感をアレクスに零してしまった。
しかし、アレクスはそれを嫌がることもせず、ただ真摯に受け止めているようであった。
そして一通りデビッドが話終えると、彼は考えるような素振りを見せた後に口を開いた。
「殿下の気持ち、お察しいたします。私もかつて、一人の女性を巡ってレイノス侯爵と決闘して敗北した出来事は、今でも大きな心の傷となっております」
「ユリアーナ侯爵夫人の事ですね」
過去に起きたレイノスとアレクスの決闘については表だって公表はされていないが、王宮内では割と有名な話であった。
その話を聞いて、アレクスに対して親近感を感じたデビッドは、とうとうハーティに対する思いも打ち明けてしまった。
「・・・・なるほど、それはさぞ辛いことでしたでしょう・・・!それでしたら!」
そう言葉にしたアレクスは、何かを思いついたような表情をしながらデビッドに声をかけた。
「ご存知かと思いますが、私はこの数年ほど魔導結晶の採掘事業を手掛けておりまして・・・そこで素晴らしいものを発見したのです」
「素晴らしいもの・・ですか?」
「はい。それが、これです」
そういいながらアレクスは後ろに控える侍従が大事そうに持つ小箱を受け取って、デビッドの前に差し出した。
そして、アレクスガその小箱の蓋を静かに開くとそこには、まるでハーティの髪色のように美しい黒色の結晶が嵌ったペンダントがあった。
「こちらは『黒の魔導結晶』といいまして、魔導結晶の採掘をしていた時にたまたま発掘した一品を王都の職人によってペンダントに加工したものです」
「こちらをデビッド殿下に差し上げましょう」
「・・これを・・ですか?」
先ほどまでの話と目の前に差し出されたペンダントの関連性がわからないデビッドは首を傾げた。
「・・・・ここだけの話ですが・・これは『ただの魔導結晶』ではございません」
「それは色を見ればわかりますが・・」
通常の魔導結晶は純度の高いものは透明であるし、そうでないものは琥珀色のものが多かった。
少なくともデビッドは眼前の黒い色をした魔導結晶は見たことが無かった。
「この魔導結晶は・・・かつてこの世界が創造されたと言われる時代から眠ることによって『膨大なマナ』が内包されたものなのです」
「『膨大なマナ』ですか?」
通常、魔導結晶に込められるマナの量はその結晶自体の大きさで決まる。
デビッドの目の前にある結晶の大きさを見ると、それほどマナが蓄えられているようには見えなかったのだ。
「これは私が独自に調べたところによると、かつての『神界の遺物』なのではと思っているのです」
「そして、この結晶にはとても膨大なマナが存在しています」
「それこそ『極大魔導』を何度も発動できるほどの・・・です」
「!!!」
それを聞いてデビッドは戦慄した。
もしそれが事実であれば、魔導を使えないデビッドでも詠唱をすれば魔導が発動できるからだ。
それこそ身体強化魔導もかなりの回数と長時間に渡って行使できる。
「私もなんどか実験で魔導を発動しましたが、これに含まれるマナは全くと言っていいほど減っている感じはしませんでした」
「これを使えば、殿下が思い悩んでいた『魔導』の行使も夢ではないわけです」
デビッドはアレクスの話を聞いて、その魔導結晶が欲しくてたまらなくなった。
アレクスの話もそうだが、ハーティの黒髪のように美しい魔導結晶にデビッドは妖しい魅力を感じていたのだ。
だが、話を聞くほどその魔導結晶は大変貴重なものであると窺える。
もし『黒の魔導結晶』がそれほどのものであるならば、王国や女神教会の研究機関に調査用として献上されてもおかしくないものであるからだ。
「だけど・・それほどものであれば、たとえ王族である僕でも個人的に持っていていいものではないのでは??」
そう感じたデビッドは後ろ髪が引かれる思いで、差し出された魔導結晶をアレクスに押し返した。
「・・・まだこの魔導結晶の存在は誰にも知れ渡っておりません」
「そして、この魔導結晶があれば、殿下が思い悩んでいたものが一気に解決して、ハーティ様にも認めてもらうことができます・・・」
「私はかつて自分の夢をかなえることができませんでしたが、殿下はまだお若い」
「いまならまだ間に合います。殿下には私と同じような後悔を持ってほしくないのです」
「私は全力で、デビッド殿下の事を応援しております。ですから、ここだけの話ということでこの魔導結晶を御譲りしたいのです」
「・・・さあ、これを手にすれば、必ず殿下の『思い』は達成できますよ!」
その言葉を聞いてしまったデビッドは、もう自分の気持ちを抑えることができなかった。
アレクスの言葉を魅力的に感じたデビッドは結局その魔導結晶を受け取ったのであった。
そしてデビッドが魔導結晶を受け取ったのを確認すると、アレクスは再びデビッドの前で跪いた。
「私はデビッド殿下がマクスウェル殿下よりも優れた人間であると心から信じております」
「アレクス侯爵・・・・」
「この先、何があっても我々グラファイト侯爵家が殿下の後ろ盾になります」
「・・・・感謝します、アレクス侯爵・・」
「もったいなきお言葉でございます」
その言葉を聞いてアレクスは頭を垂れた。
俯いたことにより隠されたアレクスの表情は、邪悪な笑みを浮かべていた・・・。
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