35 / 229
第一章 神聖イルティア王国編
闘技場での死闘2
しおりを挟む
「パーティ、その格好は!?」
そう言いながらマクスウェルは顔を赤くした。
本来、貴族令嬢であり淑女であるハーティのような女性は、常に足元まで丈があるドレスを着ている。
それは、貴族女性にとって脚を晒すということは世間的にはしたないとされるからだ。
しかし、今のハーティはその魅力的な脚を惜しげもなく晒していた。
「え?可愛いでしょ?」
「あ、アンデッド・・てえええい!」
ハーティはマクスウェルにくるりと回って今の姿を披露したあと、ついでと言わんばかりで常人が肉眼では視認出来ない程の速度で回し蹴りを放った。
パパパァァァン!
その蹴りは周りのアンデッド数体を消し飛ばしていた。
「え、ハーティ・・ちょ・・・」
ハーティは魔導を使うには、威力の加減に相当集中しないと闘技場を消しとばしかねなかったので、ひたすら徒手空拳で戦っていた。
しかし、ハーティは加減しているつもりでも発動している『ブースト』はかなりの効力であったので、その蹴りの威力は異常であった。
しかも彼女は完全な黒髪で、本来ならば魔導の行使はからきしのはずである。
マクスウェルが抱いていた、『ちょっと恋愛に鈍感で、普段見せる明るさの中で偶に見せる儚さがあるハーティ像』が打ち壊されようとしていた。
「あ、あとでユナの件も纏めて説明してもらうからな!」
そう言いながらマクスウェルは眼前のアンデッドを斬り伏せていた。
イイイィン。
「せいっ!」
ユナは神剣を構えてアンデッド数体に横薙ぎで斬りかかる。
シュパァン!
「グギェアアア!」
そして、後ろの闘技場の壁ごと真っ二つになったそれらは派手に崩れ落ちていった。
「はぁはぁ、さすがはハーティ様の誂えた神剣・・凄まじい斬れ味です・・もうすぐここは片付きそうですね」
そう言いながら、リリスはもう何個目になるかわからない魔導結晶をポーチから取り出した。
ちなみに属性のある魔導によるマナの消費量は、その術の規模と術者の属性ごとの素質に左右される。
リリスは光魔導の素質が高いので、普通の人間より少ないマナで光魔導が発動できる。
それでも浄化魔導を連射するとマナが枯渇してしまうので、ひとまずは魔導結晶からマナを取り出して浄化魔導を発動していた。
魔導はその詠唱術式を唱えるかスクロールがあれば誰でも発動できるが、光魔導の素質がなければ、市販の魔導結晶が有するマナでは初級治癒魔導を一回発動するのがせいぜいである。
その点、リリスであれば同じ量のマナでもかなりの回数で魔導を発動できるが、それでもあまりに多い敵の数に手持ちの魔導結晶も少なくなってきていた。
「はぁはぁ、これで最後です!『ホーリーライト』!」
「グガァァァォア!」
リリスの何度目になるかわからない『ホーリーライト』により、どうにか闘技場のアンデッドを全滅させることが出来た。
「ようやくここも片付いたわね」
ハーティの言葉に皆が息をついたとき・・・。
バァン!
「で、殿下!大変です!」
闘技場入り口の扉を勢いよく開いて衛兵が駆け込んできた。
「何事だ!?」
その衛兵のただならない様子にマクスウェルが問い詰める。
「お、王都の至る所でアンデッドが現れて、王都民達を襲っています!」
「襲われた人もアンデッドになってしまい、王都はパニックです!」
「なんだって!?」
そこでマクスウェルはふと気になったことを衛兵に尋ねた。
「国王陛下や王族達はどうなっている!?無事なのか!?」
「陛下や王妃、主要な大臣の皆様は、本日白銀の神殿で行われる予定の大規模ミサに出席する予定でしたのでそちらに集まっていらっしゃいまして、今はそこで多数の上級神官達が護りを固めています」
「そういえばそうであったな・・私と聖女様は騒ぎを察知してここにやってきたが・・であれば、きっとハーティの父君も無事だろうな」
「ええ・・幸いですね」
ハーティとマクスウェルは、ひとまず肉親や身内の無事を知って安堵した。
「ですが・・」
そういうと衛兵は顔を曇らせた。
「どうした?」
「何故かはわかりませんが、『デビッド殿下』と見られる人物が『飛翔』らしき魔道で白銀の神殿へ向かって飛んでいるのを、何人かの衛兵が目撃したようです」
「しかもその人物は地上にいる王都民を次々と攻撃してアンデッドに変えていっていますっ!」
「どんどん増えるアンデッドにもう対処もしきれない状態なのに、我が国の心の拠り所である白銀の神殿までアンデッドが攻め込んできたら・・我が国はもう・・」
そう言いながら衛兵は泣き崩れた。
「そんな!?きっと白銀の神殿には、今ミサの為に数万人の信者が集まっているはずです!」
「王族も揃っているのでしたら、事は一刻を争います!」
そう言いながら、リリスは顔を青ざめさせた。
そして、その言葉を聞いてハーティは何かを決意するように、力強く拳を握りしめた。
「・・・行きましょう、白銀の神殿へ。『イラ』を止めるのよ!」
「ハーティ、何を言っている!確かに一大事だが、私たちがいって邪神をどうにかできるものじゃないぞ!」
ハーティの言葉をあまりに無謀と感じたのか、マクスウェルが強い口調でハーティに言い寄った。
「・・大丈夫よ。わたしに考えがあるから。お願いマクスウェル。私を信じて?」
「殿下、聖女である私も向います。私の光の魔導であれば、邪神への有効打になりえるやもしれません」
「殿下、私も戦います。みんなで邪神の企みを阻止しましょう!デビッド殿下も救わないといけません」
「・・・ハーティ、みんな・・・」
「そうだな、ハーティ。君は私の妃になるんだ、私はハーティのことを信じよう!」
「もうすぐ、君との結婚式も行う予定だったんだ。その為にも、必ず王都を取り戻そう!」
そう言いながら、マクスウェルはハーティの手を取った。
「え・・ええ」
しかし、それを聞いたハーティは表情を曇らせた。
「・・さあみんな、行きましょう。白銀の神殿へ!」
そのハーティの声を聞いて、皆が頷いた。
(・・ごめんなさい、マクスウェル・・)
そして、今から自分がやろうとしていることを憂いて、ハーティは心の中でマクスウェルに謝罪した。
そう言いながらマクスウェルは顔を赤くした。
本来、貴族令嬢であり淑女であるハーティのような女性は、常に足元まで丈があるドレスを着ている。
それは、貴族女性にとって脚を晒すということは世間的にはしたないとされるからだ。
しかし、今のハーティはその魅力的な脚を惜しげもなく晒していた。
「え?可愛いでしょ?」
「あ、アンデッド・・てえええい!」
ハーティはマクスウェルにくるりと回って今の姿を披露したあと、ついでと言わんばかりで常人が肉眼では視認出来ない程の速度で回し蹴りを放った。
パパパァァァン!
その蹴りは周りのアンデッド数体を消し飛ばしていた。
「え、ハーティ・・ちょ・・・」
ハーティは魔導を使うには、威力の加減に相当集中しないと闘技場を消しとばしかねなかったので、ひたすら徒手空拳で戦っていた。
しかし、ハーティは加減しているつもりでも発動している『ブースト』はかなりの効力であったので、その蹴りの威力は異常であった。
しかも彼女は完全な黒髪で、本来ならば魔導の行使はからきしのはずである。
マクスウェルが抱いていた、『ちょっと恋愛に鈍感で、普段見せる明るさの中で偶に見せる儚さがあるハーティ像』が打ち壊されようとしていた。
「あ、あとでユナの件も纏めて説明してもらうからな!」
そう言いながらマクスウェルは眼前のアンデッドを斬り伏せていた。
イイイィン。
「せいっ!」
ユナは神剣を構えてアンデッド数体に横薙ぎで斬りかかる。
シュパァン!
「グギェアアア!」
そして、後ろの闘技場の壁ごと真っ二つになったそれらは派手に崩れ落ちていった。
「はぁはぁ、さすがはハーティ様の誂えた神剣・・凄まじい斬れ味です・・もうすぐここは片付きそうですね」
そう言いながら、リリスはもう何個目になるかわからない魔導結晶をポーチから取り出した。
ちなみに属性のある魔導によるマナの消費量は、その術の規模と術者の属性ごとの素質に左右される。
リリスは光魔導の素質が高いので、普通の人間より少ないマナで光魔導が発動できる。
それでも浄化魔導を連射するとマナが枯渇してしまうので、ひとまずは魔導結晶からマナを取り出して浄化魔導を発動していた。
魔導はその詠唱術式を唱えるかスクロールがあれば誰でも発動できるが、光魔導の素質がなければ、市販の魔導結晶が有するマナでは初級治癒魔導を一回発動するのがせいぜいである。
その点、リリスであれば同じ量のマナでもかなりの回数で魔導を発動できるが、それでもあまりに多い敵の数に手持ちの魔導結晶も少なくなってきていた。
「はぁはぁ、これで最後です!『ホーリーライト』!」
「グガァァァォア!」
リリスの何度目になるかわからない『ホーリーライト』により、どうにか闘技場のアンデッドを全滅させることが出来た。
「ようやくここも片付いたわね」
ハーティの言葉に皆が息をついたとき・・・。
バァン!
「で、殿下!大変です!」
闘技場入り口の扉を勢いよく開いて衛兵が駆け込んできた。
「何事だ!?」
その衛兵のただならない様子にマクスウェルが問い詰める。
「お、王都の至る所でアンデッドが現れて、王都民達を襲っています!」
「襲われた人もアンデッドになってしまい、王都はパニックです!」
「なんだって!?」
そこでマクスウェルはふと気になったことを衛兵に尋ねた。
「国王陛下や王族達はどうなっている!?無事なのか!?」
「陛下や王妃、主要な大臣の皆様は、本日白銀の神殿で行われる予定の大規模ミサに出席する予定でしたのでそちらに集まっていらっしゃいまして、今はそこで多数の上級神官達が護りを固めています」
「そういえばそうであったな・・私と聖女様は騒ぎを察知してここにやってきたが・・であれば、きっとハーティの父君も無事だろうな」
「ええ・・幸いですね」
ハーティとマクスウェルは、ひとまず肉親や身内の無事を知って安堵した。
「ですが・・」
そういうと衛兵は顔を曇らせた。
「どうした?」
「何故かはわかりませんが、『デビッド殿下』と見られる人物が『飛翔』らしき魔道で白銀の神殿へ向かって飛んでいるのを、何人かの衛兵が目撃したようです」
「しかもその人物は地上にいる王都民を次々と攻撃してアンデッドに変えていっていますっ!」
「どんどん増えるアンデッドにもう対処もしきれない状態なのに、我が国の心の拠り所である白銀の神殿までアンデッドが攻め込んできたら・・我が国はもう・・」
そう言いながら衛兵は泣き崩れた。
「そんな!?きっと白銀の神殿には、今ミサの為に数万人の信者が集まっているはずです!」
「王族も揃っているのでしたら、事は一刻を争います!」
そう言いながら、リリスは顔を青ざめさせた。
そして、その言葉を聞いてハーティは何かを決意するように、力強く拳を握りしめた。
「・・・行きましょう、白銀の神殿へ。『イラ』を止めるのよ!」
「ハーティ、何を言っている!確かに一大事だが、私たちがいって邪神をどうにかできるものじゃないぞ!」
ハーティの言葉をあまりに無謀と感じたのか、マクスウェルが強い口調でハーティに言い寄った。
「・・大丈夫よ。わたしに考えがあるから。お願いマクスウェル。私を信じて?」
「殿下、聖女である私も向います。私の光の魔導であれば、邪神への有効打になりえるやもしれません」
「殿下、私も戦います。みんなで邪神の企みを阻止しましょう!デビッド殿下も救わないといけません」
「・・・ハーティ、みんな・・・」
「そうだな、ハーティ。君は私の妃になるんだ、私はハーティのことを信じよう!」
「もうすぐ、君との結婚式も行う予定だったんだ。その為にも、必ず王都を取り戻そう!」
そう言いながら、マクスウェルはハーティの手を取った。
「え・・ええ」
しかし、それを聞いたハーティは表情を曇らせた。
「・・さあみんな、行きましょう。白銀の神殿へ!」
そのハーティの声を聞いて、皆が頷いた。
(・・ごめんなさい、マクスウェル・・)
そして、今から自分がやろうとしていることを憂いて、ハーティは心の中でマクスウェルに謝罪した。
0
あなたにおすすめの小説
転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!
カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地!
恋に仕事に事件に忙しい!
カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる