転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

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第二章 魔導帝国オルテアガ編

横取り冒険者

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 冒険者ギルドを出たハーティは、早速シエラから貰った地図を手にしながら『暁の奇跡亭』に向けて路地を歩いていた。

 そして、冒険者ギルドの建物を出てから最初の角を曲がって、人通りの少ない路地へと入っていった。

「うーん・・・ここら辺は入り組んでいて道がわかり難いわね・・・」

 その時地図を見ながら歩いていたハーティは、前方を全く見ていなかった。

 ドン・・!

 その為、進んでいた路地の先に人がいることに気がつかずに、そのまま正面からぶつかってしまったのであった。

「ああ、すみません・・前を見ていなくて・・・」

「ああ、いいってことよ。俺たちはお前をここでんだからな」

 そう言いながら、ハーティがぶつかった男はニタリと笑った。

 その男は身長百八十センチはあろうかというガタイの良い、屈強なそうな男であった。

 男の見た目の雰囲気は冒険者のようであったが、決して身なりは上品そうではなかった。

「はあ・・何かご用ですか?」

 ハーティは男の話にきょとんとしながら首を傾げていた。

「マックス、こりゃとんでもない別嬪じゃねえか!大当たりだぜ」

 そう言いながら、次は魔導士のような身なりの優男がハーティの背後からやってきた。

「グフッ、たまらないんだな・・じゅるり」

 更には、バトルアックスを持った巨漢の男が舌を舐めずりながらハーティに近寄ってきた。

 シャキン・・・・。

 そして、『マックス』と言われた男が腰に携帯した剣を鞘から引き抜きながら近づいてきた。

「嬢ちゃん、どういうカラクリかは知らねえけど随分儲けたみたいじゃねえか」

「さっきお前さんがぞろぞろと引き連れていた奴ら・・『煉獄盗賊団』の一味だろ」

「実は俺たちもあの盗賊団をずっと狙っていた冒険者でなあ、だからこそ解せないんだよなぁ」

「嬢ちゃんはどう見てもピカピカの新米冒険者じゃないか。しかもまともな武器や防具も装備してねぇ」

「どうやったって、あいつらをあんたらで捕まえるなんてことはできないはずなんだ」

「つまりは、お前はあいつらと『グル』なのか、なんらかの不正をして報奨金を騙し取ったってわけだ」

「俺たちはそういった『不正』を正して回っているってわけだ」

 ハーティを取り囲んだ三人はニヤニヤと笑っていた。

「俺たちがお前さんの『不正』を見た以上、見逃すわけにはいかねえってわけよ」

 そう言いながら、マックスは持っていた剣の腹でペチペチとハーティの太腿を叩いた。

 そして、魔導士の優男はスクロールを握りしめ、巨漢の男はバトルアックスを振り回していた。

「ただ、俺たちも『悪魔』じゃねえ。お前がきっちり俺たちの提示する条件を守るんだったら特別に見逃してやってもいいんだぜ」

「グフッ、そうそう・・俺たちは『二級冒険者』でここいらではそこそこ名が通っている冒険者なんだな・・お嬢ちゃん一人じゃ勝ち目は無いんだな・・大人しくいうことを聞いておいた方がいいんだな」

 巨漢の男はそう言いながらハアハアと息を荒げていた。

「そうそう、今回お前さんが貰った金貨を出しな。そのうちの九割が口止め料として俺たちの取り分になるってことさ。全部取るわけじゃないんだから『良心的』だろう?」

「・・その代わり、『残りの一割』はお前さんの体で払って貰えばいいさ・・そうだな・・今晩三人に奉仕をするって感じでどうだ・・・悪く無いだろう?」

 そう言いながら、魔導士の男は下衆な笑みを浮かべていた。

「・・・・うーん・・つまりは『脅迫して報酬を横取りする』ってことですよね?」

 しかし、ハーティは三人の言葉を気にも留めずにいた。

「てめぇ・・素直に言うことを聞いたほうがいいぜ。『二級冒険者』三人相手に丸腰の新米冒険者如きが敵うわけねえだろ。このまま三人がかりで、有り金全部お勉強代で頂いてもいいんだぜ!」

 マックスはハーティの態度を見ると怒りを露わにして、更に脅迫を加えながら剣先でハーティのスカートを捲ろうとした。

 ギギギギギギ・・・・。

「なに!?動かない!?」

 しかし、ハーティはマックスにスカートを捲られる前に剣先を指先二本で摘んで止めた。

「お前・・一体なにをしたんだ!!!」

 マックスはハーティにつままれた剣を全く動かせないことに驚きを隠せないようであった。

「おいーマックス・・なにをしているんだな」

「くっ!この女!なんて馬鹿力だ!剣がまったく動かねえ!!!」

「ちなみに、冒険者がほかの冒険者の報酬を横取りするのは『悪いこと』ですよね?」

 そう言いながら、ハーティは微笑んだ。

 しかし、その瞳はまったく笑っていなかった。

「あと、『乙女のスカート』を捲ろうとするなんて、いけませんよ」

 ハーティは子供を嗜めるように指先を立てながら『めっ!』としていた。

「てめえ!調子に乗るんじゃねえ!」

 そう言いながら、魔導士はスクロールから『拘束バインド』の魔導を発動した。

 『拘束バインド』の魔導は、光の輪を対象の手足に飛ばして一時的に動きを封じる魔導である。

 魔導士の男から放たれた光の輪はハーティの両手足に真っ直ぐ飛んでいき、ハーティの手足を拘束した。

「はん、大人しくしてりゃもっと優しく可愛がってやったっていうの・・・」

 バキーン!!

「にぃぃぃぃぃ!?」

 しかし、その光の輪はハーティの動きを封じることは無く、ハーティが体を動かすと音を立てながら消滅した。

「いい大人の男がよってたかって私みたいな女の子に『脅迫』なんてしたらいけませんよ」

 そう言うと、ハーティはつまんでいた剣をそのまま引っ張って奪うとマックスに向かって投擲した。

 ドガァァァァン!

 ハーティが投擲した剣はマックスの頭部の真横を通り抜けて、後ろの石畳を破壊しながら突き刺さった。

「大人しくするんだなあぁぁぁぁ!」

 それを見て、いよいよ我慢がならなくなった巨漢の男が、バトルアックスをハーティの脳天目掛けて振り下ろした。

「馬鹿!よせ!殺しはまずい!」

 それを見たマックスの制止も虚しく、既に凶刃はハーティの脳天に迫っていた。

「・・・・・」

 しかし、それを目の当たりにしたハーティは特に何かをするわけでも無く棒立ちのままであった。

 バァァァァァン!

 いよいよ凶刃はハーティの頭頂部に命中し、そのあまりにも強い衝撃により、それは虚しくも凄まじい音を立てながら木っ端微塵に砕けた。

 ・・・・。

 ・・・・・。

 ・・・・・・。



 バトルアックスの方が、である。

「は・・・え??」

 因みに、ハーティは勝ち誇ったように仁王立ちしていた。

 もちろん体は無傷である。

 その光景に三人はぽかんと大口を開けて呆けていた。

「さ・・て・・と」

 ハーティはそんな三人に向かって笑顔を向けながら歩み寄っていく。

「ひ・・・ひい!」

「ば・・化物なんだな・・」

「この女、やべぇ!」

 微笑みながら近づいていくハーティを見た三人は、顔を青ざめさせながら後ずさった。

「か弱い乙女に向かって『化物』呼ばわりはひどく無いですか!?」

 ぷんぷんといった感じに怒ったハーティを見た三人はさらに顔を青白くしてハーティの前で土下座した。

「この通りです!もうこんなことは二度としません!」

「悔い改めてまじめに冒険者をやりますんで許してほしいんだな」

「い、命だけはお助けを!」

 そんな惨めな三人を見たハーティはやれやれといった感じで眺めていた。

「・・・相手が私でよかったですね、こんなことしていたらいつかは破滅しますよ?」

「・・今回は実害がないからいいですけど、本当にこんなこと二度としないでくださいね?」

「へ、へい!もちろんです!」

 そう言いながらマックスは額を地面に擦り付けた。

「こんなこと、ギルドにバレたら大変なことになるんじゃないんですか?」

「・・冒険者の資格が剥奪されるんだな・・で、二度と冒険者にはなれないんだな・・」

「・・・もう私以外の人にもこんなことしないと約束してもらえるなら、今回のことは無かったことにします」

「でも・・もしまた同じようなことをしているのを目撃したら・・どうなるかわかってますね?」

 ハーティは三人に対して微笑みを浮かべながら念押しをした。

「も・・もちろんですとも!誓って二度とこんなことはしません!」

「それならいいですよ。私は『ハーティ』て言います。おっしゃる通り先程登録したばかりの新米冒険者です。こんな出会いでしたがよろしくお願いします、先輩」

 ハーティの言葉を聞いた三人は漸くほっとしながら立ち上がった。

「よ・・よろしくお願いします。俺たちはさっきも言った通り二級冒険者の『ブラックスミス』っていうパーティを組んでます」

「俺が剣士のマックス、このデカいのが重戦士のグロック、そしてこいつが魔導士のリックスって言います。よろしくお願いします」

 マックスがパーティメンバーを紹介すると、三人は一斉に頭を下げた。

「ギ、ギルドで会ったときはお・・お手柔らかにおねがいしますね!」

 そう言う魔導士のリックスは大量の冷や汗をかいていた。

「ええ、よろしくお願いしますね」

「あと、あなた達の武器を壊してしまって申し訳ありません」

 そう言いながら、ハーティは頭を下げた。

「え、いやっいいんですよ、ち・・ちょうど買い換えようとしていたときですから・・なあグロック!」

「え、俺のアックスは先週買い替え・・」

(ばっきゃろう!『ハーティ様』にブッ殺されたいのかお前は!)

 マックスは慌ててグロックに耳打ちをした。

「そ・・そうなんだな・・ちょうどよかったんだな!はは」

 グロックはマックスの耳打ちを聞くと、顔色を悪くさせながら引きつった笑みを浮かべていた。

「?そうですか・・ならよかったんですが・・」

「そうですよ!何にも気にしないでくださいよ!じ、じゃあ俺たちはこれで失礼しますね!ほらいくぞ!」

「あ、ああ!」

「おう!」

 そう言うと、三人は脱兎の如く逃げ出していった。

「あ・・はい」

 一人残されたハーティは路地で佇んでいた。

「あ、どうせなら宿までの道案内を頼めばよかったわ・・・」

 ハーティはため息をこぼしながら、宿に向けて再び歩き出した。



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