転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

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第二章 魔導帝国オルテアガ編

初クエスト受注

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 装備を整えた翌日、ハーティは早速冒険者活動をスタートすべく、シエラ達に見送られながら冒険者ギルドへと向かった。

 ウィーン・・・。

 ハーティが自動扉をくぐって冒険者ギルドに入ると、ギルド内にいた他の冒険者達が一斉にハーティの方を向いた。

 朝一ともあって、ギルド内はかなりの人数の冒険者が居たのだが、そのほぼ全員から注目を浴びたのであった。

 ハーティ自身はその美貌から、生まれた時より注目されることに慣れていたので、気に留めることもなくすたすたと受付へと向かった。

 そして、空いているカウンターはどこかとハーティが見渡していると、冒険者登録の時にハーティを対応した受付嬢のリーシャが声をかけてきた。

「ハーティさん!どうぞこちらへ!」

「あ、あなたは昨日の・・・」

「はい、『リーシャ』と言います。ギルドマスターより新米冒険者であるハーティさんの専属サポートを言付かったので、これから宜しくお願いしますね」

「へえ、そんなシステムがあるんですね。それは助かります。こちらこそ宜しくお願いします」

 リーシャは何気なくハーティの腰に携えてある『ガンブレード』を見て驚いた表情になった。

「ハーティさん、武器を購入したんですね!それにしても・・一体いくらしたんですかそれ・・・初心者が持つ装備ではないですよ?」

「実は・・・折角冒険者になるならと気合いを入れすぎちゃって・・昨日の報奨金と手持ちのお金も全部つぎ込んだんですよね・・」

 本当はシグルドの剣を錬金した対価にタダで譲ってもらったのだが、それを言うわけにもいかないのでハーティは適当に誤魔化しておくことにした。

「いや・・気合いを入れるってレベルじゃないですよ・・しかも『ガンブレード』ってマニアックな・・しかもハーティさん、魔導士ですよね?」

 確かに高位の魔導士であれば、基本的には後方で攻撃魔導を発動して戦うので、高価な剣など必要ないはずである。

 まして魔導など、わざわざ高価な『魔導莢カードリッジ』を使い捨てるガンブレードを使わなくても、市販のスクロールを使えばいいのである。

 つまりは、リーシャの指摘は尤もな話であった。

「実は、私剣術や体術も使えるんです。むしろそっちの方が得意っていうか・・(手加減が)」

「ええ!?」

「本当にハーティさん何者なんですか・・・・」

 ハーティの話を聞いてリーシャが驚愕の表情をしていた。

「・・・まあ、とにかく何かいいクエストないですか?」

「え?は・・はい」

 リーシャは気を取り直してカウンターの上に依頼票を並べ始めた。

「えー、ひとまず四級冒険者のハーティさんが受注できるクエストはこんな感じですね」

「えー・・どれどれ?」

 ハーティは目の前に何枚か並べられた依頼票を順番に確認した。

「うーん・・薬草採取と帝都付近のホーンウルフ討伐・・それに魔導結晶の採掘補助か・・」

(黒の魔導結晶の手掛かりを探るという意味では魔導結晶の採掘補助がいいのだけれど・・まずは新装備も試してみたいし、ホーンウルフ討伐にしようかしら)

 ハーティーは一思案の後.討伐依頼を受けることにした。

 ホーンウルフは狼タイプの一角魔獣で作物や人を襲う為非常に攻撃性が高い。

 ただ知能はさして高くなく、角や牙に気をつけて群れとの遭遇を避ければさして脅威となる魔獣ではない。

 その為、ホーンウルフ討伐は初心者冒険者の定番クエストになっていた。

「じゃあホーンウルフ討伐にします」

「はい、わかりました。では依頼内容の説明をします」

「このクエストは常時依頼クエストで、達成期限はありません。ギルドで完了届をするまで有効です」

「ホーンウルフの討伐証明は『角』です。ギルドが『角』一つを銅貨四枚で買い取ります」

(一匹でシエラちゃんの宿一泊分、二匹でちょっと贅沢な夕食分って感じね)

「帝都周辺ならどこで狩ってもいいですが、帝都の東にある草原地帯に比較的分布が多いのでおすすめです」

「ありがとうございます!早速行ってみますね!」

「はい、お気をつけて!」

 受付を終えたハーティーが早速クエストに向かおうと踵を返して出口に向かった。

 すると、ハーティーの進路を突然数人の男が塞いだ。

「??」

 ハーティーが首を傾げると、男の一人がニヤニヤしながら話し出した。

「よお、嬢ちゃん。新米さんか?そんなピカピカな魔導銀ミスリルの装備でお出かけかい?」

「見たところ『お金持ちお嬢様の好奇心で冒険者デビュー』って感じだが、世の中そんなに甘くはないぜ」

「「ヒャヒャヒャ」」

 その男の言葉を聞いてフロアにいた他の冒険者たちが笑い出した。

 どうやらハーティーのやりとりを見ていた他の冒険者たちはハーティーの見た目から彼女の事を馬鹿にしているようであった。

「なんなら俺たちのパーティーが面倒見てやろうか?いろいろ優しく教えてやるぜええ」

 そう言いながら男は下卑た笑いを浮かべていた。

 その男がロクなことを考えていないのは誰が見ても明らかであった。

 大方高価な装備と独り身の女の子ということでパーティーに誘って金と体を搾取しようと考えているのが見え見えであった。

「あ、いいです。間に合ってますし一人で十分です」

 しかしハーティーは相手にするのも面倒なのでその男を適当にあしらった。

 すると、男は顔を真っ赤にしながら怒りをあらわにした。

「てめえ、ただのボンボンの癖に調子に乗ってるんじゃねえぞ!」

 そして怒りのまま男がハーティーに狂拳をぶつけようと振りかぶったその時・・。

「調子に乗ってるのはテメェだ馬鹿たれがぁぁぁ!」
  
 バキィ!

「ふんげぁぁぁ!!」

 突如現れた体格のいい男がハーティーに絡んだ男を殴ると、殴られた男は転げ倒れていった。

「てめぇなにしやが・・・マックスさん!」

 殴られた男は立ち上がって怒りのまま反撃に出ようとしたが、目の前の男を見て固まった。

「馬鹿野郎!ハーティー様に何てことしやがる!みんな纏めてぶっ殺されてぇのか!?」

「あ、マックスさん。それにグロックさん、リックスさんもおはようございます。今日は揃ってクエストですか?」

ハーティーは目の前でぶっ飛ばされた男をスルーして呑気に挨拶をした。

「そ・・そうなんですよ!ハハハ・・偶然ですね!実はコイツ俺の後輩なんですよ!ほんと失礼しました。コイツには後できっちりヤキ入れとくんで、この通り!勘弁してください!」

 そういうとマックスは素早く頭を下げた。

「ファッ!?なに言ってるんすかマックスさん、こんな新米小娘ぼうけンゲアアアァァァァ!!」

 その男は言葉を全て出し切る前に再びマックスに殴り飛ばされた。

「あははは!ど、どうぞハーティー様!こんな阿呆はほっといてクエストへ行ってきてください!」

 マックスの言葉に合わせて『ブラックスミス』の一団はこくこくと頭を縦に振りながら出口の方を指差した。

「は・・・はぁ・・ありがとうございます?」 

 ハーティーは首を傾げながらもマックスの言葉に従ってギルドを後にした。
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