転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

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第二章 魔導帝国オルテアガ編

進級試験2

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 双方が試合開始と共に飛び出すと、まずはマックスとハーティが同時に木剣を振りかぶった。

「はぁぁぁぁぁぁ!」

「えーーい!」

 バァァァン!

 たとえ木剣であったとしても『二級冒険者』であるマックスの太刀筋は非常に鋭く、ハーティに命中すると同時に防御魔導が受け止めた音が凄まじい音量で響き渡った。

 そしてハーティの方はというと・・・。

「あ・・・」

 ハーティが握っていた木剣は柄の部分を残して炭化してしまっていた。

 ハーティはその見た目に反して、有り余るマナで『ブースト』を発動すると、たとえ魔導銀ミスリルの剣にマナを込めて強度を上げながら振るったとしても、刀剣本体が持たない程の剛腕の持ち主ある。

 どう考えてもハーティの攻撃で木剣ごときが耐えられるはずがなかった。

 それにより、お互いの剣が鍔迫り合いになることはなく、マックスの斬撃が一方的にハーティへ到達したのだ。

 通常であれば、マックスの剛腕に放たれた斬撃をまともに受けることにより、ハーティの腕輪から発動している中級防御魔導が解除されてしまうはずであったが、そもそもハーティの防御魔導は髪飾りから常時発動している『上級防御魔導』が優先される為にマックスの攻撃ではびくともしなかった。

「ひ・・・・ひぃぃぃ!」

 変わってマックスの方は炭化したハーティの木剣を見て、それが彼女の剛腕に耐えられなかったのだとすぐに悟って恐怖に染まっていた。

「はぁ・・・やっぱりいつもの素手これになるのね・・」

 そう言いながら、ハーティは手に持っていたずたぼろの木剣を放り投げて両拳を構えた。

 続いてマックスとハーティが剣を交えていた間に長い詠唱キャストを終えたリックスが、不意打ちを与えるべく手先をハーティに向けて攻撃魔導を放った。

「・・・食らえ!『インフェルノ』!!!」

「馬鹿な!それは上級火炎魔導ではないですか!!ハーティちゃんが黒こげになってしまう!リックスさん!やめるんだ!」

 魔導の名前を聞いて驚いたクランがリックスを止めようと叫んだが、既に発動している魔導を止めることは何人たりとも不可能である。

 クランの叫びも空しく、リックスが一撃に全てのマナをかけて放った『インフェルノ』の火炎は、まっすぐハーティの方へと向かった。

 ドーガァン!ゴゴゴゴゴゴウウゥゥゥゥゥゥ!

 そして、ハーティは棒立ちのままそれをまともに食らうこととなった。

 ハーティに命中した火炎は着弾の瞬間に大爆発を起こし、立ち上がった直径十メートルにもなる火柱は数十メートル上空まで立ち上った。

 そして、その熱は戦闘に備えて待避していたクランやリーシャにまで伝わる程であった。

「ああああ、なんてこと・・!ハーティさんが!!」

 上級火炎魔導をまともに食らってしまえば、中級防御魔導程度ではひとたまりもない。

 ギルド職員の二人はハーティが灰も残らない程燃え尽きてしまったと想像してショックを受けていた。

「君たち!これはどういうことだ!いくらなんでもこれは明らかに相手に対する殺意があったと判断されるぞ!!」

 いよいよ怒り狂ったクランがリックス達を責めたてる。

 しかし、リックスは無表情のまま立ち上がる火炎を眺めていた。

「いや、ハーティ様が相手であればこの程度の魔導ではおそらくまったく効果はないでしょう・・・」

 リックスは確かな確信をもって言葉を紡いでいた。

「なにを馬鹿な・・・・」

 シュゥゥゥゥゥゥ・・・。

 やがて魔導の発動が終わり、高熱にさらされてガラス化した石畳から白煙が立ち上る。

 その白煙も風で流れて消滅すると、そこには先ほどとかわらないポーズのまま無傷で立つハーティがいた。

「やっぱり、この程度の魔導であれば十分に防御できるみたいね!!」

 ハーティは魔導を食らったことを感じさせない表情で独り言を言っていた。

 全力で放ったマックスの斬撃も、リックスが放った全身全霊の魔導もハーティに毛ほどのダメージすら与えられない。

 それに絶望した『ブラックスミス』のパーティメンバーが項垂れた。

「では・・・次は私の番ですね?」

 そのハーティが発した言葉に、三人は一瞬で顔色を悪くした。

「ひぃぃぃぃ!死にたくないんだな!」

 恐怖に耐え切れなかったグロックが真っ先に木剣を捨ててハーティから距離を取る為に走り出した。

 ドォウン!!!

 そんな情けない背中を見て真っ先にグロックをターゲットに選んだハーティは、地面を蹴りながら飛び出して彼との距離を詰めた。

「てぇい!」

 ハーティの踏込に耐えられなかった石畳がめくり上がり、常人では視認できない速度でグロックに迫ったハーティはできるだけ優しく力を抜いてパンチを放った。

 そうでもしないとグロックが挽肉になる可能性が高かったからだ。

 ドガァァァァァン!

 しかし、それでもハーティの拳が命中した瞬間にグロックの防御魔導はシャボン玉のように消滅し、体をくの字に曲げながら訓練場の壁まで吹き飛ばされた。

 バァァァァァン!

 そして肉弾頭となったグロックは石積みの塀を破壊しながらようやく止まることができたのであった。

 シュウウウウウウ・・・。

 土煙の中には瓦礫に埋もれ、口から泡をはいて気を失ったグロックが横たわっていた。

「「「・・・・・・」」」

 その光景を目の当たりにしたハーティ以外の人たちは、まるで時が止まったかのように硬直していた。

「・・・・結構手加減したつもりなんだけどなぁ・・・グロックさん・・生きてますよね?」

「き・・・・救護班を呼べ!!」

 体中をありえない方向に曲げて倒れているグロックを見て絶望的だと思いながらもクランは指示を出した。

「あ、いえ大丈夫です。こうなったのは私の責任ですし、何とかします」

 ドゥン!

 そう言うと、ハーティは再び地面にクレーターを作りながらグロックへと飛び寄った。

「ごにょごにょにょの・・・えーいい!『ヒール』!」

 そして詠唱しているをしながらグロックに上級治癒魔導を発動した。

 ちなみに『ヒール』は初級治癒魔導なので完全にハーティの嘘である。

 パァァァ!

 そして白銀色の光がグロックを包み込むと、先ほどまで無残な姿を晒していたグロックの傷が瞬く間に回復した。

「・・・は!?俺は一体なにをしていたんだな・・・は・・ひぃぃハーティ様!御慈悲を!お助けを!!!」

 先ほどまでの悪夢を思い出してグロックは大きな体を丸めて震えていた。

「「・・・・・」」

 そして、再び訓練施設内は静寂に包みこまれた。

「あ・・あの・・ハーティさんってですよね?」

「え・・あはい、一応・・あ、攻撃魔導も披露しないといけません??」

 それを聞いた全員がサァーと顔を青ざめさせた。

 何せあれほどの大怪我を一瞬で完全回復させる程の治癒魔法の使い手である。

 もはやハーティがただの『ヒール』を発動したなど誰一人信じていないし、そんな魔導士が攻撃魔導など放った時にはそこら一帯が大惨事になるのが目に見えていた。

「や・・やめろぉぉぉ!滅多な事を言うんじゃない!」

 マックスは不穏なことを言うリーシャに必死な表情で取り縋った。

「もう試合終了でいいだろ!クランさんよぉ!こんなの命がいくつあっても足りやしねぇよ!!」

「わ・・わかりました、ハーティちゃんが『変異体』を討伐したことは十分にわかりました!試験は『合格』でいいでしょう!すぐに『二級冒険者』に進級する手続きを取りましょう!!」

「あ・・はい。ありがとうございます」

「『ブラックスミス』のみなさんもありがとうございました。あなた達がおっしゃる意味が。今回の報酬は割増しで出しましょう!」

「・・そ・・それはありがたい」

「あとで追って報酬を出します。受付ロビーのカウンターで受け取ってください」

「わかった。そ・・そしたらおれたちはもう行くぜ!オラ!みんないくぞ!!」

 三人は脱兎の如く会場を後にした。

「・・・ではハーティちゃん。さっそく『二級冒険者』の進級手続きと前回のクエスト報酬の引き渡しを行うので、もう一度ギルドの応接室に同行して欲しい」

「・・わかりました」

 そしてハーティは気まずそうに口を開いた。

「あのー・・・ここはでいいんでしょうか?」

 そう言ってハーティが試験会場を見渡すと、会場の彼方此方あちこちにクレーターが出来ており、グロックが衝突した石積みの塀も無残に崩れていた。

 それを見てクランが眉間に手をやった。

「あー・・これはいいんだよ。試験を提案したのはギルドだしね・・修繕はこちらでやっておくから」

「よかった・・・」

 弁償を恐れていたハーティはクランの言葉を聞いて安堵した。

 結局その後ハーティは今のギルドカードと引き換えに金で出来た『二級冒険者』のギルドカードを受け取った。

 因みに『変異体』は一頭あたり金貨千枚の報酬となり、『ホーンウルフ』三百十二頭分の報酬と合わせて金貨三千十二枚以上の報酬を得たハーティは、たった一度のクエストで大金持ちになってしまったのであった。
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