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第二章 魔導帝国オルテアガ編
帝国の思惑 〜クラリス視点〜
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ハーティ達がシエラの捜索へ向かおうとしていた頃、クラリスはパイロットスーツを身につけながらレゾニア男爵邸の敷地内を歩いていた。
そして、既に本来の役割を果たさず人工女神の実験場と化した中庭に執事を連れて立っていた。
その執事が恭しく手渡してきた神白銀の短剣を腰に装着すると、クラリスは両手をパンと叩いた。
「よし、今日はあれの実験よ!」
クラリスがそう意気込んでいた時、邸内が慌ただしい雰囲気に包まれているのを感じた。
「うん?セバス。なにかあったの?」
「いえ、私は存じ上げませんが・・・」
セバスはニアールの祖父の代からレゾニア男爵家に仕える執事であり、現在は執事長を務める。
クラリスの父親は世界中に魔導具を輸出する『レゾニア商会』を運営しており、仕事柄邸にはほとんど居ない為、セバスは基本的に邸に居るクラリスの側に付いていた。
「・・お待ち下さい!帝国の衛兵だとしても正式なお触れも無しに貴族の敷地内に入るのは・・きゃあ!」
すると、何やら必死に訴えるメイドを跳ね除けて、十人以上の武装した衛兵が中庭に雪崩れ込んできた。
「いたぞ!クラリス博士だ!」
その衛兵のうち一人がクラリスを指差すと、素早い動きでクラリスとセバスを包囲した。
「・・・帝国の衛兵が家に何の用かしら?」
クラリスは衛兵に囲まれながらも毅然とした態度を崩さなかった。
「クラリス博士。貴方が開発している魔導機甲について検分と説明を求める旨の出頭命令が魔導省から出ているのにも関わらず、それに従わないのは何故か!」
「・・そんなの、魔導省に引き渡したが最後、『プラタナ』が戻ってこないのが目に見えているからじゃない」
「それに『プラタナ』については機体と開発資材一式を正式に帝国から買い取ったのよ?家の所有財産にいくら魔導省とて、とやかく言われる筋合いはないわ」
「だが、ニアール博士の報告を聞いた皇帝陛下も貴方の魔導機甲は個人で所有するにはあまりに強大である故、臣民として当該魔導機甲を速やかに帝国へ献上すべしとお達しである!」
「・・・ふぅん?それが彼女のやり方なのね。正直そこまでする子じゃないと思っていたけれど」
「兎に角、クラリス・フォン・レゾ二ア男爵令嬢においては速やかに保有する魔導機甲を帝国魔導省へ引き渡すこと。これは皇帝陛下直々による勅命である」
(どうしようかしら・・『プラタナ』は平和的利用をするというハーティとの約束がある。だから帝国に引き渡すわけにはいかない)
(どの道残り僅かな稼働時間を過ぎれば『プラタナ』は駆体が劣化して使い物にならないけど、『プラティウム・マギフォーミュラ・マナ・ジェネレーター』は流用される可能性がある・・)
(だけど、流石に皇帝陛下の勅命を無視すればレゾニア家に迷惑がかかる・・か)
(仕方ないけど上手く誤魔化して時間を稼いでからハーティにお願いして、発導機の一部を魔導銀に戻してもらって引き渡すしかないわね・・そうすればいずれその部分の劣化によって発導機が故障して使えなくなるはず)
「クラリス博士。何か邪なことを考えているのか。余計なことは考えない方がいいぞ。皇帝陛下の勅命に従わないということがどういうことか、聡明な貴方ならわかるな?」
「それについてだけど、こちらとしても準備・・」
クラリスが企みを実行する為に『プラタナ』引き渡しまでの時間稼ぎをしようとしたその時・・。
ゴゥゥゥゥン、ゴゥゥゥゥン。
聞き慣れない音が中庭上空で響き渡り、中庭に居合わせた全員が空を仰いだ。
すると、そこには頭部を人工物に挿げ替えられて、胸元に黒い大型の結晶を埋め込まれたゴーレム数十体が数百メートル程度の高度で編隊を組みながら飛んでいた。
そのゴーレムは一様にまるで背中に付いた糸で上から吊られたように両手脚を垂らしたような姿勢で浮いており、ゆっくりと帝都中心にある王宮の方に向かっているように見えた。
そのゴーレム達が浮いている姿は、誰が見ても不気味なものであった。
「おい、ニアール博士の『人造ゴーレム』の実験をするなんて話聞いていたか?」
「いや、そんな話は聞いていないぞ?何よりあれだけ沢山のゴーレムが帝都市街地で動いて大丈夫なのか!?」
衛兵達が上空のゴーレムに狼狽ていると、クラリスのピアスから声が聞こえてきた。
『クラリス、聞こえる?』
それはもう一つのピアスの持ち主であるハーティからであった。
その言葉に応答しようとした瞬間・・。
キィィィン!ドドーン!
クラリスの耳に上空から凄まじい衝撃波音が入ってきた。
クラリスが再び空を見上げると、そこには一筋の飛行機雲が描かれていた。
『おーい!クラリス!』
クラリスはその上空に描かれた飛行機雲を眺めていた為、ハーティの通信に応答し損ねていた。
「なんだ!?なんだこの音は!?クラリス博士、あなたの仕業か!?」
「あたしじゃないわよ!」
(あれは『空気の壁』を破る音・・あれほどの速度で飛行することが出来るのは、あたしの『プラタナ』かハーティくらいのはず・・もしかしてニアールの魔導機甲なの?・・いずれにしても何かとてつもなく嫌な予感がするわ・・・)
「クラリスお嬢様」
その時、セバスがクラリスの耳元に小さな声で語りかけた。
「我々『レゾニア男爵家』には先代のプラタナ様から受け継いだ魔導具があります。例え帝国から追われる身になっても何処へでも移り住んでやっていけるでしょう。イルティア王国へ亡命するのも一つの手です」
「我々『レゾニア男爵家』は先代のプラタナ様の時代から『魔導具の開発については人々の役に立つ為に行うべし』という信念があります」
「ですから、魔導具というものは決して人殺しの道具にしてはいけないのです」
「ですから、クラリスお嬢様が『プラタナ様の遺志』を貫くというのであれば、旦那様を筆頭とした『レゾニア男爵家』は決してクラリスお嬢様の考えを間違いだとは思いません」
「どうか選択をお間違えなきよう・・」
「セバス・・」
セバスの深い皺を寄せ集めたような温かい微笑みにクラリスは思わず瞳を潤ませた。
「セバス・・帝都に何やら危機が迫っている気がするわ。あたしは行くから、邸のことは頼んだわよ」
「・・・かしこまりました。クラリスお嬢様・・御武運をお祈り申し上げます」
セバスの言葉を聞いて、クラリスは静かに頷いた。
ザッ!
そして、クラリスは静かに一歩前へ出た。
「なっ!何をするつもりだ!?」
クラリスの動きを不審に思った衛兵が一斉に彼女へと槍を向ける。
(まあ、こいつの丁度いいテストになるわ)
そう言いながらクラリスは自分のツインテールを纏めた髪飾りに意識を集中した。
この髪飾りは『プラタナ』を効率的に運搬する為にハーティと開発したものである。
神白銀で出来たそれは片一方に『プラタナ』の発導機と同じ『エーテル・マナ変換』の術式が刻まれており、もう片方には『収納魔導』の術式が刻まれている。
言わば小型の発導機といえるそれから生み出されたマナが二つの髪飾りを繋いで後頭部に回された神白銀ケーブルを伝わって『収納魔導』の術式を発動している髪飾りへ供給されている。
これにより、クラリスの意思を介せずとも常に一定容量の『収納魔導』を発動できるのだ。
いくら小型とはいえ、『プラタナ』の発導機と同等の仕組みである髪飾りは収納魔導を発動するには十分なマナを生み出すことが出来た。
「おい、聞いているのか!かまわん、こうなったらクラリス博士を拘束せねば・・」
「セバス、離れて頂戴。危ないわよ」
「かしこまりました」
そう言うとセバスは老人とは思えない俊敏な動きでクラリスから距離を取った。
「あなた達も、踏み潰されたくなかったら離れなさい!」
「なんだと・・・」
衛兵達の言葉を無視して、クラリスはまるで貴族の令嬢が高慢な態度で自分の髪を払うようなポーズを取る。
「さあ、行くわよ!!出でよ!『プラタナ』!」
クラリスが声を出した瞬間、前方に大規模な白銀色に輝く円陣状の魔導式が浮かび上がる。
ズズズズ・・・・。
そしてその魔導式から一機の人工女神がゆっくりと押し出されていく。
「ひ、ひぃぃぃぃ!」
先ほどまで威勢のあった衛兵達は何もない空間から現れた謎の巨体に慌てて後退りして距離を取った。
やがて跪いた姿勢で全容を現した人工女神『プラタナ』の後部ハッチが開く。
クラリスは右腕のグローブをプラタナの後部ハッチに向けて、仕込まれた魔導具にマナを込める。
バッシュウ!
するとグローブからワイヤーに繋がった錘のような物が発射される。
そしてそれがハッチの際に当たるとピッタリと貼りついた。
すかさずクラリスが魔導具を操作してワイヤーを巻き取ると、彼女はプラタナのハッチへと引き寄せられてそのままの勢いでコクピットに乗り込んだ。
「人工女神『プラタナ』始動!」
ガシャン!
クラリスは掛け声と共に、始動用の短剣二本をシートのスロットルに挿し込む。
シュィィィン!
グググ・・・!
直後胸部の発導機が始動してゆっくりと『プラタナ』は立ち上がった。
「クラリス博士!貴方は何をしているのか分かっているのか!」
気を取り直して衛兵達が『プラタナ』を取り囲むが、たかが槍一本では既に始動した二十メートル近い大きさの人工女神にもはや為す術もなかった。
『悪いけどあたしはあのゴーレムを追うわ!話はそれからにしてくれる?』
『プラタナ』に搭載された拡声魔導によりコクピット内のクラリスの言葉がそのまま一帯に響き渡っていた。
「おい!クラリス博士待っ・・・」
キィィィン!ドゥン!
「ぐぁぁぁ!」
クラリスは衛兵の制止を無視して『プラタナ』を離陸させる。
その激しい風圧で衛兵達は後ろに倒れて尻餅をついた。
(ニアール・・・貴方は一体何を企んでいるの・・?)
帝都市街地に向けて飛ぶ『プラタナ』のコックピットの中でクラリスはニアールに思いを馳せた。
そして、既に本来の役割を果たさず人工女神の実験場と化した中庭に執事を連れて立っていた。
その執事が恭しく手渡してきた神白銀の短剣を腰に装着すると、クラリスは両手をパンと叩いた。
「よし、今日はあれの実験よ!」
クラリスがそう意気込んでいた時、邸内が慌ただしい雰囲気に包まれているのを感じた。
「うん?セバス。なにかあったの?」
「いえ、私は存じ上げませんが・・・」
セバスはニアールの祖父の代からレゾニア男爵家に仕える執事であり、現在は執事長を務める。
クラリスの父親は世界中に魔導具を輸出する『レゾニア商会』を運営しており、仕事柄邸にはほとんど居ない為、セバスは基本的に邸に居るクラリスの側に付いていた。
「・・お待ち下さい!帝国の衛兵だとしても正式なお触れも無しに貴族の敷地内に入るのは・・きゃあ!」
すると、何やら必死に訴えるメイドを跳ね除けて、十人以上の武装した衛兵が中庭に雪崩れ込んできた。
「いたぞ!クラリス博士だ!」
その衛兵のうち一人がクラリスを指差すと、素早い動きでクラリスとセバスを包囲した。
「・・・帝国の衛兵が家に何の用かしら?」
クラリスは衛兵に囲まれながらも毅然とした態度を崩さなかった。
「クラリス博士。貴方が開発している魔導機甲について検分と説明を求める旨の出頭命令が魔導省から出ているのにも関わらず、それに従わないのは何故か!」
「・・そんなの、魔導省に引き渡したが最後、『プラタナ』が戻ってこないのが目に見えているからじゃない」
「それに『プラタナ』については機体と開発資材一式を正式に帝国から買い取ったのよ?家の所有財産にいくら魔導省とて、とやかく言われる筋合いはないわ」
「だが、ニアール博士の報告を聞いた皇帝陛下も貴方の魔導機甲は個人で所有するにはあまりに強大である故、臣民として当該魔導機甲を速やかに帝国へ献上すべしとお達しである!」
「・・・ふぅん?それが彼女のやり方なのね。正直そこまでする子じゃないと思っていたけれど」
「兎に角、クラリス・フォン・レゾ二ア男爵令嬢においては速やかに保有する魔導機甲を帝国魔導省へ引き渡すこと。これは皇帝陛下直々による勅命である」
(どうしようかしら・・『プラタナ』は平和的利用をするというハーティとの約束がある。だから帝国に引き渡すわけにはいかない)
(どの道残り僅かな稼働時間を過ぎれば『プラタナ』は駆体が劣化して使い物にならないけど、『プラティウム・マギフォーミュラ・マナ・ジェネレーター』は流用される可能性がある・・)
(だけど、流石に皇帝陛下の勅命を無視すればレゾニア家に迷惑がかかる・・か)
(仕方ないけど上手く誤魔化して時間を稼いでからハーティにお願いして、発導機の一部を魔導銀に戻してもらって引き渡すしかないわね・・そうすればいずれその部分の劣化によって発導機が故障して使えなくなるはず)
「クラリス博士。何か邪なことを考えているのか。余計なことは考えない方がいいぞ。皇帝陛下の勅命に従わないということがどういうことか、聡明な貴方ならわかるな?」
「それについてだけど、こちらとしても準備・・」
クラリスが企みを実行する為に『プラタナ』引き渡しまでの時間稼ぎをしようとしたその時・・。
ゴゥゥゥゥン、ゴゥゥゥゥン。
聞き慣れない音が中庭上空で響き渡り、中庭に居合わせた全員が空を仰いだ。
すると、そこには頭部を人工物に挿げ替えられて、胸元に黒い大型の結晶を埋め込まれたゴーレム数十体が数百メートル程度の高度で編隊を組みながら飛んでいた。
そのゴーレムは一様にまるで背中に付いた糸で上から吊られたように両手脚を垂らしたような姿勢で浮いており、ゆっくりと帝都中心にある王宮の方に向かっているように見えた。
そのゴーレム達が浮いている姿は、誰が見ても不気味なものであった。
「おい、ニアール博士の『人造ゴーレム』の実験をするなんて話聞いていたか?」
「いや、そんな話は聞いていないぞ?何よりあれだけ沢山のゴーレムが帝都市街地で動いて大丈夫なのか!?」
衛兵達が上空のゴーレムに狼狽ていると、クラリスのピアスから声が聞こえてきた。
『クラリス、聞こえる?』
それはもう一つのピアスの持ち主であるハーティからであった。
その言葉に応答しようとした瞬間・・。
キィィィン!ドドーン!
クラリスの耳に上空から凄まじい衝撃波音が入ってきた。
クラリスが再び空を見上げると、そこには一筋の飛行機雲が描かれていた。
『おーい!クラリス!』
クラリスはその上空に描かれた飛行機雲を眺めていた為、ハーティの通信に応答し損ねていた。
「なんだ!?なんだこの音は!?クラリス博士、あなたの仕業か!?」
「あたしじゃないわよ!」
(あれは『空気の壁』を破る音・・あれほどの速度で飛行することが出来るのは、あたしの『プラタナ』かハーティくらいのはず・・もしかしてニアールの魔導機甲なの?・・いずれにしても何かとてつもなく嫌な予感がするわ・・・)
「クラリスお嬢様」
その時、セバスがクラリスの耳元に小さな声で語りかけた。
「我々『レゾニア男爵家』には先代のプラタナ様から受け継いだ魔導具があります。例え帝国から追われる身になっても何処へでも移り住んでやっていけるでしょう。イルティア王国へ亡命するのも一つの手です」
「我々『レゾニア男爵家』は先代のプラタナ様の時代から『魔導具の開発については人々の役に立つ為に行うべし』という信念があります」
「ですから、魔導具というものは決して人殺しの道具にしてはいけないのです」
「ですから、クラリスお嬢様が『プラタナ様の遺志』を貫くというのであれば、旦那様を筆頭とした『レゾニア男爵家』は決してクラリスお嬢様の考えを間違いだとは思いません」
「どうか選択をお間違えなきよう・・」
「セバス・・」
セバスの深い皺を寄せ集めたような温かい微笑みにクラリスは思わず瞳を潤ませた。
「セバス・・帝都に何やら危機が迫っている気がするわ。あたしは行くから、邸のことは頼んだわよ」
「・・・かしこまりました。クラリスお嬢様・・御武運をお祈り申し上げます」
セバスの言葉を聞いて、クラリスは静かに頷いた。
ザッ!
そして、クラリスは静かに一歩前へ出た。
「なっ!何をするつもりだ!?」
クラリスの動きを不審に思った衛兵が一斉に彼女へと槍を向ける。
(まあ、こいつの丁度いいテストになるわ)
そう言いながらクラリスは自分のツインテールを纏めた髪飾りに意識を集中した。
この髪飾りは『プラタナ』を効率的に運搬する為にハーティと開発したものである。
神白銀で出来たそれは片一方に『プラタナ』の発導機と同じ『エーテル・マナ変換』の術式が刻まれており、もう片方には『収納魔導』の術式が刻まれている。
言わば小型の発導機といえるそれから生み出されたマナが二つの髪飾りを繋いで後頭部に回された神白銀ケーブルを伝わって『収納魔導』の術式を発動している髪飾りへ供給されている。
これにより、クラリスの意思を介せずとも常に一定容量の『収納魔導』を発動できるのだ。
いくら小型とはいえ、『プラタナ』の発導機と同等の仕組みである髪飾りは収納魔導を発動するには十分なマナを生み出すことが出来た。
「おい、聞いているのか!かまわん、こうなったらクラリス博士を拘束せねば・・」
「セバス、離れて頂戴。危ないわよ」
「かしこまりました」
そう言うとセバスは老人とは思えない俊敏な動きでクラリスから距離を取った。
「あなた達も、踏み潰されたくなかったら離れなさい!」
「なんだと・・・」
衛兵達の言葉を無視して、クラリスはまるで貴族の令嬢が高慢な態度で自分の髪を払うようなポーズを取る。
「さあ、行くわよ!!出でよ!『プラタナ』!」
クラリスが声を出した瞬間、前方に大規模な白銀色に輝く円陣状の魔導式が浮かび上がる。
ズズズズ・・・・。
そしてその魔導式から一機の人工女神がゆっくりと押し出されていく。
「ひ、ひぃぃぃぃ!」
先ほどまで威勢のあった衛兵達は何もない空間から現れた謎の巨体に慌てて後退りして距離を取った。
やがて跪いた姿勢で全容を現した人工女神『プラタナ』の後部ハッチが開く。
クラリスは右腕のグローブをプラタナの後部ハッチに向けて、仕込まれた魔導具にマナを込める。
バッシュウ!
するとグローブからワイヤーに繋がった錘のような物が発射される。
そしてそれがハッチの際に当たるとピッタリと貼りついた。
すかさずクラリスが魔導具を操作してワイヤーを巻き取ると、彼女はプラタナのハッチへと引き寄せられてそのままの勢いでコクピットに乗り込んだ。
「人工女神『プラタナ』始動!」
ガシャン!
クラリスは掛け声と共に、始動用の短剣二本をシートのスロットルに挿し込む。
シュィィィン!
グググ・・・!
直後胸部の発導機が始動してゆっくりと『プラタナ』は立ち上がった。
「クラリス博士!貴方は何をしているのか分かっているのか!」
気を取り直して衛兵達が『プラタナ』を取り囲むが、たかが槍一本では既に始動した二十メートル近い大きさの人工女神にもはや為す術もなかった。
『悪いけどあたしはあのゴーレムを追うわ!話はそれからにしてくれる?』
『プラタナ』に搭載された拡声魔導によりコクピット内のクラリスの言葉がそのまま一帯に響き渡っていた。
「おい!クラリス博士待っ・・・」
キィィィン!ドゥン!
「ぐぁぁぁ!」
クラリスは衛兵の制止を無視して『プラタナ』を離陸させる。
その激しい風圧で衛兵達は後ろに倒れて尻餅をついた。
(ニアール・・・貴方は一体何を企んでいるの・・?)
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