転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

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第三章 商業国家アーティナイ連邦編

ワイバーン討伐クエスト3

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 体を螺旋状に回転させることによって回転力が加わったほむらの双剣による連撃は、『ワイバーン』を抵抗なくバラバラに刻んだ。

 そのまま自由落下したほむらは地上にある高木の天辺に着地して、木をしならせた反力で再び飛び上がる。

「はっ!!」

 そして、手短な『ワイバーン』に狙いを定めると、腰のポーチに収まっていた苦無にマナを込めてから投擲した。

 シュゥゥゥゥン!

 この苦無は鋳鉄製の刃に風魔導の魔導式が刻まれており、ほむらがマナを込めて投擲することにより発動した風魔導による加速効果で射程と殺傷能力を向上させたものである。

 ザシュ!

 風魔導の効果によりまるで弾丸のように高速で飛んだ苦無は、真っ直ぐに『ワイバーン』の頭部へ吸い込まれていった。

 ババババッ!

 ほむらが次々と『ワイバーン』を仕留める中、クウゼンは再び『印』を結ぶ。

 シャララン・・!

「中級風属性魔導!『エアウィンド』!」

 そして、遥か遠くで滑空するハンゾウに向かって風属性魔導を放った。

 ビュオオオオオオオ!

 クウゼンの補助により滞空状態を維持したハンゾウは懐から導火線の付いた筒状の物を取り出す。

 そして、それにマナを込めると導火線に火が灯った。

「火遁!!」

 ハンゾウは導火線に火が灯ったことを確認すると、導火線の長さでタイミングを見計らいながら、自分よりも下の高度で群がる『ワイバーン』に向かってそれを投擲した。

 ヒュウウウウウ・・・ドガァァァァァン!!!!

 ハンゾウがタイミングを見計らったことにより、投擲されたそれは絶妙なタイミングで近くの『ワイバーン』数匹を巻き込んで炸裂した。

 ハンゾウはその爆風を上手く凧に受けると、再び高度を上昇させた。

「あの爆発は魔導によるものでは無さそうですね・・・『カームクラン』にも他には見られない未知の技術があるということですか・・」

 ハンゾウが投擲したものはいわば爆弾であり、魔獣にダメージを与えるほどの性能を持つ爆弾を作るには高度な技術で作られた黒色火薬が必要である。

 現在、この世界において高性能な黒色火薬は未だ発明されていないというのが公の認識であるが、ハンゾウやほむらの故郷である『忍の里』では極秘裏にこのような黒色火薬が開発されていた。

 因みにこの黒色火薬の調合方法は門外不出の秘術であり、もしこれを外部に漏らした場合は里から『忍』を破門されてしまい、追っ手により命を狙われてしまう程厳重に秘匿された技術である。

 その為、ハンゾウが先ほど投擲した爆弾に用いられている火薬もハンゾウが自ら調合したものであった。

 因みに先ほどの爆発を目撃したクラリスは研究者魂に火が付いたことにより、『プラタナ』のコクピットの中でハンゾウに向かってギラギラとした視線を送っていた。

「しかし、流石は『二級冒険者』といったところですね。チームの連携もさることながら、個々の技術が非常に高いです・・・これは、負けていられませんね!!」

 間もなく『ワイバーン』の群れに到達するユナは弾道軌道で落下する勢いそのままに『女神イルティア・レ・ファティマ』を構えた。

「はあああ!!」

 ズバシャ!!

 ユナは手始めに一匹という様子で『ワイバーン』をすれ違い様に切り捨てると、そのまま空中で『女神イルティア・レ・ファティマ』にアタッチメントを装着する。

「『女神イルティア・レ・ファティマ』が一の剣!『火炎グラガ』!!」

 そして、剣を別の『ワイバーン』の群れにむかって振るうと、火炎の刃がそこへ向かって飛翔して数匹の『ワイバーン』を切り刻んだ。

 ズガァァァン!!

 その後、ユナはほむら達とは違って、多数の高木をなぎ倒しながら地面に衝突するように着地した。

「はっ!」

 ドォォォォン!!

 そして、間伐入れずに再び爆発のような音を鳴らしながら『ブースト』で強化された自らの膂力りょりょくのみで上空まで舞い上がった。

「はあぁぁぁぁぁ!」

 ブオン!ブオン!ブオン!

 ズガァァン!ドォォォン!ドガァァァ!!

 ユナは空中で『女神イルティア・レ・ファティマ』により次々と炎の刃を生み出しては連射する。

 それにより『ワイバーン』は次々と切り刻まれ、火だるまになりながら落下していった。

 それを上空で見ていたハンゾウは括目する。

「な、なんて身体能力でござるか!?クウゼンの魔導による補助や拙者のような道具を使わずにあれほど空中戦闘をこなすとは・・・ユナ殿も例に違わず化け物じみているでござるな・・・」

 ユナはその後も次々と高木をなぎ倒して地面に大きなクレーターを生み出しながら空中戦を繰り広げていた。

「ふえええ・・・地上が穴だらけになってます・・・」

「これはなんと・・・驚きであるな」

 ほむらとクウゼンもその異常な姿に驚かされていた。

 ヴヴヴヴヴヴ・・・。

「それにしてもユナは戦いにくそうな感じね・・・これは早急にユナ専用の空中戦に対応した装備を開発しないといけないわね・・・」

 クラリスは飛んだり跳ねたりしながら『ワイバーン』を仕留めていくユナを光魔導スクリーン越しに眺めながら顎に手をやった。

「まあそれは帰ってから考えるとして・・とにかく、今は目の前の敵に集中しないとね!」

 グイッ!

 クラリスが操縦レバーを操作すると『プラタナ』が『ワイバーン』へと切りかかった。

 ズバシャ!!!

 ユナの『女神イルティア・レ・ファティマ』と同じく『還元』の魔導が付与された『リデューシングソード』が白銀色に輝きながら『ワイバーン』を難なく切断する。

 続いてそのまま近くにいた別の『ワイバーン』に向かって『プラタナ』の回し蹴りを放った。

 せいぜい二、三メートル程度の『ワイバーン』に放った全高二十メートル程にもなる『プラタナ』の蹴りは凄まじい威力を発揮する。
  
 キィィィン!ドォォォォン!

『プラタナ』の蹴りを真面に食らった『ワイバーン』はそのまま高速で吹き飛ばされて地上へと突き刺さった。

 地面に衝突した『ワイバーン』が木端微塵になっていることは誰の目から見ても明らかであった。

 そして、『ワイバーン』を蹴散らした『プラタナ』は空中で剣を携えながら滞空する。

 ヴヴヴヴヴヴ・・・・。

「『プラタナ』の今の装備だと、各個撃破しかできないから折角の能力が生かせないわね・・・」

「やっぱり『プラタナ』も対集団戦闘用の装備を考えないといけないわね・・」

 クラリスはコクピットの背もたれに体重をかけると、腕を組みながら溜息をついた。
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