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第三章 商業国家アーティナイ連邦編
ナラトスの来訪
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新装備のテストをしてから数日後の朝。
ハーティ達はしばらく休止していた冒険者活動の再開に備えて、冒険者ギルドへ向かう前にマルコお手製の朝食に舌鼓を打っていた。
「うーん!いつ食べてもマルコの作るオムレツは絶品だわ!これが無いと一日が始まらないといっても過言ではないわ!!」
「あなた最近毎日朝食にオムレツを食べているものね・・」
そうは言いつつ、クラリス自身もマルコお手製のオムレツを気に入っているようで、半熟卵とトロトロのチーズが溢れるそれを口に運んで顔を綻ばせていた。
そして、ユナが全員に食後の紅茶を振る舞っていた(ハーティの専属侍女として、食後の紅茶の提供だけは自分で行いたかった為)頃、一人の侍従がダイニングルームへ入室してきた。
「失礼致します。皆様へ来客の方がお見えです」
「来客?ミウさんやギルドマスターじゃなさそうね」
見知った人間であれば侍従が報告の時に来客者の名前を言うはずだったので、ハーティは思わず首を傾げた。
「それってどんな人なの?」
クラリスが侍従に尋ねると、彼女は何かを考えるような素振りを見せたあと微かに頬を染めた。
「それが、来客の方はお一人で『カームクラン民族』では無かったので大陸の方かと思うのですが、かなり珍しいほぼ完全な黒色の長髪でして・・・その・・非常にハンサムな男性の方でした」
「その方からの伝言で、『『ナラトス』と言えばわかる』との事でした」
ガタッ!!
侍従から発せられた言葉を聞いた瞬間、三人はほぼ同時に立ち上がった。
「ふえっ!?」
その様子に驚いた侍従は思わず後退りした。
「マルコ」
「はい、ハーティ様」
「今すぐ屋敷にいる全ての人間を安全な場所に避難させて頂戴」
「それとマルコはその男を屋敷の中庭に誘導してくれる?」
「かしこまりました」
ハーティの指示に深く追及することなくマルコは一礼した。
「クラリス、『プラタナ』は?」
「『ここ』よ」
クラリスはそう言いながら自分の髪飾りをトントンと指先で叩いた。
ユナは『神聖魔導甲冑一型』を非常に気に入っており、今までの冒険者風の装いをやめて、起床時は常時鎧を装着していた。
「クラリスはいつでも『プラタナ』を展開できるようにしておいて。みんな!中庭に向かうわよ!」
「わかったわ!」
「わかりました!」
そして、三人が警戒心を最大にしながら中庭へと向かうと、美しい中庭の噴水の前でナラトスが一人佇んでいるのが見えた。
ハーティ達は言葉を交わす事なく散開すると、それぞれ三方から距離を置いてナラトスと対峙した。
ハーティとユナは既に自身の武器へと手をかけており、クラリスはいつでも『プラタナ』を出現できるように出現箇所を見定めていた。
そのまま両者無言の緊張状態が続く中、それを打ち壊すようにナラトスが口を開いた。
「暫くぶりだな。女神ハーティルティアとその仲間達よ」
「「「・・・・・」」」
ハーティ達はその言葉に返答せず、ナラトスに不審な動きがないかを注視していた。
「帝都の事で警戒しているのは承知しているが、私は今日そなたらと戦いに来たわけではない」
「・・・その話を信じるとでも?」
ハーティはナラトスの言葉に剣呑な雰囲気のまま答えた。
「まあ、尤もであるな」
ナラトスは言葉を漏らしながら自嘲気味に嘆息した。
「しかし、これだけは確かであるが、もし私がそなた達と戦う意思があるのであれば、わざわざこんな『訪問』などと言う形は取らずに上空から魔弾の雨をお見舞いしている」
「「っつ!」」
「それは、そうかもしれないけど・・・」
ナラトスの言う通り、『邪神』の力をもって上空からの魔弾による奇襲攻撃を行えば、ハーティ達ごと屋敷を消し飛ばすのは容易である。
そうすれば、『女神の力』を持つハーティは無事かもしれないが、少なくとも鎧の魔導を発動していないユナや生身のクラリスを殺すくらいのことは出来た筈であった。
「そなた、先日私に放ったのと同じような魔導を使っていただろう?立ち上った雲が私の所でも見えた故、そなた達がこの島にやってきたのはすぐにわかった」
「ぐっ・・」
ナラトスの言葉にハーティは言葉を詰まらせた。
「じ、じゃあ、あの異常発生した『ワイバーン』の群れも貴方の仕業なのね!!」
ハーティの問いに対してナラトスは首を傾げた。
「『ワイバーン』?いや、そなたらに思うところはあるかも知らぬが、それは私の仕業ではない」
「じゃあ、貴方は一体何のためにここまで来たのですか!」
「っつ!そんな事どうでもいいわ!見たところあなた一人みたいだけど!二アールを一体何処にやったのよ!はっ!?まさか!?おのれ!ナラトス!許さない!出でよプ・・・」
「待て!今日はその二アールの件で来たのだ!」
一人想像を膨らませて戦闘を始めようとしたクラリスをナラトス自身が制止した。
「とにかく、話を聞いてほしい。それからそなた達の行動を決めるがいい」
「私のことが信じられないというのなら、手土産代わりにこれを渡す。だからせめて話は聞いて欲しい」
そういうと、ナラトスはハーティの足元へ向かって何かの黒光りした小さな物を放り投げた。
ハーティは足元に落ちたそれを警戒するように確認する。
「っつ!?これは!?『黒の魔導結晶』!!」
「「なんですって!?」」
ハーティの言葉を聞いて、ユナとクラリスも驚愕した。
「それをそなたたちにやる。浄化するなり破壊するなり好きにするが良い」
ハーティはナラトスの言葉を聞くと、地に落ちた『黒の魔導結晶』を手に取って自身の収納魔導に格納した。
「・・・わかったわ。とにかく話を聞くけど、あなたへの対応はまだ決めかねているのは覚悟して」
「・・ああ、感謝する」
「感謝する・・・」
ナラトスから発せられた思いもよらない言葉に、ハーティ達は拍子抜けた様子であった。
「で?あなたがそこまでして話す事って何なのよ?」
クラリスの言葉を聞いたナラトスは一瞬思い詰めた表情をした後、意を決した様子でハーティの方へと視線を向けた。
「女神ハーティルティアよ。『邪神』である私がこんなことを言うのはおかしいと理解している。たが、頼む!そなたの力で二アールを救って欲しい!」
ハーティ達はしばらく休止していた冒険者活動の再開に備えて、冒険者ギルドへ向かう前にマルコお手製の朝食に舌鼓を打っていた。
「うーん!いつ食べてもマルコの作るオムレツは絶品だわ!これが無いと一日が始まらないといっても過言ではないわ!!」
「あなた最近毎日朝食にオムレツを食べているものね・・」
そうは言いつつ、クラリス自身もマルコお手製のオムレツを気に入っているようで、半熟卵とトロトロのチーズが溢れるそれを口に運んで顔を綻ばせていた。
そして、ユナが全員に食後の紅茶を振る舞っていた(ハーティの専属侍女として、食後の紅茶の提供だけは自分で行いたかった為)頃、一人の侍従がダイニングルームへ入室してきた。
「失礼致します。皆様へ来客の方がお見えです」
「来客?ミウさんやギルドマスターじゃなさそうね」
見知った人間であれば侍従が報告の時に来客者の名前を言うはずだったので、ハーティは思わず首を傾げた。
「それってどんな人なの?」
クラリスが侍従に尋ねると、彼女は何かを考えるような素振りを見せたあと微かに頬を染めた。
「それが、来客の方はお一人で『カームクラン民族』では無かったので大陸の方かと思うのですが、かなり珍しいほぼ完全な黒色の長髪でして・・・その・・非常にハンサムな男性の方でした」
「その方からの伝言で、『『ナラトス』と言えばわかる』との事でした」
ガタッ!!
侍従から発せられた言葉を聞いた瞬間、三人はほぼ同時に立ち上がった。
「ふえっ!?」
その様子に驚いた侍従は思わず後退りした。
「マルコ」
「はい、ハーティ様」
「今すぐ屋敷にいる全ての人間を安全な場所に避難させて頂戴」
「それとマルコはその男を屋敷の中庭に誘導してくれる?」
「かしこまりました」
ハーティの指示に深く追及することなくマルコは一礼した。
「クラリス、『プラタナ』は?」
「『ここ』よ」
クラリスはそう言いながら自分の髪飾りをトントンと指先で叩いた。
ユナは『神聖魔導甲冑一型』を非常に気に入っており、今までの冒険者風の装いをやめて、起床時は常時鎧を装着していた。
「クラリスはいつでも『プラタナ』を展開できるようにしておいて。みんな!中庭に向かうわよ!」
「わかったわ!」
「わかりました!」
そして、三人が警戒心を最大にしながら中庭へと向かうと、美しい中庭の噴水の前でナラトスが一人佇んでいるのが見えた。
ハーティ達は言葉を交わす事なく散開すると、それぞれ三方から距離を置いてナラトスと対峙した。
ハーティとユナは既に自身の武器へと手をかけており、クラリスはいつでも『プラタナ』を出現できるように出現箇所を見定めていた。
そのまま両者無言の緊張状態が続く中、それを打ち壊すようにナラトスが口を開いた。
「暫くぶりだな。女神ハーティルティアとその仲間達よ」
「「「・・・・・」」」
ハーティ達はその言葉に返答せず、ナラトスに不審な動きがないかを注視していた。
「帝都の事で警戒しているのは承知しているが、私は今日そなたらと戦いに来たわけではない」
「・・・その話を信じるとでも?」
ハーティはナラトスの言葉に剣呑な雰囲気のまま答えた。
「まあ、尤もであるな」
ナラトスは言葉を漏らしながら自嘲気味に嘆息した。
「しかし、これだけは確かであるが、もし私がそなた達と戦う意思があるのであれば、わざわざこんな『訪問』などと言う形は取らずに上空から魔弾の雨をお見舞いしている」
「「っつ!」」
「それは、そうかもしれないけど・・・」
ナラトスの言う通り、『邪神』の力をもって上空からの魔弾による奇襲攻撃を行えば、ハーティ達ごと屋敷を消し飛ばすのは容易である。
そうすれば、『女神の力』を持つハーティは無事かもしれないが、少なくとも鎧の魔導を発動していないユナや生身のクラリスを殺すくらいのことは出来た筈であった。
「そなた、先日私に放ったのと同じような魔導を使っていただろう?立ち上った雲が私の所でも見えた故、そなた達がこの島にやってきたのはすぐにわかった」
「ぐっ・・」
ナラトスの言葉にハーティは言葉を詰まらせた。
「じ、じゃあ、あの異常発生した『ワイバーン』の群れも貴方の仕業なのね!!」
ハーティの問いに対してナラトスは首を傾げた。
「『ワイバーン』?いや、そなたらに思うところはあるかも知らぬが、それは私の仕業ではない」
「じゃあ、貴方は一体何のためにここまで来たのですか!」
「っつ!そんな事どうでもいいわ!見たところあなた一人みたいだけど!二アールを一体何処にやったのよ!はっ!?まさか!?おのれ!ナラトス!許さない!出でよプ・・・」
「待て!今日はその二アールの件で来たのだ!」
一人想像を膨らませて戦闘を始めようとしたクラリスをナラトス自身が制止した。
「とにかく、話を聞いてほしい。それからそなた達の行動を決めるがいい」
「私のことが信じられないというのなら、手土産代わりにこれを渡す。だからせめて話は聞いて欲しい」
そういうと、ナラトスはハーティの足元へ向かって何かの黒光りした小さな物を放り投げた。
ハーティは足元に落ちたそれを警戒するように確認する。
「っつ!?これは!?『黒の魔導結晶』!!」
「「なんですって!?」」
ハーティの言葉を聞いて、ユナとクラリスも驚愕した。
「それをそなたたちにやる。浄化するなり破壊するなり好きにするが良い」
ハーティはナラトスの言葉を聞くと、地に落ちた『黒の魔導結晶』を手に取って自身の収納魔導に格納した。
「・・・わかったわ。とにかく話を聞くけど、あなたへの対応はまだ決めかねているのは覚悟して」
「・・ああ、感謝する」
「感謝する・・・」
ナラトスから発せられた思いもよらない言葉に、ハーティ達は拍子抜けた様子であった。
「で?あなたがそこまでして話す事って何なのよ?」
クラリスの言葉を聞いたナラトスは一瞬思い詰めた表情をした後、意を決した様子でハーティの方へと視線を向けた。
「女神ハーティルティアよ。『邪神』である私がこんなことを言うのはおかしいと理解している。たが、頼む!そなたの力で二アールを救って欲しい!」
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